トランプ大統領のパウエル批判でミニトリプル安!?
2025/04/22 08:21
【ポイント】
・トランプ大統領のパウエル批判は中央銀行の独立性を侵害
・金融政策への干渉は通貨(や資産)の信認低下へ
・大統領は中銀総裁を解任できるか
・金融政策への影響は??
トランプ大統領は21日、先週に続いてSNSでパウエルFRB議長を批判、利下げを要求しました。
トランプ政権内でパウエル議長解任が検討されたとの報道も流れる中、中央銀行の独立性が侵害されるとして、市場は株安・債券安(=金利高)・通貨(米ドル)安の「トリプル安」で反応しました。
中央銀行の独立性への疑問
政治が金融政策に介入して中央銀行の独立性が脅かされると、当該国の通貨に対する信認が揺らぐのは、トルコの例が如実に示しています。
19年以降、エルドアン大統領はトルコの高インフレ下でもTCMB(トルコ中銀)に利下げを要求。4人の中銀総裁を解任しました(24年2月のエルカン総裁は自己都合による辞任)。リラ安に歯止めをかけられなかったウイサル総裁解任のケースを除き、中銀総裁の解任によりトルコリラは(対米ドルで)下落しました。

パウエル議長解任は可能か
今週のウィークリー・アウトルックでもお伝えしましたが(一部加筆修正)、米国の大統領にはFRB議長を自在に解任する権限はありません。連邦準備制度(中央銀行制度)の根拠法となった1913年連邦準備法には、議長を含む理事は「正当な理由」がなければ解任されないとあります。そして、「正当な理由」とは、不正行為や職務執行能力の喪失などを指し、大統領との政策方針の相違は想定されていないはずです。
もっとも、トランプ大統領は、2期目の就任早々に2つの独立行政機関(※)のトップを解任しました。解任無効を求める訴訟を受けて、地方裁判所は3月上旬に両ケースで「解任は違法」との判断を下しました。これに対して、トランプ政権が控訴しており、決着は最高裁へ持ち込まれることになります。1930年代には、独立行政機関の理事を正当な理由なく大統領が解任することはできないとの最高裁判決が出されています。ただし、当時の判断を見直すべきとの議論もあります。仮に、上の例でのトランプ大統領の解任は合憲だとの判断が最高裁で下されれば、パウエル議長の去就にも影響する可能性があります。
※全米労働関係委員会(NLRB)とメリットシステム保護委員会(MSPB)。MSPBは連邦職員の人事関係を司る組織。
金融政策への影響は?
パウエル議長が解任されないとすれば、任期は26年5月23日まで。また、理事としての任期は28年1月31日まで。その前に、26年1月31日にクグラー理事の任期が満了します(※)。トランプ大統領が後任を指名します。また、トランプ大統領は、金融機関監督担当の副議長を辞任したバー理事の代わりに(自身の意に沿った?)ボウマン理事を充てる意向のようです。
(※)理事の任期は14年(途中就任は除く)。7人の理事の任期が2年ごとに到来します。
仮にパウエル議長が解任された場合はどうなるか。金融政策を決定するFOMC(連邦公開市場委員会)は、ワシントン本部の理事7人(議長・副議長を含む)、12の地区連銀総裁全員、計19人が参加。政策決定は12人の投票メンバー(理事7人+NY連銀総裁+輪番制の4人の総裁)により行われます。したがって、議長を解任しても大統領の思う通りの金融政策が運営されるとは限りません。なお、理事は大統領が指名して上院が承認します。一方、地区連銀(連邦準備銀行)は形式上民間組織なので、各行の理事会が総裁を任命します。
もっとも、大統領が中央銀行に表立って圧力を加えていること自体が市場にとってはマイナス材料でしょう。トランプ大統領がパウエル議長の解任に向けてどこまで本気なのか(新たな動きが出てくるのか)、大いに注目されるところでしょう。
・トランプ大統領のパウエル批判は中央銀行の独立性を侵害
・金融政策への干渉は通貨(や資産)の信認低下へ
・大統領は中銀総裁を解任できるか
・金融政策への影響は??
トランプ大統領は21日、先週に続いてSNSでパウエルFRB議長を批判、利下げを要求しました。
トランプ政権内でパウエル議長解任が検討されたとの報道も流れる中、中央銀行の独立性が侵害されるとして、市場は株安・債券安(=金利高)・通貨(米ドル)安の「トリプル安」で反応しました。
中央銀行の独立性への疑問
政治が金融政策に介入して中央銀行の独立性が脅かされると、当該国の通貨に対する信認が揺らぐのは、トルコの例が如実に示しています。
19年以降、エルドアン大統領はトルコの高インフレ下でもTCMB(トルコ中銀)に利下げを要求。4人の中銀総裁を解任しました(24年2月のエルカン総裁は自己都合による辞任)。リラ安に歯止めをかけられなかったウイサル総裁解任のケースを除き、中銀総裁の解任によりトルコリラは(対米ドルで)下落しました。

パウエル議長解任は可能か
今週のウィークリー・アウトルックでもお伝えしましたが(一部加筆修正)、米国の大統領にはFRB議長を自在に解任する権限はありません。連邦準備制度(中央銀行制度)の根拠法となった1913年連邦準備法には、議長を含む理事は「正当な理由」がなければ解任されないとあります。そして、「正当な理由」とは、不正行為や職務執行能力の喪失などを指し、大統領との政策方針の相違は想定されていないはずです。
もっとも、トランプ大統領は、2期目の就任早々に2つの独立行政機関(※)のトップを解任しました。解任無効を求める訴訟を受けて、地方裁判所は3月上旬に両ケースで「解任は違法」との判断を下しました。これに対して、トランプ政権が控訴しており、決着は最高裁へ持ち込まれることになります。1930年代には、独立行政機関の理事を正当な理由なく大統領が解任することはできないとの最高裁判決が出されています。ただし、当時の判断を見直すべきとの議論もあります。仮に、上の例でのトランプ大統領の解任は合憲だとの判断が最高裁で下されれば、パウエル議長の去就にも影響する可能性があります。
※全米労働関係委員会(NLRB)とメリットシステム保護委員会(MSPB)。MSPBは連邦職員の人事関係を司る組織。
金融政策への影響は?
パウエル議長が解任されないとすれば、任期は26年5月23日まで。また、理事としての任期は28年1月31日まで。その前に、26年1月31日にクグラー理事の任期が満了します(※)。トランプ大統領が後任を指名します。また、トランプ大統領は、金融機関監督担当の副議長を辞任したバー理事の代わりに(自身の意に沿った?)ボウマン理事を充てる意向のようです。
(※)理事の任期は14年(途中就任は除く)。7人の理事の任期が2年ごとに到来します。
仮にパウエル議長が解任された場合はどうなるか。金融政策を決定するFOMC(連邦公開市場委員会)は、ワシントン本部の理事7人(議長・副議長を含む)、12の地区連銀総裁全員、計19人が参加。政策決定は12人の投票メンバー(理事7人+NY連銀総裁+輪番制の4人の総裁)により行われます。したがって、議長を解任しても大統領の思う通りの金融政策が運営されるとは限りません。なお、理事は大統領が指名して上院が承認します。一方、地区連銀(連邦準備銀行)は形式上民間組織なので、各行の理事会が総裁を任命します。
もっとも、大統領が中央銀行に表立って圧力を加えていること自体が市場にとってはマイナス材料でしょう。トランプ大統領がパウエル議長の解任に向けてどこまで本気なのか(新たな動きが出てくるのか)、大いに注目されるところでしょう。
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