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FOMC議事録:景気は想定以上に堅調で、利下げを急がない⁉

2024/11/27 08:45

【ポイント】
・議事録では、緩やかな利下げが適切との判断
・景気は想定以上に堅調。中立金利が上方シフトしている可能性も
・市場は12月の利下げを6割強織り込む

米FOMC議事録(11/6-7開催分)によれば、「経済・物価情勢が想定通りなら、中立的な政策金利へと時間をかけて緩やかに利下げすることが適切だと参加者は予想した」とのこと。これは、声明やパウエル議長の記者会見で表明された通り。14日の講演でパウエル議長が「利下げを急がない」と述べたこととも一致しています。

ただし、議事録公表前にカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁がTV番組で「12月に0.25%の利下げを検討するのは妥当だ」と述べたこともあり、12月利下げの観測がやや高まりました。26日のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が織り込む12月の0.25%利下げの確率は64で、25日の54%から上昇しました。

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議事録のなかで、注目されたのは以下の通り。

コアインフレは引き続きやや高いものの、インフレはピークから顕著に鈍化していると評価。労働コストを強く反映するとしてFRBが注目するコアサービス(住居費を除く)もコロナ前のインフレ安定期にみられた水準に接近しているとしました。ただ、数人の参加者は、インフレ目標の達成までに以前の想定よりも時間がかかる可能性があると指摘しました。

移民の影響、雇用統計の改定(過去データの下方修正)、そして直近ではハリケーンやストが評価を難しくしているものの、労働市場は堅調との判断が示されました。労働力に対する需要はゆっくりと鈍化してはいるが、(アグレッシブな利下げを必要とするような)急激な悪化はみられていないとのこと。

景気や個人消費は総じて想定以上に力強いと判断。政策金利の中立水準が不透明なため、現在の政策金利がどの程度景気を抑制しているかを判断するのは難しい(※)。そのため、ゆっくりとした利下げが望ましいとされました。

※25日のTV番組で、カシュカリ総裁は、高金利にもかかわらず景気が堅調を維持しているため、政策金利の中立水準が以前より上方にシフトした可能性があると指摘しました。そのことは利下げを急ぐべきではない根拠の1つとなり得ます。

リスク評価に関して、インフレ上振れのリスクは以前と変わらない一方、景気や雇用が下振れするリスクはいくぶん減少したと判断されました。そのうえで、インフレが高めのままであれば利下げを小休止する可能性があると数人が指摘。他の数人は、労働市場が急速に悪化したり景気が失速したりすれば利下げのペースを速めるかもしれないと指摘しました。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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