ゴールド上昇一服、原油は急反発 中東情勢が緊迫化
2024/10/04 10:30
<金は上値重い展開>
今週(9/30─)の米ドル建て金先物は上昇一服となりました。2,600ドル台後半と過去最高値圏での推移ではあるものの上値が重い展開です。パウエルFRB(米連邦準備理事会)議長が9月30日に、利下げプロセスは急がないとの見解を示したことや、9月米ISM非製造業景況指数が市場予想を上回ったことで米長期金利が上昇し、金には重石になっています。中東情勢が緊迫化しているものの「安全資産」としての需要はまだ限定的のようです。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,600─2,750ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,800─13,100円
*「安全資産」としての金
中東情勢が緊迫化しています。イランがイスラエルをミサイルで攻撃。イスラエルも報復する姿勢を示しています。またイスラエルはレバノンにも地上侵攻を開始しており、多方面で地政学リスクが高まっています。
米国株は過去最高値圏で底堅い動きをみせていますが、投資家の不安心理を示す「恐怖指数」として知られるシカゴ・オプション取引所のVIX指数が一時20ポイントに上昇するなど、マーケットの警戒感も徐々に上がってきました。
有事の際、「安全資産」として資金の逃避先となる中心商品が米国債と金です。地政学リスクが高まるケースでは、米国の関与が警戒されることもしばしばありますが、過去の多くの場合、債券では消去法的に米国債が最も安全な資産として認識されてきました。一方、金は米国債の信頼が揺らぐ局面でも、米国債の代替資産として需要が高まります。
グローバルな国債市場の中心である米国債が買われれば、世界的に金利が低下しやすくなります。利息が付かない金には、この面でも有利に働きます。
ただ、最近のリスクオフの際は、米国債や金を含めた全ての金融資産が売られるケースが多くなっています。米国債が売られれば金利が上昇。金にはさらにネガティブ要因になります。初期のパニックが収まれば、国債や金などの安全資産に資金が逃避しやすくなりますが、初期の動きには注意が必要でしょう。
*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/12/26~2024/10/3)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<原油は急反発、約1カ月ぶり高値>
今週のWTI原油先物価格は急反発しました。中東情勢の緊迫化で原油の供給や輸送に悪影響が出るとの見方が強まり、3日には一時74ドル台と約1カ月ぶりの高値を付けています。一方、米原油在庫の増加や、産油国の増産計画、中国の需要減に対する懸念などが上値を押さえる要因になっています。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル69─76ドル
*イラン石油施設への攻撃を警戒
イランが1日、イスラエルに対し弾道ミサイルを発射しました。レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラ指導者のナスララ師らが殺害されたことへの報復だとしています。
イスラエルのネタニヤフ首相はイランに報復することを表明。イランに経済的なダメージを与えるために石油施設を標的にする可能性があると警戒されています。イランは23年で日量466万バレルの石油を生産しており、世界シェアは4.8%です。
またイスラエルはレバノンに対し地上侵攻を開始。イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラ拠点を制圧するために、今後、作戦部隊の規模を拡大するとしており、数万人の戦闘員を擁するとされるヒズボラと全面的な紛争に発展する恐れが出ています。
一方、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」は2日、合同閣僚監視委員会(JMMC)会合を開き、現行の生産政策の維持を決定しました。現在、世界需要の約5.7%に相当する日量586万バレルの協調減産を実施していますが、自主的減産の段階的解除の一環として、12月に日量18万バレルの増産を計画しています。
米エネルギー情報局(EIA)が2日に発表した9月27日時点の週間石油在庫統計では、原油在庫が前週比388.9万バレル増加しました。3週ぶりの増加です。留出油は128.4万バレルの増加となりましたが、ガソリン在庫も111.9万バレルの増加。需給が緩む可能性を意識させました。
*WTI原油先物の日足(期間:2023/12/29~2024/10/3)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
◆本レポートは、執筆者が信頼に値すると判断した情報に基づいて作成されたものです。あくまで情報提供が目的であり、投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。
◆本レポート内の予想やその他の見解は、出所を明記しているものを除き、執筆者個人のものであり、当社のものではありません。したがって、その内容等について当社は責任を負いかねます。また、当社はこれに関するお問い合わせにはお応えいたしかねますのでご了承ください。
◆相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
◆本レポートの内容は予告なく変更される場合があります。
◆本サイトに掲載された内容の著作権は、当社または執筆者(またはその提供元)に帰属します。したがって、無断で使用、複製、改変することを禁じます。
今週(9/30─)の米ドル建て金先物は上昇一服となりました。2,600ドル台後半と過去最高値圏での推移ではあるものの上値が重い展開です。パウエルFRB(米連邦準備理事会)議長が9月30日に、利下げプロセスは急がないとの見解を示したことや、9月米ISM非製造業景況指数が市場予想を上回ったことで米長期金利が上昇し、金には重石になっています。中東情勢が緊迫化しているものの「安全資産」としての需要はまだ限定的のようです。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,600─2,750ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,800─13,100円
*「安全資産」としての金
中東情勢が緊迫化しています。イランがイスラエルをミサイルで攻撃。イスラエルも報復する姿勢を示しています。またイスラエルはレバノンにも地上侵攻を開始しており、多方面で地政学リスクが高まっています。
米国株は過去最高値圏で底堅い動きをみせていますが、投資家の不安心理を示す「恐怖指数」として知られるシカゴ・オプション取引所のVIX指数が一時20ポイントに上昇するなど、マーケットの警戒感も徐々に上がってきました。
有事の際、「安全資産」として資金の逃避先となる中心商品が米国債と金です。地政学リスクが高まるケースでは、米国の関与が警戒されることもしばしばありますが、過去の多くの場合、債券では消去法的に米国債が最も安全な資産として認識されてきました。一方、金は米国債の信頼が揺らぐ局面でも、米国債の代替資産として需要が高まります。
グローバルな国債市場の中心である米国債が買われれば、世界的に金利が低下しやすくなります。利息が付かない金には、この面でも有利に働きます。
ただ、最近のリスクオフの際は、米国債や金を含めた全ての金融資産が売られるケースが多くなっています。米国債が売られれば金利が上昇。金にはさらにネガティブ要因になります。初期のパニックが収まれば、国債や金などの安全資産に資金が逃避しやすくなりますが、初期の動きには注意が必要でしょう。
*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/12/26~2024/10/3)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<原油は急反発、約1カ月ぶり高値>
今週のWTI原油先物価格は急反発しました。中東情勢の緊迫化で原油の供給や輸送に悪影響が出るとの見方が強まり、3日には一時74ドル台と約1カ月ぶりの高値を付けています。一方、米原油在庫の増加や、産油国の増産計画、中国の需要減に対する懸念などが上値を押さえる要因になっています。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル69─76ドル
*イラン石油施設への攻撃を警戒
イランが1日、イスラエルに対し弾道ミサイルを発射しました。レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラ指導者のナスララ師らが殺害されたことへの報復だとしています。
イスラエルのネタニヤフ首相はイランに報復することを表明。イランに経済的なダメージを与えるために石油施設を標的にする可能性があると警戒されています。イランは23年で日量466万バレルの石油を生産しており、世界シェアは4.8%です。
またイスラエルはレバノンに対し地上侵攻を開始。イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラ拠点を制圧するために、今後、作戦部隊の規模を拡大するとしており、数万人の戦闘員を擁するとされるヒズボラと全面的な紛争に発展する恐れが出ています。
一方、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」は2日、合同閣僚監視委員会(JMMC)会合を開き、現行の生産政策の維持を決定しました。現在、世界需要の約5.7%に相当する日量586万バレルの協調減産を実施していますが、自主的減産の段階的解除の一環として、12月に日量18万バレルの増産を計画しています。
米エネルギー情報局(EIA)が2日に発表した9月27日時点の週間石油在庫統計では、原油在庫が前週比388.9万バレル増加しました。3週ぶりの増加です。留出油は128.4万バレルの増加となりましたが、ガソリン在庫も111.9万バレルの増加。需給が緩む可能性を意識させました。
*WTI原油先物の日足(期間:2023/12/29~2024/10/3)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
◆本レポートは、執筆者が信頼に値すると判断した情報に基づいて作成されたものです。あくまで情報提供が目的であり、投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。
◆本レポート内の予想やその他の見解は、出所を明記しているものを除き、執筆者個人のものであり、当社のものではありません。したがって、その内容等について当社は責任を負いかねます。また、当社はこれに関するお問い合わせにはお応えいたしかねますのでご了承ください。
◆相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
◆本レポートの内容は予告なく変更される場合があります。
◆本サイトに掲載された内容の著作権は、当社または執筆者(またはその提供元)に帰属します。したがって、無断で使用、複製、改変することを禁じます。
- 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
- 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
- 当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
- 相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。