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相互関税停止で市場のリスクオフが急激に後退!

2025/04/10 06:56

【ポイント】
・トランプ大統領は相互関税(上乗せ分)を90日間停止、対中国は125%へ引き上げ
・株、原油、銅、暗号資産などあらゆるリスク資産が急反発
・トランプ政権からの発信に引き続き要注意
・米FOMC議事録ではスタグフレーション懸念が明らかに

(欧米市場レビュー)

9日、トランプ大統領が相互関税(上乗せ分)の90日間停止を発表(後述)。市場におけるリスクオフの地合いが急激に後退しました。NYダウは前日終値から一時370ドル近く下落していましたが、急騰して3,000ドル近く(約8%)上昇。原油、銅、暗号資産などほぼ全てのリスク資産の価格が大きく上昇しました。

外国為替市場では、米ドル/円が144円割れから一時148円超まで上昇。9日の通貨の騰落率は以下の順となっており、典型的なリスクオンの地合いでした。

円<ユーロ<米ドル<英ポンド<カナダドル<NZドル<南アフリカランド<豪ドル<メキシコペソ

日本時間10日午前2時20分ごろ、トランプ大統領がSNSで相互関税(上乗せ分)の90日間停止を発表。当該関税の発動からわずか13時間後でした。停止の理由として、(米国側の)ネガティブな反応が大きかったことや、多くの国が報復措置をとらずに交渉を求めてきたことを挙げました。一方、中国は84%の対米報復関税を発表しており、トランプ大統領は対中国関税を125%に引き上げることを合わせて発表しました。

(本日の相場見通し)

トランプ政権の発表を受けて、本日もリスク資産が買われる展開となるかもしれません。もっとも、市場がトランプ大統領に振り回されているのも事実。NYダウS&P500は最高値(前者は昨年12月、後者は今年2月)から4月7日の安値までのちょうど半値戻しとなっています。市場が次の展開を待っているようにもみえます。新たな材料次第では市場が大きく動揺する可能性にも注意は必要でしょう。

本日は、米国の3月CPI(消費者物価指数)先週の新規失業保険申請件数などが発表されます。それらがFOMC議事録(3月18-19日開催分)でも示されたスタグフレーションの懸念を強めるようであれば、市場ではリスクオフの反応がみられるかもしれません。CPIに関しては、このところFRBの2%物価目標への進捗が足踏みしており、3月分がどうなるか。2月の対中国関税、3月の対カナダ・メキシコ関税(USMCA対象外)や鉄鋼・アルミ関税の影響が消費者段階まで及んでいるかは不明です。米労働市場にやや陰りがみられるなか(3月雇用統計は堅調でしたが)、失業保険の動向にも要注意かもしれません。

その他では、ノルウェーの3月CPIが発表されます。ノルゲバンク(ノルウェー中銀)が半ば予告していた3月の利下げを見送ったのは、2月CPIが上振れしたからでした。市場予想は、総合が前年比2.9%と2月(3.6%)から鈍化ですが、基礎(CPI-ATE)は同3.4%と2月と同じです。市場の予想通りなら、ノルゲバンクの利下げはまだ遠いとの観測に繋がりそうです。もっとも、足もとのノルウェークローネ/スウェーデンクローナ(NOK/SEK)には原油価格の影響の方が重要かもしれません(原油高はNOK/SEKの上昇要因)。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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