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米財務長官候補ベッセント氏への期待!?

2024/11/26 07:54

【ポイント】
・ベッセント氏はマクロ投資に特化したヘッジファンドの創設者
・同氏は財政保守派で、減税には財源を手当てする意向
・関税を武器に公正な貿易を目指す
・トランプ次期大統領とマーケットの間を取り持つことができるか

25日の米債券市場で長期金利(10年物国債利回り)が大きく低下(=国債価格は大きく上昇)しました。財務長官候補にベッセント氏が指名されたことで、トランプ次期政権下でインフレが高進したり、財政赤字が拡大したりするとの懸念が後退したためです。

米長期金利

元々、財務長官候補にはベッセント氏が有力視されていました。しかし、マスク氏が「(ベッセント氏指名は)普通過ぎて面白くない」として、大手証券仲介業CEOのルトニック氏を推したため、人選が遅れていました。結局、ルトニック氏は商務長官候補に指名されました。

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以下に、WSJ紙やBloombergの記事、Wikipediaなどからベッセント氏のプロフィール政策スタンスをまとめました。ベッセント氏はマーケットに精通した穏健派であり、上院の承認にも問題はなさそうです。ベッセント氏は、トランプ次期大統領の公約を実現しつつ、マーケットとも良好な関係を築くことができるのか。その手腕が注目されます。

ベッセント財務長官候補

スコット・ベッセント氏は62年生まれの62歳。ヘッジファンドのキースクエア・グループの創設者&現CEO。84年イェール大学卒業(政治科学専攻)。数社の金融機関勤務を経て91-00年にソロスファンド、92年の英ポンド危機において主導的役割を果たして巨額の利益をもたらしました。11-15年にソロスファンドに復帰、13年には円下落に賭けるなどして大きな利益(10億ドル!)を上げました(同年4月に日銀の「異次元の緩和」)。

※もっとも、キースクエアのパフォーマンスは良好とは言えないようです。Wikipediaによれば、17年から21年までのリターンは毎年イーブンかマイナス。運用資産は17年の51億ドルから23年には6億ドルになりました(それだけ損したわけではなく、パフォーマンスが冴えないため、顧客が資金を引き揚げたのでしょう)。また、顧客の機関投資家は180社から20社に減少したとのことです。

ベッセント氏は、経済情勢や地政学リスクの分析に基づく、いわゆるマクロ投資を専門としています。92年の英ポンド売りも、住宅市場低迷に関する同氏の調査が一役買ったとされています。

ベッセント氏は、米国の財政赤字や政府債務の増大に危機感を持っており、その解決策として経済成長を挙げています。いわゆる財政保守派で(だから市場が好感した)、トランプ減税の延長を支持するが、そのために歳出削減や他の増収策によってコストを抑制すべきとの立場です。

指名後のインタビューで、ベッセント氏は「優先する政策はトランプ次期大統領の減税案を実現することだ」と述べました。ただし、「関税引き上げ歳出削減も重要だ」とし、米ドルについては「世界の準備通貨(基軸通貨)としてのドルの地位を維持することだ」としました。

また、ベッセント氏は「グローバルな経済秩序の再構築」を標ぼう。関税を諸外国との交渉の武器に使い、公正な貿易の実現を目指す。今年10月の講演のタイトルは「国際経済のシステムを再び偉大にする」でした。

「3本の矢」
ベッセント氏は、故安倍元首相の「3本の矢」に着想を得て、「3-3-3」を提唱しています。すなわち、「財政赤字は28年までにGDPの3%に収める」、「規制緩和を通して3%の経済成長率を達成する」、「原油生産を日量300万バレル増やす」の3つです。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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