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米経済指標に注目、トランプ次期大統領の発言に要注意

2024/12/02 09:14

【ポイント】
・米ISM製造業景況指数で市場のFRB金融政策見通しが変化するか
・トランプ次期大統領が関税に言及、南アフリカランドの重石となるか

(欧米市場レビュー)

11月29日、欧米時間の外為市場では、が堅調に推移。一時、米ドル/円は149.419円、ユーロ/円は157.935円、豪ドル/円は97.373円、NZドル/円は88.446円へと下落し、米ドル/円は10月21日以来、ユーロ/円とNZドル/円は9月19日以来、豪ドル/円は9月20日以来の安値をつけました。12月の東京都区部CPI(消費者物価指数)や植田日銀総裁の発言を受けて12月18-19日の日銀金融政策決定会合での追加利上げ観測が強まったことが、円の支援材料となりました。

東京都区部CPI(生鮮食品を除く)の結果は前年比2.2%と、上昇率は10月の1.8%から高まり、市場予想の2.1%を上振れました。植田日銀総裁はメディア・インタビューで「データがオントラックに推移しているという意味では(追加利上げの時期が)近づいている」、「インフレ率が2%を超え始めている時の一段の円安はリスクが大きい。場合によっては政策で対応しなければいけなくなる」と述べました。植田総裁のインタビューは11月28日に行われ、30日(日本時間)に配信されました。

(本日の相場見通し)

米国の11月ISM製造業景況指数が本日発表されます(日本時間24:00)。ISM製造業景況指数の市場予想は47.6と、業況判断の分かれ目である50は引き続き下回るものの、10月の46.5から改善するとみられています。

FRB(米連邦準備制度理事会)は12月17-18日にFOMC(米連邦公開市場委員会)を開きます。CMEのFedWatchツールによると、市場が織り込む12月FOMCの確率は、0.25%の利下げが66%、政策金利の据え置きが34%です。ISM製造業景況指数が市場予想を上回る結果になれば、“据え置き”との観測が強まるとともに、米ドルが堅調に推移する可能性があります。その場合、米ドル/円や米ドル/カナダドルは上値を試し、一方でユーロ/米ドルや英ポンド/米ドル、豪ドル/米ドルは下値を試す展開になりそうです。

本日はまた、ウォラーFRB理事が経済見通しについて講演し、ウィリアムズNY連銀総裁が対話集会に参加する予定です。ウィリアムズ総裁は11月21日に公表されたインタビューで「インフレ率の鈍化と金利のさらなる低下を予想する」と述べました。ウォラー理事については、前回11月6-7日のFOMC以降、米経済やFRBの金融政策に関する発言は伝わっていません。ウォラー理事やウィリアムズ総裁がFRBの金融政策の先行きについて新たなヒントを示せば、材料になりそうです。

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米国のトランプ次期大統領の発言には引き続き要注意です。トランプ次期大統領は11月25日(日本時間26日)、SNSに「(大統領就任日の)25年1月20日に、メキシコとカナダから輸入する全ての製品に25%の関税を課し、中国からの輸入品すべてに追加で10%の関税を課す」と投稿。この投稿によってメキシコペソやカナダドルが対米ドルで急落する場面がありました。

トランプ次期大統領は11月30日に「われわれが傍観している間に、BRICS諸国が米ドル離れを進めようとする考えはもう終わりだ」、「新たな通貨を作らず、米ドルに代わる他の通貨を支持しないという約束をBRICS諸国に求める。さもなくば、100%の関税に直面する」などとSNSに投稿しました。BRICSでは、貿易決済などで米ドル依存から脱却する動きがあり、米ドル以外の通貨での決済やBRICS共通通貨の創設を求める国もあります。

南アフリカはBRICSを構成する国のひとつです(他には中国やブラジルなど)。トランプ次期大統領の投稿が市場で意識されれば、南アフリカランドには下押し圧力が加わるかもしれません。

八代和也

執筆者プロフィール

八代和也(ヤシロカズヤ)

シニアアナリスト

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