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鉄鋼・アルミ関税とEUの報復、米CPI、カナダ利下げ、米予算審議

2025/03/13 08:04

【ポイント】
・鉄鋼・アルミ関税発動、EUは報復関税へ
・市場のリスクオフはやや後退も安心は禁物
・目先的には米議会の予算審議に要注意

(欧米市場レビュー)

13日の欧米外為市場では、資源・新興国通貨が堅調。ユーロが軟調。米ドルは対円や対ユーロでは上昇しましたが、その他通貨に対して下落。欧米の主要株価指数はNYダウを除いて概ね上昇。ウクライナが米国の停戦案に合意したこともあって市場でリスクオフがやや後退した格好です。ただ、株式市場の地合いが大きく好転したと言えるほどではなさそうです。

トランプ政権は予定通り25%の鉄鋼・アルミ関税を発動。これに対して、EU(欧州連合)は260億ユーロ相当の米国製品に対して報復関税を課す計画を発表しました。「関税戦争」の様相が強まっています。

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米国の2月CPI(消費者物価指数)はインフレの落ち着きを示唆。総合、エネルギーと食料を除くコアともに前月比0.2%と、市場予想(いずれも0.3%)を下回りました。前年比では総合が2.8%、コアが3.1%と、いずれも前月(3.0%と3.3%)から減速しました。

12日のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場はFRBの利下げを25年中に0.25%×2.7回強と予想しています。ただ、次回利下げが確実視されるのは6月のFOMC以降です(3月の確率はほぼゼロ、5月は3割強)。

■本日のファンダメ・ポイント「米CPIはインフレ鈍化を示唆 次の利下げは??」をご覧ください。

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BOC(カナダ中銀)0.25%の利下げを決定し、政策金利を22年9月以来の2.75%としました。直後に米ドル/カナダドルは上昇したものの、マックレム総裁の会見を受けて反落。マックレム総裁は、「米国の関税の規模と期間次第で経済に深刻な影響が及ぶ恐れがある」と懸念を表明しました。一方で、インフレ圧力と景気下押し圧力の双方を見極める必要があるため、「さらなる利下げは慎重に進める」と述べました。

12日のOISに基づけば、市場は次回4月会合での利下げを五分五分、6月会合での利下げをほぼ確実とみているようです。


(本日の相場見通し)

市場のリスクオフがやや後退し、主要株価はいったん下げ止まったかにみえます。しかし、株式市場の地合いは良好とは言えず、安心は禁物でしょう。トランプ政権が仕掛けた「関税戦争」の行方は引き続き不透明です。ロシアがウクライナとの停戦協定を受け入れるかも不明です。

何らかのキッカケで株価が大きく下げるならば、リスクオフが強まって、円、米ドル、ユーロに上昇圧力が加わりそうです。

ただ、米ドルには弱気材料もあります。ドイツや日本の長期金利(10年物国債利回り)が大きく上昇してきたなかで、米長期金利は1月中旬をピークに低下基調にあります(足もとでやや強含んでいますが・・)。米国とドイツ(ユーロ圏)や日本との長期金利は縮小しており、金利差での米ドルの優位性は低下しています。

目先的には、米議会の動きにも要注意です。25年度(24年10月~25年9月)の継続(つなぎ)予算が14日(日本時間15日13:00)に期限切れとなります。シャットダウン(政府機能の一部停止)を回避すべく議会は新たな予算案を審議していますが、上院民主党は対決の姿勢を崩していません。共和党が減税を盛り込もうとしている予算決議案と異なり、予算案は共和党だけで可決することができません(※)。

※上院ではフィリバスター(少数政党による妨害)を阻止して採決に持ち込むためにスーパーマジョリティー(100議席中の60議席以上)が必要なため。現在の共和党の議席数は53。

シャットダウンは土壇場で回避される、あるいは発生してもすぐに解消される可能性が高そうです。それでも短期間にせよ市場が動揺してリスクオフが強まるかもしれません。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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