マネースクエア マーケット情報

トランプ関税が歪める経済データ

2025/04/17 07:57

【ポイント】
・トランプ関税の影響が経済データに明確に現れるのはこれから
・トランプ関税発動前の駆け込みが輸入や自動車販売を押し上げ
・景気実態の把握には困難を伴いそう

一連のトランプ関税が発動されて日が浅いので、その影響が経済データに明確に現れるのはこれからでしょう。ただし、米企業や消費者の景況感、インフレ期待には既にその兆候がみられます。

■16日付け「トランプ関税の初期症状」をご覧ください。

トランプ関税は、景気の下押し圧力、物価の上昇圧力となりうるため、中央銀行にとっては金融政策の難しい判断を迫られることになりそうです。ただ、それだけでなく、トランプ関税の発動が企業や消費者の経済行動に一時的な歪みをもたらすため、中央銀行は景気や物価の実態を把握することすら難しくなるかもしれません。

米国の3月小売売上高は前月比1.4%と、23年1月(4.1%)以来の高い伸びを示しました。自動車&同部品が前月比5.3%と大幅に増加したため。自動車&同部品を除く小売売上高は前月比0.5%でした。3月の新車販売台数(別統計)は年率1,777万台と、コロナショックによる落ち込みからの反動があった21年春を除けば、約7年半ぶりの高水準でした。自動車関税を前にした駆け込み需要が背景でしょう。

米新車販売台数

米国の輸入は1月に前年比23.0%、2月に同19.7%と急増しました。米国の輸入はリセッション(景気後退)での落ち込みやその後の回復局面も含めて輸出とほぼパラレルに増減してきましたが、足もとでは輸入だけが大きく増加しています。やはり、トランプ関税前の駆け込みが大きかったのでしょう。

米国の輸出入

アトランタ連銀のGDPNow(短期予測モデル)によれば、4月16日時点で1-3月期GDPは前期比年率マイナス2.2%と予測されています。純輸出がGDPを4.9%分押し下げる(寄与度)との予測で、やはり駆け込みによる輸入の急増が背景でしょう。

GDPNow

今後、駆け込みの反動が出れば、上記の例では自動車販売が落ち込んで小売売上高を押し下げる可能性が高い一方で、想定される輸入の減少はGDPを押し上げる方向に作用しそうです。そうした歪みを勘案して景気実態を正しく判断するのは、中央銀行など政策当局だけでなく、投資家にとっても困難を伴うかもしれません。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

  • 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
  • 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
  • 当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
  • 相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
topへ