マネースクエア マーケット情報

米FOMCは据え置き、市場は「ハト派的」と判断!?

2025/03/20 07:58

【ポイント】
・FOMCはGDP見通しを下方修正、インフレ見通しを上方修正
・パウエル議長は関税によるインフレ圧力は「一時的」と認識
・ドット・プロットは前回同様に25年中に2回の利下げを予想
・QT(量的引き締め)のペース減速は一種の金融緩和!?

米FOMCは前回1月に続いて政策金利の据え置き(4.25-4.50%)を決定しました。

市場は総合してFOMCの決定を「ハト派的」と判断したようです。根拠となりうるのは、「ドット・プロット(中央値)」が引き続き25年中に2回の利下げを予想したこと、GDP見通しが下方修正されたこと、インフレ見通しは上方修正されたもののパウエル議長がインフレ加速は「一過性」だとの認識を示したこと、4月からQT(量的引き締め=保有債券の削減)のペース減速が決定されたこと、など。

もっとも、関税の影響を判断するのは時期尚早とするなど、先行きに関する「不確実性が増した」というのが今回のFOMCの最大のメッセージだったように思われます。

*******
FOMCの票決は11対1。政策金利の据え置きには12人全員が賛成しましたが、ウォラー理事がQT(量的引き締め=保有債券の削減)のペース減速に反対しました。

声明文では、前回から意味のある修正は2カ所。冒頭で「経済見通しに関わる不確実性が増した」とされました。前回は、「目標達成のリスクはほぼ均衡している」としたうえで「経済見通しは不確実だ」でした。もう一つは、保有国債の削減ペースを4月以降に月間250億ドルから同50億ドルにすると宣言されたこと。市場では、これは事実上の金融緩和だとの受け止めもありました。

*******
FOMCの経済見通しと「ドット・プロット」は以下の通り。

経済見通しでは、25年の成長率(GDP)見通しが下方修正され(26-27年も小幅に下方修正)、インフレ(PCEとPCEコア)見通しが、25年について上方修正されました(26年も小幅上方修正)。「トランプ関税」の影響が考慮されたのでしょう。

FOMC経済見通し

参加者の政策金利見通し、いわゆる「ドット・プロット」をみると、中央値では25年中の利下げは0.25%×2回分で前回昨年12月と同じでした。ただ、利下げ1回が4人(前回は3人)、ゼロ回が4人(同1人)と、タカ派的なバイアスとなりました。それだけ不透明感が強い(利下げ判断が難しい)ということかもしれません。なお、政策金利の中立水準とみなせる「長期」見通しは前回同様3.00%でした。

ドットプロット

19日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場は25年中の利下げを0.25%×2.6回と予想しています。「ドット・プロット」では3回利下げを予想した参加者は12人中2人だけでした(4回以上はゼロ人)。

同じくOISに基づけば、市場が予想する利下げ確率は次回5月FOMCで約2割、6月FOMCまでで約8割です。

*******
パウエル議長の会見で興味深かった点は以下。

パウエル議長は、2%のインフレ目標に向けた前進は遅くなるかもしれないと認めつつ、基本シナリオは(関税による)インフレ上昇は一過性だとの見解を示しました。また、3月ミシガン大学消費者調査で今後5-10年後のインフレ期待が3.9%と2月の3.5%から上昇したことを「外れ値(異常値)」だとして重視しない意向を示しました(パウエル議長はコロナ禍でのインフレ加速を「一時的」だと言い切ったものの、結局22年3月からの大幅な利上げを余儀なくされたことが想起されます)。

パウエル議長は、(企業や消費者の)センチメントは急低下したが、実際の経済活動はそうではないとして、景気は堅調だと述べました。リセッション(景気後退)の確率は以前に比べて上昇したが、まだ高くはないとの認識を示しました。ただ、経済の不確実性は高まったとし、関税の影響をフルに判断するには時期尚早だとしました。

そして、パウエル議長は、政策調節(現局面では利下げのこと)を急ぐ必要はないとの従来からの判断を繰り返しました。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

  • 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
  • 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
  • 当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
  • 相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
topへ