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英中銀は利下げ、8月にも追加利下げ?

2025/05/09 07:30

【ポイント】
・英中銀は0.25%の利下げを決定。投票が3つに分かれて判断の難しさを示唆
・景気見通し、インフレ見通しともに下方修正
・今後1年間で3回利下げとの前提で、インフレ目標達成を2月見通しより前倒し
・市場のメインシナリオ(確率5割超)は、「6月据え置き、8月、11月、26年2月に利下げ」

BOE(英中銀)は0.25%の利下げを決定。投票結果はややタカ派的でしたが、同時に発表された金融政策報告ではハト派的な見通しが示されました。英ポンド/米ドルは結果判明直後に上下に振れたあと、次第に軟化しました。トランプ大統領が貿易協議での合意を発表したことで米ドルが買われた面もあったようです。

8日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場のメインシナリオ(5割超)は、「BOEは次回6月据え置き、8月、11月、26年2月にそれぞれ0.25%の利下げ」です。

英OIS

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BOE(英中銀)のMPC(金融政策委員会)は0.25%の利下げを決定し、政策金利を4.25%としました。決定は5対4で、反対したうちの2人は0.50%の利下げを支持、残る2人は据え置きを支持しました。3つに割れたのは、それだけ判断が難しかったということでしょう。

声明では、利下げの理由を「過去2年間にディスインフレ(インフレ沈静化)と賃上げ圧力の低下に向けて顕著な前進がみられた」こととしました。「米国の関税や相手国の対抗措置によって世界の通商政策に関する不確実性は高まった」とし、「金融市場の変動は大きくなり、市場の政策金利見通しは低下した」、「結果として世界経済の見通しは弱まった」と指摘しました。

先行きについては「中期的なインフレ見通しに基づけば、ゆっくりと、慎重に、金融政策の抑制度合いを一段と緩めるアプローチが適切だ」と従来と同じ。「金融政策は既定のコースではなく・・」、「金融政策の適切な抑制度合いを都度の会合で判断する」との締めも同じでした。ただ、後述するように、金融政策報告では3回の利下げを前提としてインフレ目標達成時期の見通しを前倒ししているので、相応の利下げは想定しているのでしょう。

ベイリー総裁は政策発表後のインタビューで、市場が6月の利下げをほぼナシとみていることに関して、「今、我々がいる世界では(次回会合までの)6週間で多くのことが起こる」と指摘し、「(利下げも含めて)なんでもアリだ」と述べました。BOEの決定直後にトランプ大統領が米国と英国の貿易協議での合意を発表したのも、「多くのこと」の1つでしょう。

金融政策報告では、前回2月時点と比べて25年Q2(4-6月期)のGDP見通し(前年比)が大幅に上方修正されましたが、これはトランプ関税発動前の駆け込み需要が主因です。26年Q2は下方修正。物価は総じて下方修正、失業率は上方修正されており、トランプ関税が景気・物価ともに下押しするデフレ的とみられているのでしょう。

BOE経済見通し

また、市場予想を基にした政策金利は26年Q2に3.5%(2月時点の前提は4.1%)とされており、今後1年間で0.25%×3回の利下げが想定されています。そうしたなかでも、2%の物価目標の達成時期は27年1-3月期と、前回2月見通しの27年10-12月期よりかなり前倒しになりました。

BOE物価見通し

※本日9日18時ごろ配信のM2TV(YouTube)のグローバルViewでは、中銀会合のレビューと今後の見通しについて解説する予定です。是非ご覧ください。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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