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ゴールドが調整、原油は乱高下 「要衝ホルムズ海峡」

2024/10/11 12:15

<金は軟調な展開、米大幅利下げ観測が後退>
今週(10/7─)の米ドル建て金先物は軟調な展開となりました。強い9月米雇用統計をきっかけに米大幅利下げ観測が後退。2,600ドル台前半まで水準を下げました。米長期金利が上昇しているほか、ドルインデックスも上昇しており、ドル建ての金には逆風の環境となっています。ただ、市場は依然として強気で下落は一時的な調整に過ぎないとの見方も健在です。

米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,550─2,700ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,800─13,000円

*意見割れた9月FOMC
0.50%の大幅利下げを決めた9月17─18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)。その議事要旨が9日に発表されました。大多数の参加者が0.50%の利下げを支持した一方、0.25%を支持した参加者もいたことが明らかになりました。

同日のFOMCではボウマン理事が反対票を投じましたが、それ以外にも大幅利下げに懸念を持つ参加者が相当数いたようです。0.50%の利下げを支持した参加者の理由は労働環境の悪化懸念でしたが、同会議後には、「ホームラン級」とまで呼ばれた強い9月米雇用統計が発表されています。いま決議を採ったらどんな結論になるか興味深いところです。

市場では今後の米利下げペースの予想が大きく後退。今年末までに11月と12月の2回の会合合計で0.75%や1.00%の利下げが実施されるとの予想は大きく縮小。今は、0.25%ずつ合計で0.50%引き下げられるとの見通しが市場のメインシナリオとなっています。

米大幅利下げ観測の後退で米10年国債金利が4%台に上昇。それに伴いドルインデックスも約1か月半ぶりの水準に上昇しています。ドル建ての金にとってドル高は金の割高感につながるためネガティブ要因になります。

ただ、金が過去最高値を連日更新していたことで、利益確定売りなどによる調整が入りやすかった面もあるでしょう。東西分断や中東の緊迫状況は変わっていないことから、「安全資産」やドルの代替資産としての金需要は根強いとして、押し目は買いとの強気な声も市場では少なくありません。

*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/12/29~2024/10/10)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線
米ドル建て金先物の日足チャート
(出所:TradingView)


<原油は乱高下>
今週のWTI原油先物価格は荒い値動きとなりました。イスラエルがイランの石油関連施設を攻撃するのではないかとの懸念から一時78ドル台と約1か月半ぶりの高値を付けましたが、レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの幹部がレバノンでの停戦に向けた取り組みを支持していると伝えられ70ドル台前半に反落。さらに、その後米国のハリケーンの影響などが警戒され、足元は70ドル台半ばで推移しています。

WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル70─80ドル

*要衝ホルムズ海峡
中東情勢が緊迫化する度に、イランによるホルムズ海峡の封鎖懸念が浮上し、原油価格の上昇要因になります。

ホルムズ海峡は、中東のペルシャ湾とオマーン湾の間に位置する海運の要衝。S字型に曲がった狭い航路ですが、およそ世界の原油輸出量の3割から4割がホルムズ海峡を通過すると言われ、日本が輸入する原油の約8割がホルムズ海峡を通るとされます。

ホルムズ海峡を経由して原油を輸出しているのは、サウジアラビア、イラク、クウエート、バーレーン、カタール、UAE(アラブ首長国連邦)、そしてイランです。同海峡を封鎖してしまえば、イランも原油輸出ができなくなってしまう「両刃の剣」なのですが、報復優先を選ぶおそれがあるため予断を許しません。

海上封鎖は機雷設置などによって行われます。船が近づいたり触れたりすれば爆発する機雷は比較的安く作れるうえ効果も大きいと言われます。機雷を排除する掃海艇もありますが、すべてを完璧に回収するのは容易ではないため、機雷が残っているかもしれないという状況では、心理的な航路妨害の効果があるためです。

米エネルギー情報局(EIA)が10日に発表した10月4日時点の週間石油在庫統計では、原油在庫が前週比581万バレル増加しました。ガソリン在庫は630.4万バレルの減少、留出油は312.4万バレルの減少となりましたが、原油在庫は前週分と合わせ1,000万バレル近い大幅増加となり、需給が緩む可能性を意識させました。

*WTI原油先物の日足(期間:2023/12/29~2024/10/10)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線
米ドル建て金先物の日足
(出所:TradingView)


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伊賀大記

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伊賀大記(イガダイキ)

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