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ノルウェークローネ/スウェーデンクローナが4年4カ月ぶりの安値

2025/03/06 09:20

【ポイント】
・原油安によってノルウェークローネ/スウェーデンクローナに下押し圧力
ECBTCMBは今後の金融政策についてどのようなヒントを示すか
・新規失業保険申請件数でFRBの追加利下げ観測が強まるか

(欧米市場レビュー)

5日、欧米時間の外為市場ではユーロが堅調に推移しました。一時ユーロ/米ドルは1.07911ドル、ユーロ/円は160.664円、ユーロ/英ポンドは0.83755ポンドへと上昇。ユーロ/米ドルは24年11月8日以来およそ4カ月ぶり、ユーロ/英ポンドは25年1月30日以来の高値をつけました。ドイツの財政政策に絡んで同国の長期金利(10年物国債利回り)が大幅に上昇し、このことがユーロを押し上げました。

本日の『ファンダメ・ポイント』は[ユーロ/米ドル急騰・・ドイツ財政、ベージュブック、ADP]です。

米ドルは軟調。一時米ドル/円は148.322円、米ドル/カナダドルは1.43257カナダドルへと下落し、英ポンド/米ドルは1.28953ドル、豪ドル/米ドルは0.63369米ドルへと上昇。英ポンド/米ドルは24年11月11日以来およそ4カ月ぶりの高値をつけました。米国の2月ADP雇用統計が前月比7.7万人増と市場予想の14.0万人増を下回ったことが、米ドルに対する下押し圧力となりました。

ノルウェークローネ/スウェーデンクローナ(ノックセック)は、一時0.92999スウェーデンクローナへと下落。20年11月以来、4年4カ月ぶりの安値をつけました。原油価格の下落がノックセックに対する下押し圧力となりました(*詳細は後述)。

米国のトランプ政権は、4日に発動したカナダとメキシコからの輸入品に対する25%(ただし、カナダのエネルギー製品には10%)の関税について、自動車への適用を1カ月間免除すると発表しました。関税の免除対象となるのは、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)に定められた条件を満たした自動車です。

(本日の相場見通し)

本日は、ECB(欧州中銀)理事会TCMB(トルコ中銀)政策会合が開かれます。これらの結果が材料になる可能性があります。

<ECB>日本時間22時15分に理事会結果発表、同22時45分からラガルド総裁が会見
ECBは24年6月に利下げを開始し、前回25年1月の理事会まで5回の利下げを行いました(24年9月以降では4会合連続で利下げを実施)。政策金利は現在、ECBが最も重視している下限の中銀預金金利が2.75%、残りの2つ、主要リファイナンス金利が2.90%、限界貸出金利が3.15%です。

本日の理事会でも0.25%の利下げが行われると市場は予想しています。その通りの結果になれば、ECBの声明やラガルド総裁の会見で今後の金融政策についてどのようなヒントが示されるかに注目です。

前回1月の理事会では、声明で「会合ごとにデータを分析して適切な金融政策を決定する」「特定の政策金利の軌道にコミットしているわけではない」と表明されました。ラガルド総裁は会見で「(政策金利が)向かっている方向は明らか」と述べ、利下げするとの決定は全会一致だったことを明らかにしました。また、「われわれは中立金利に達していない。利下げをどこで止めるかの議論は全く時期尚早だ」とも語りました。

市場では、ECBは本日を含めて25年末までに3回の利下げを行うとの観測があります。ECBの声明やラガルド総裁の会見がタカ派的な内容となって追加利下げ観測が市場で後退すれば、ユーロが堅調に推移してユーロ/円やユーロ/英ポンドは上昇しそうです。

※ユーロ/円のテクニカル分析は、本日の『テクニカル・ポイント』[ユーロ/円、ECB理事会&ラガルド総裁会見が相場動意となるか]をご覧ください(お客様専用ページへのログインが必要です)。

<TCMB>日本時間20時に会合結果発表
TCMBは24年12月と25年1月の2会合連続で2.50%の利下げを実施しており、現在の政策金利は45.00%です。

トルコの2月CPI(消費者物価指数)は前月比2.27%、前年比39.05%と、上昇率はいずれも前月(5.03%と42.12%)から鈍化しました。TCMBは本日の会合で追加利下げを行うことを決定するとみられます。利下げ幅は過去2会合と同じく2.50%になりそうです。

TCMBの声明で今後の金融政策についてどのようなヒントが示されるかにも注目です。今回2.50%の利下げが行われたとしても、声明で追加利下げペースが今後鈍化する可能性が示されれば、トルコリラはそれほど下落しないかもしれません。

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米国の先週分の新規失業保険申請件数が本日発表されます(日本時間22:30)。新規失業保険申請件数の市場予想は23.5万件と、前週の24.2万件から減少するとみられています。

2月S&Pグローバルサービス業PMIや2月コンファレンスボード消費者信頼感指数など、最近発表された米国の経済指標は弱めの結果が目立ちます。市場では米景気減速への懸念やFRB(米連邦準備制度理事会)の追加利下げ観測が高まっており、米ドルに対して下押し圧力が加わっています。

新規失業保険申請件数が市場予想と比べて弱い結果だった場合、米ドルに対する下押し圧力はさらに強まる可能性があります。

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最近のノックセックの下落は原油価格の下落が主な要因と考えられます。原油価格の下落は、資源国通貨であるノルウェークローネにとってマイナスです。

原油価格の代表的な指標であるWTI原油先物の4月物は、前日比1.95ドル安(-2.9%)の1バレル=66.31ドルで取引を終了。一時は65.22ドルへと下落し、中心限月としては23年5月以来の安値をつけました。

原油価格下落の主な要因として、以下のことが挙げられます。
・OPEC(石油輸出国機構)加盟国と非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」が3日、有志国が実施している原油の自主減産を予定通り4月から段階的に縮小する(=原油生産を増やす)と発表したこと
・米国の景気減速によって原油の需要が減少するとの懸念

5日の原油価格下落については、EIA(米エネルギー情報局)の週間石油在庫統計で、原油在庫の増加が市場予想を大きく上回ったこともあるようです。原油在庫の結果は前週比361.4万バレル増、市場予想は34.1万バレル増でした。

ノックセックは引き続き原油価格の動向に影響を受けやすい状況になりそう。原油価格が一段と下落する場合、ノックセックは上値が重い展開になる可能性があります。

八代和也

執筆者プロフィール

八代和也(ヤシロカズヤ)

シニアアナリスト

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