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ベージュブック:米景気は良いのか、悪いのか??

2024/10/24 07:46

【ポイント】
・ベージュブックは足もとの米景気の低迷を示唆
・経済指標は比較的良好で、7-9月期GDPは3%超も
・ハリケーンや大統領選の影響もあり、判断はより難しくなりそう

米ベージュブック(地区連銀経済報告)は、足もとの景気低迷を示唆しました(後述)。最近発表された経済指標は、9月の雇用統計や同小売売上高など堅調なものが多くみられます。アトランタ連銀のGDPNow(短期予測モデル)によれば、7-9月期のGDPは前期比年率3.4%と予測されています(商務省の発表は10月30日)。足もとの米景気は堅調なのか、それともベージュブックが示唆するように減速しているのか。

DGPNow

FRBの利下げ観測はやや後退しており(※)、長期金利は9月中旬に上昇基調に転じて7月下旬以来の水準に達しています。ただ、足もとの長期金利の上昇は、景気というよりも財政赤字の拡大や新政権の経済政策への懸念を反映している面もありそうです。

※23日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、次回11月7日のFOMCでは0.25%の利下げが有力視されていますが、据え置きも10%強の確率で市場に織り込まれています。また、11月のFOMCも含めて、年内の利下げ幅が計0.25%と計0.50%との見方がほぼ五分五分になっています。

米金融政策見通し

今後、9月~10月上旬に東海岸南部を襲った2つのハリケーン、「へリーン」と「ミルトン」の影響が経済指標に表れる可能性があります。また、大統領選挙という、ある意味イレギュラーなイベントも控えているため、投資家のみならず金融当局にとっても判断は難しくなりそうです。

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ベージュブック

ベージュブックによれば、12地区のうち経済活動がわずかに拡大したのが2地区。残り10地区は「ほとんど変化なし」でした。ほとんどの地区で製造業の活動が縮小しました。

個人消費はマチマチで、数地区ではより安価なものへとシフトしているとの報告。住宅市場は底堅く推移。住宅の在庫は増えているが、引き続き手ごろな物件が不足しているとのこと。港湾ストライキは短期間だったので、その影響は限定的。ハリケーンは農作物に損害を与え、一部の企業や観光の障害となりました。不透明感は高まっているものの、企業の長期的な見通しに関しては楽観的な見方が増えたとのことでした。

雇用はわずかに増加。7地区程度が雇用の緩やかな増加を報告した一方で、残りの地区ではほとんど変化がありませんでした。労働者の需要はいくぶん弱まり、採用は事業拡張ではなく主に欠員の補充が目的でした。

賃金は総じて緩やかなペースで上昇。労働需給が緩んだことで、賃上げのペースは鈍化しました。ただ、一部の職種に関しては通常以上の賃上げが報告されました。

インフレは引き続き鈍化しました。ただ、卵や乳製品など一部の食品価格は大幅に値上がりしました。住宅価格は多くの地区でジリ高でした。保険やヘルスケアのコスト上昇がインフレ圧力となっていました。販売価格よりも投入価格の値上がりが大きいため、企業の利ザヤは圧縮されていました。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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