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ユーロが軟調。対米ドルで4月下旬以来、対英ポンドで22年4月以来の安値

2024/11/12 09:08

【ポイント】
・ドイツの政局不透明感や高率関税への懸念からユーロに下押し圧力
・米長期金利が上昇するか
・リッチモンド連銀総裁らの講演で市場のFRB金融政策見通しが変化するか

(欧米市場レビュー)

11日、欧米時間の外為市場では、ユーロが軟調に推移。一時、ユーロ/米ドルは1.06272ドル、ユーロ/英ポンドは0.82588ポンドへと下落し、ユーロ/米ドルは4月22日以来、ユーロ/英ポンドは22年4月以来の安値をつけました。ドイツの政局不透明感やトランプ新政権がEU(欧州連合)からの輸入品に高率関税を課すとの懸念が(※)、ユーロに対する下押し圧力となりました。

(※)ドイツのショルツ首相(社会民主党)は6日、リントナー財務相(自由民主党)を解任。これにより、社会民主党と緑の党、自由民主党の3党による連立政権は事実上崩壊しました。トランプ氏は大統領選挙中の10月29日、EUは米国の車や農産物を買わない一方で何百万台もの車を米国で売っていると指摘。「EUは大きな代償を払わなければならない」と述べました。

カナダドルメキシコペソも弱含み。一時、米ドル/カナダドルは1.39460カナダドルへと上昇し、メキシコペソ/円は7.454円へと下落しました。原油価格の下落がカナダドルやメキシコペソの重石となりました。米WTI原油先物の中心限月の12月物は、前営業日比2.34ドル安の1バレル=68.04ドルで取引を終了。中国経済の低迷によって原油の需要が鈍化するとの懸念が、原油価格に対する下押し圧力となりました。

(本日の相場見通し)

本日は米国の主要な経済指標の発表はなく、米長期金利(10年物国債利回り)の動向が材料になりそうです。

米長期金利は6日に一時4.48%へと上昇し、7月上旬以来の高い水準をつけました(その後やや低下しました。11日はベテランズデーで米債券市場は休場でした)。

足もとの米長期金利上昇の背景には、トランプ氏とハリス氏の両大統領候補の政策が米財政赤字を拡大させるとの懸念がありました。米長期金利が上昇を続ける場合、米ドルが堅調に推移して、米ドル/円や米ドル/カナダドルには上昇圧力が、ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドル、豪ドル/米ドルには下落圧力が加わりそう。米ドル/カナダドルの目先の上値メドとして、22年10月高値の1.39746カナダドルが挙げられます。

本日の『ファンダメ・ポイント』は、[米ドル/円と日米長期金利の新たな関係]です。

本日はまた、バーキン・リッチモンド連銀総裁カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁の講演があります。

カシュカリ総裁は9日に「米経済の回復力には驚いている。成長が維持され、今後も構造的に生産性の高い経済が続くならば、利下げはさほど必要ないだろう」との認識を示しました。また、10日には「FRBはインフレが2%まで低下していくとの確信が欲しい。追加利下げを決定する前にさらなる証拠を得る必要がある」と述べました。

FRBは12月17-18日に次回FOMC(米連邦公開市場委員会)を開きます。バーキン総裁やカシュカリ総裁の講演で12月のFOMCについてのヒントが提供されれば、材料になる可能性があります。利下げ観測が後退する場合には、米ドルにとってプラスになりそうです。

CMEのFedWatchツールによると、市場が織り込む12月FOMCの確率は、0.25%の利下げが66.8%、据え置きが33.2%です(日本時間08:25時点)。

***

ドイツの11月ZEW景況感調査が本日発表されます(日本時間19:00)。この結果にユーロが反応する可能性があります。

ZEW景況感調査の期待指数の市場予想は13.0と、10月の13.1から若干低下するとみられています。ドイツの政局不透明感などからユーロが下押しするなか、ZEW景況感調査が市場予想を下回る結果になれば、ユーロに対する下押し圧力は一段と強まるかもしれません。

※ユーロ/英ポンドのテクニカル分析は、本日の『テクニカル・ポイント』[ユーロ/英ポンド、もう一段の下値切り下げとなるか]をご覧ください(お客様専用ページへのログインが必要です)。

八代和也

執筆者プロフィール

八代和也(ヤシロカズヤ)

シニアアナリスト

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