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NOK/SEKのリスク要因:ユーロとの連動!?

2024/09/24 07:40

【ポイント】
・NOKもSEKも取引量が少なく、リスクオフでは変動が大きい!?
・また、NOK/SEKには固有の潜在的なリスクあり
・特定通貨との連動や、ユーロ参加によるNOK/SEK消滅など

ノルウェー・クローネ/スウェーデン・クローナ(Nクローネ/Sクローナ。以下、NOK/SEK)を取引する際に注意すべきリスク要因について考察します。

■NOK/SEKの取引については当社HP「注目の新通貨ペア NOK/SEK」をご覧ください。

市場全体のリスクオフ
NOK/SEKは過去10年間、0.95000Sクローナ~1.10000Sクローナのレンジを中心に推移してきました。もちろん、レンジを大きく外れる場面はあり、近年では20年3月のコロナ・ショックで、NOK/SEKは一時0.85300Sクローナまで急落しました。また、リーマン・ショックの影響が色濃く残っていた09年3月には一時1.31810Sクローナまで上昇。これは少なくとも70年以降の最高値です。

NOKSEK

相場の方向は逆ですが、両場面に共通しているのは市場が強いリスクオフだったこと。22年のBIS(国際決済銀行)調査によれば、通貨取引量で、Sクローナは11位、Nクローネは13位。市場の流動性が大きく低下する場面で、取引量の少ない通貨の変動が大きくなるという典型でしょう。両通貨ともに取引量が少ないので、リスクオフの場面でどちらに片寄るかはその時の状況次第ということかもしれません。

NOK/SEK固有?のリスク
もっとも、上記の例は取引量の少ない通貨に共通のリスク要因です。想定以上の相場変動によって思いがけない損失が発生するリスクと別に、NOK/SEKには相場が動かないことによって取引する魅力が低下するという固有のリスクがあります。

それはNクローネやSクローナが特定の通貨、ここではユーロと連動する制度に移行するケースです。その極端な例がノルウェーやスウェーデンのユーロ導入でしょう。実際、両国はユーロ導入を国民に諮った結果、「否」との結論に達しています(※)。

※EU(欧州連合)加盟国はもともとERM(欧州為替相場メカニズム)への参加を義務付けられており(オプト・アウト=参加しない権利を選択したデンマークは例外)、ERMに最低2年間参加した国はユーロを導入することになっています。99年のユーロ誕生とともにERMはERM IIに移行しています(以下ではERMに統一)。ERM IIでは、自国通貨の変動幅を、あらかじめ合意した対ユーロ中心交換レートの±15%以内に収める必要があります。

◆ノルウェーの事情
ノルウェーはEU加盟そのものに反対しています。ノルウェーは72年に(EUの前身である)EC加盟を、94年にEU加盟を国民投票で否決しました。また、やや古いですが、18年の世論調査では国民の7割以上がEU加盟に反対したようです。天然資源が豊富で豊かなノルウェーが、EUへの加盟により小国として割りを食うとの危惧があるようです。

◆スウェーデンの事情
スウェーデンは95年にEUに加盟しました。しかし、ユーロ導入の条件であるERM参加は任意だとして、国民投票で承認されない限りERMに参加しない(=ユーロを導入しない)方針を打ち出しています。

スウェーデンの議会でユーロ導入を志向するのは弱小政党1党のみ。23年9月の世論調査では、ユーロ反対42%に対して、ユーロ支持は34%でした。

ユーロ導入の可能性は?
EUへの加盟に否定的なノルウェーは別として、スウェーデンでは、クローナ安やリクスバンクへの不信からユーロ支持派が増えているとの指摘はあります。NATO加盟(24年3月)も一つのキッカケになりうる事象でしょう。

仮に、ERMに参加しても、上述の通り対ユーロ中心交換レート±15%の変動は許容されます。ただし、ERM参加から2年後にノルウェーやスウェーデンがユーロに参加すれば、NOK/SEKは消滅します。また、それ以前でも、ERM参加によりファンダメンタルズからのかい離が拡大したと判断された場合、投機筋の攻撃などによって大きなショック相場が起こる可能性も無視できません(英国は92年、ヘッジファンドの攻撃を受けて参加からわずか2年でERMを離脱しました)。

現時点でNOK/SEKが取引できなくなる可能性は非常に低いでしょうが、将来を見据えて頭の片隅に置いておく方が良いのかもしれません。

【補足】NATO、EU、ユーロ圏の関係
NATO(北大西洋条約機構)、EU(欧州連合)、ユーロ圏に加盟/参加する国は下図の通りです。ノルウェーはNATOのみに加盟。スウェーデンはNATOとEUに加盟(NATO加盟は24年3月)。ユーロ圏20カ国のうちアイルランドなど4カ国はNATOに加盟していません。また、EUに加盟してユーロ圏に参加していない国でNATOに加盟していない国はありません。言わずもがなですが、ユーロ圏に参加している国は全てEUに加盟しています。

NATO EU EURO
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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