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トランプ政権の「頼みの綱」、予算調整法とは?

2025/01/15 08:23

【ポイント】
・共和党はトランプ次期大統領の優先政策を予算調整法案に盛り込む意向
・予算調整法案は共和党の賛成だけで成立可能
・ただし、共和党内の足並みがそろうかどうかは不透明

1月20日に誕生するトランプ政権、議会の上院と下院、いずれもが共和党が支配する、いわゆる「トリプルレッド」となっており、共和党のイニシアチブが実現しやすい状況です。ただし、通常の法案であれば、上院ではフィリバスター(※)が可能であり、成立のためには民主党の協力が必要になります。

※上院には法案審議に時間制限がないため、延々と演説を続けることで採決できない状況を作ること。現在では、実際に演説する必要はなく、フィリバスターを宣言するだけで有効となります。フィリバスターを終了させて採決に持ち込むためには上院100議席のうち60議席以上のスーパーマジョリティの賛成が必要です。

ところが、予算調整法案にはフィリバスターは使うことができず、50議席以上(※)の単純過半数で成立可能です。そのため、トランプ陣営は減税の延長など選挙公約の多くを予算調整法案に盛り込んで成立させようとしています。もっとも、共和党内の財政保守派が予算調整法案に賛成するかどうかは不透明です。

※上院での票決が50対50の場合、下院議長を務める副大統領がキャスティングボートを握るため、共和党の法案なら50議席の賛成で成立可能。民主党の法案であれば51議席の賛成が必要です。

■10日付け「トランプ2.0の進め方、大統領令や予算交渉など」もご覧ください。

予算調整法とは?
議会が毎年策定する予算とは12本の歳出法のこと。歳出法は歳出全体の約3割に過ぎず、残りの約7割は社会保障など個別の法に基づく支出や国債費(利払い)など。通常、議会は予算の策定にあたり、歳出入の全体像を決める予算決議を採択します(予算決議には法的拘束力はなく、あくまで設計図の位置付け)。そして、この予算決議に合わせて歳出入を調整するのが予算調整法です。

予算内訳

トランプ政権に2度のチャンス⁉
昨年10月に始まった25年度は正式な予算が成立せず、前年度実績をベースにした継続予算(つなぎ予算)が発効しています。現在の継続予算は3月14日まで。そのため、3月14日までに新たな継続予算か、正規の予算を成立させる必要があります。共和党は遅ればせながら予算決議を採択し、それに合わせる形で予算調整法を成立させる意向です。

ジョンソン下院議長はトランプ次期大統領の優先政策を5月までに成立させると述べており、予算調整法の成立を念頭に置いているのでしょう。仮に、25年度の予算調整法が想定通りに成立しなければ、26年度の予算調整法案で同様の取り組みを行うものとみられます。今年10月に始まる26年度予算の編成プロセスも近々始まるため、トランプ政権には2度のチャンスがあることになります。

ただし、共和党も一枚岩ではありません。昨年末、トランプ氏が要求したデットシーリング(債務上限)の引き上げを含む継続予算は党内財政保守派の反対によって日の目を見ませんでした。したがって、予算調整法も簡単に成立するわけではなさそうです。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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