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トランプ政権は「鉄鋼・アルミ関税」を発動へ!?

2025/03/12 09:25

【ポイント】
・トランプ政権の関税をめぐり新たな報道が出てくれば市場が反応しそう
・米CPIで市場のFRB利下げ観測が一段と高まるか
・春闘の集中回答日、日銀の早期利上げ観測が市場で高まるか

(欧米市場レビュー)

11日、欧米時間の外為市場ではユーロが堅調に推移。ユーロ/米ドルは一時1.09441ドルへと上昇し、24年10月11日以来5カ月ぶりの高値を記録。ユーロ/円は161.724円、ユーロ/英ポンドは0.84443ポンドへと一時上昇し、いずれも1カ月半ぶりの高値をつけました。

ウクライナは、30日間のロシアとの暫定的な停戦を受け入れる用意があると表明。ドイツの緑の党のブラントナー共同党首は、防衛費の増額をめぐりCDU/CSU(キリスト教民主社会同盟)と週内に合意する可能性があるとの認識を示しました。これらがユーロの支援材料となりました。

カナダドルは、トランプ大統領の鉄鋼・アルミ関税をめぐる発言に振り回される展開でした。

トランプ米大統領はSNSに「カナダから輸入する鉄鋼・アルミに50%の関税を課すようにラトニック商務長官に指示した」と投稿。「カナダのオンタリオ州が米国に供給する電力に25%の関税(輸出税)を課したため」と説明しました。

これを受けてカナダドルが急落し、一時米ドル/カナダドルは1.45167カナダドルへと上昇し、カナダドル/円は101.345円へと下落しました。

その後、オンタリオ州のフォード州首相は電力の輸出税を停止すると表明。それを受けてトランプ大統領が50%の鉄鋼・アルミ関税を見直す方針を示すと、カナダドルは反発。一時米ドル/カナダドルは1.43749カナダドルへと下落し、カナダドル/円は102.726円へと上昇しました。

※詳しくは、本日の『ファンダメ・ポイント』[米加「関税戦争」は子供のけんか!? 市場は右往左往・・]をご覧ください。

米国の1月JOLTS(労働動態調査)が発表され、求人件数は774.0万件でした。市場予想の763.0万件を上回ったものの、市場に大きな反応はみられませんでした。

(本日の相場見通し)

トランプ政権は米東部時間12日午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)、米国が輸入する鉄鋼・アルミに25%の関税を課す措置を発動する予定です。例外や免除はなく全貿易相手国に関税を課す意向をトランプ政権は示しています。

トランプ政権の関税をめぐる報道に引き続き要注意。関税について新たな報道が出てくれば、市場が反応しそうです。その場合、関税を課される対象国の通貨には下落圧力が加わる可能性があります。

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米国の2月CPI(消費者物価指数)が本日発表されます(日本時間21:30)。

CPIの市場予想は以下の通り。( )は前回の実績です。総合とコアのいずれも、前月から上昇率が鈍化すると予想されています。

<総合>
・前月比:0.3%(0.5%)
・前年比:2.9%(3.0%)

<コア>
・前月比:0.3%(0.4%)
・前年比:3.2%(3.3%)

市場ではトランプ政権の関税によって米景気が減速するとの懸念から、FRB(米連邦準備制度理事会)の追加利下げ観測が高まっています。

CPIが市場予想を下回る結果になれば、FRBの追加利下げ観測が一段と高まりそう。その場合には米ドルが軟調に推移して、米ドル/円や米ドル/カナダドルには下落圧力が、一方でユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルには上昇圧力が加わると考えられます。

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本日は春闘の集中回答日です。

6日に連合が公表した25年の春闘の賃上げ率の要求は加重平均で6.09%と、93年以来32年ぶりの高水準となりました。

集中回答日で示される賃上げ率が高めの結果になれば、市場では日銀の早期利上げ観測が一段と強まるかもしれません。その場合にはが堅調に推移して、米ドル/円やクロス円(ユーロ/円や豪ドル/円など)は下値を試す可能性があります。

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本日、BOC(カナダ中銀)が政策会合を開きます。会合の結果は日本時間22時45分に発表され、同23時30分からマックレムBOC総裁が会見する予定です。

BOCは前回1月29日の会合まで6回連続で利下げを行いました。市場では、本日の会合で0.25%の利下げが行われるとの見方が有力です。

その通りの結果になれば、BOCの声明やマックレム総裁の会見が材料になりそうです。声明やマックレム総裁の会見では、BOCの先行きの金融政策について何らかのヒントが示されるかどうかに注目です。

前々回24年12月会合の声明では「政策金利のさらなる引き下げの必要性を会合ごとに判断していく」とされましたが、前回会合の声明では関税など不確実性の高さを理由にこれが削除され、フォワードガイダンス(先行きの政策に関する示唆)は示されませんでした

トランプ政権は4日、カナダからの輸入品に25%(ただし、エネルギー製品には10%)の関税を課す措置を発動しました。ただし、翌5日に「自動車への関税を1カ月間免除する」と表明し、さらに6日には「USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)に準拠した製品は4月2日まで関税を免除する」としました。また、12日には鉄鋼・アルミ関税が発動される予定です。

トランプ政権による関税がカナダ経済に与える影響についてBOCがどのように見ているかにも注目です。

声明やマックレム総裁の会見で追加利下げに慎重な姿勢が示されるなどして、次回4月の会合での追加利下げ観測が市場で後退する場合、カナダドルにとってプラスになりそうです。

※米ドル/カナダのテクニカル分析は、本日の『テクニカル・ポイント』[ドルカナダ、米2月CPIおよびBOC会合が相場動意となるか]をご覧ください(お客様専用ページへのログインが必要です)。

八代和也

執筆者プロフィール

八代和也(ヤシロカズヤ)

シニアアナリスト

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