米国とカナダの雇用統計に注目、関税をめぐる報道に引き続き要注意
2025/03/07 09:19
【ポイント】
・トランプ政権による関税について新たな報道が出てくれば、市場が反応しそう
・雇用統計でFRBとBOCの金融政策見通しが市場で変化するか
(欧米市場レビュー)
6日、欧米時間の外為市場では円が堅調に推移。米ドル/円は一時147.299円へと下落し、24年10月4日以来およそ5カ月ぶりの安値を記録。ユーロ/円は159.004円、豪ドル/円は93.282円、NZドル/円は84.506円へと下落する場面がありました。連合が公表した25年の春闘の賃上げ率の要求は加重平均で6.09%と、93年以来32年ぶりの高水準となりました。これを受けて日銀の早期の追加利上げ観測が市場で高まり、円の支援材料となりました。
カナダドルとメキシコペソは反発。一時米ドル/カナダドルは1.42386カナダドルへと下落し、メキシコペソ/円は7.304円へと上昇しました。米国のトランプ大統領がカナダとメキシコからの輸入品に対する25%の関税について「USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)に準拠した製品は4月2日まで関税を免除する」と表明したことが、カナダドルとメキシコペソの反発材料となりました。
ECB(欧州中銀)は0.25%の利下げを行うことを決定。ECBが最も重視している下限の中銀預金金利(=政策金利)を2.75%から2.50%へ、残り2つの主要リファイナンス金利を2.90%から2.65%へ、限界貸出金利を3.15%から2.90%へそれぞれ引き下げました。
※ECB理事会については、本日の『ファンダメ・ポイント』[ECB理事会は6回目の利下げ、休止も視野に?]にて詳しく解説していますので、ご覧ください。
TCMB(トルコ中銀)は2.50%の利下げを行うことを決定。政策金利を45.00%から42.50%へと引き下げました。利下げは3会合連続で、利下げ幅は過去2会合と同じです。
TCMBの声明における先行きの金融政策に関する文言は、前回1月会合とほぼ同じでした。「インフレ率の持続的な鈍化によって物価の安定が達成されるまで、引き締め的な金融政策スタンスを維持する」、「政策金利の水準は、予想されるディスインフレの道筋に必要な引き締め(度合い)を確保するように決定する」、「インフレ見通しに焦点を当て、毎回の会合ごとに慎重に政策金利を調整する」、「インフレの大幅かつ持続的な悪化が見込まれる場合、金融政策手段を効果的に使用する」と表明されました。
(本日の相場見通し)
最近の外為市場は、トランプ政権による関税をめぐる報道に敏感に反応する状況が続いており、この状況は当面続く可能性があります。
トランプ政権は12日に25%の鉄鋼・アルミ関税を発動する予定です。トランプ大統領は6日に「鉄鋼・アルミ関税に変更はない」と述べたものの、予定通りに発動されるのかどうか注目です。
鉄鋼・アルミ関税を含めてトランプ政権による関税について新たな報道が出てくれば、材料になりそうです。
なお、中国は10日に対米報復関税を発動する予定です。
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米国の2月雇用統計が本日発表されます(日本時間22:30)。この結果に市場が反応しそうです。
雇用統計の市場予想は以下の通り。( )は前回の実績です。
・非農業部門雇用者数(前月比):16.0万人増(14.3万人増)
・失業率:4.0%(4.0%)
最近発表された米国の経済指標が弱めの結果が目立つことで、市場では米景気減速への懸念やFRB(米連邦準備制度理事会)の追加利下げ観測が高まっています。CMEのFedWatchツールによると、米国時間6日時点で市場が織り込むFRBの利下げ確率は、次回3月18-19日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で9%、次々回5月6-7日のFOMCまでで約5割です。
雇用統計が市場予想と比べて弱い結果になれば、FRBの追加利下げ観測が一段と強まりそうです。その場合には米ドルが軟調に推移して、米ドル/円には下落圧力が加わり、一方でユーロ/米ドルや英ポンド/米ドル、豪ドル/米ドルには上昇圧力が加わると考えられます。ユーロ/米ドルは、200週移動平均線(7日時点で1.08711ドルに位置)が目先の上値メドです。
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米国と同じ時間にカナダの2月雇用統計が発表されます。
カナダの雇用統計の市場予想は失業率が6.7%、雇用者数が前月比2.00万人増。失業率は前月の6.6%から若干悪化し、雇用者数は前月の7.60万人から増加ペースが鈍化するとみられています。
市場では、BOC(カナダ中銀)は次回12日の会合で0.25%の追加利下げを行うとの見方が優勢です。カナダの雇用統計が市場予想と比べて弱い結果だった場合、BOCの追加利下げ観測が一段と高まるとともに、カナダドルが軟調に推移するかもしれません。
カナダでは与党の自由党党首選が9日に実施されます。党首選にはカーニー氏(元BOC総裁、前英中銀総裁)やフリーランド氏(前副首相兼財務相)など4人の候補者がいて、報道によるとカーニー氏が勝利する可能性が高いようです。自由党の新党首はトルドー氏に代わって首相に就任する見通しです。新首相が米国にどう対応するか注目されます。
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