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米FOMCはタカ派的据え置き 利下げは7月以降!?

2025/05/08 06:15

【ポイント】
・FOMCは据え置き、パウエル議長は利下げを急がない姿勢を強調
・市場のメインシナリオ(確率5割超)は、7月、9月、12月に利下げ
・関税の影響がハッキリするまで、FOMCはトランプ政権の利下げ要求に抵抗できるか

米FOMCは3会合連続で政策金利の据え置き(4.25-4.50%)を決定しました。結果判明直後に米長期金利(10年物国債利回り)が低下したのは、声明文で「不確実性はさらに増した」と指摘されたためでしょう。ただ、景気の下向きリスクとインフレの上向きリスクが増したともあり、金融政策の判断は一段と難しくなったようです。

そうしたなかでも、パウエル議長は、関税の影響が明確になるまで様子見を続ける意向を表明しました。議長の記者会見を受けて長期金利は小幅に反発しました。パウエル議長(とFOMC関係者)は、トランプ政権からの利下げ要求に抵抗し続けることができるでしょうか。関税の影響がハッキリするまではまだ時間がかかりそうです。

米長期金利

NYダウは結果判明後に下落しましたが、パウエル議長の会見が景気に対して楽観的だったことで反発。米ドル/円も下落後に反発しました。

7日(暫定)のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が織り込む利下げ確率は次回6月のFOMCで2割ちょっと(6日時点で3割強)、7月までで9割弱(同10割)とやや低下。それでも、25年中に3回利下げとのメインシナリオにほぼ変化はありません(いずれも1回につき0.25%の利下げを想定)。

OIS


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FOMC声明

FOMCの票決は全会一致。前回は、政策金利の据え置きに全員が賛成したものの、ウォラー理事がQT(量的引き締め=保有債券の削減)のペース減速に反対しましたが、今回はQTが維持されたこともあって、反対者はいませんでした。

声明文では、景気・物価の判断に修正がありました。まず冒頭に「純輸出の振れがデータに影響を与えているものの」と注書きが入りました(※)。それでも、「最近のデータは経済活動がしっかりしたペースで拡大していることを示唆した」と前回と同じ評価でした。

※関税発動前の駆け込み需要により輸入が急増したことを指しています。1-3月期GDPは前期比年率-0.3%とマイナス成長でしたが、純輸出(=輸出-輸入)がGDPを4.8%分押し下げました(マイナス寄与度)。輸入は駆け込みの反動と関税の影響で大幅に減少する可能性が高く、4-6月期以降は純輸出がGDPを押し上げそうです。1-3月期の個人消費や設備投資は比較的堅調でした。ただし、それらにも駆け込み需要が発生していた可能性は高く、その分は反動が出るはずです。

また、「経済見通しに関わる不確実性はさらに増した」として「さらに」が加えられました。そして、「高失業率と高インフレのリスクが大きくなった」との一文が追加されました。

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パウエル議長の会見で興味深かった点は以下。

関税について、「インフレに与える効果は、価格水準の1回の変化なので短命に終わる可能性がある」としつつ、「インフレ的な影響が長引く可能性もある」ともしました。

景気は底堅いとの認識を前提として、議長は「我々は、事態がどう進展するかを見守るのが妥当なポジションにいる。金利調整(利下げ)を急ぐ必要があるとは感じていない。忍耐強く待つことが適切だと感じている」と述べました。また、「今は予防的(先制的)に利下げをする状況ではない」としたうえで、関税の影響が明確になるまでどのぐらいの時間がかかるかは「分からない」としました。

議長は一方で、状況が(景気下押しとインフレ押し上げの)どちらの方向に動き出すか分からないとしながらも、事態が進展すれば素早く適切に対応することは可能だと自信を示しました。

トランプ政権からの利下げ要求に関連して、大統領の発言は「我々の仕事に何ら影響しない」と明言しました。

連邦政府の債務について、「持続不可能な軌道に乗っていることは皆が知っている」としたうえで、「議会には私のアドバイスは必要ない」と、踏み込んだ発言はしませんでした。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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