マネースクエア マーケット情報

米FRBの利下げ観測が一段と強まるか

2024/09/09 13:02

PDFはこちら

※次週のウィークリー・アウトルックは17日配信予定です。

【今週のポイント】
・米リセッション(景気後退)観測が一段と高まるか

・ECBは利下げか。その後のペースに関するヒントは??
・司法制度改革案をめぐるメキシコ議会の動向

8月の米雇用統計はやや弱め。前月比14.2万人増で、市場予想(16.5万人増)を下回りました、雇用統計を受けてFRBのウォラー理事が9月の利下げを「予告」したこともあって、米ドル/円は一時141円台まで下落しました。

9月17-18日の米FOMCに向けて市場の利下げ観測が一段と強まるかどうか。11日には米国の8月CPIが発表されます。インフレの鈍化が示された場合、利下げ観測が一段と高まりそうです。

最も注目されるのが米大統領選挙での両候補によるTV討論会。10日(日本時間11日午前10時開始)に実施されます。最新の世論調査によれば、ハリス氏が支持率でトランプ氏を上回っていますが、差はわずか。現時点で予定されている唯一のTV討論を受けて有権者の評価がどう変化するか、要注目でしょう。

両候補ともこれまではお互いを非難してきましたが、TV討論会では自身の政策に関する議論も活発化しそう。どちらの候補が有権者の支持を得るでしょうか。

12日にはECB(欧州中央銀行)の理事会が開催されます。6月に続いて利下げすると予想されています。利下げが実施された場合、ラガルド総裁が記者会見で追加利下げに関してどんなヒントを出すかが注目されます。<西田>

今週の主要経済指標・イベント

*******
FRB(米連邦準備制度理事会)は17-18日にFOMCを開きます。市場は利下げが行われると予想しており、FOMCの焦点は利下げ幅(0.25%か0.50%か)になっています。

11日発表の米国の8月CPI(消費者物価指数)などを受けて、0.50%の利下げ観測が後退すれば、米ドルが全般的に堅調に推移しそう。米ドル/カナダドルは上値を試し、一方で豪ドル/米ドルやNZドル/米ドルは下値を試す展開になると考えられます。

主要国の株価動向にも注目です。米国の景気減速への懸念などから主要国の株価が軟調に推移すれば、リスクオフ(リスク回避)の動きが強まるとともに、クロス円に下押し圧力が加わるかもしれません。

メキシコペソについては、司法制度改革をめぐるメキシコ議会の動きに要注意です。司法制度改革によって司法の独立性が脅かされると市場は懸念しており、それが足もとのメキシコペソ軟調の主な要因となっています。司法制度改革案は4日に議会下院で承認されて、上院に送付されました。今週中に上院で審議が始まるとの報道があります。司法制度改革案が成立に向けてさらに前進する場合、メキシコペソに対する下押し圧力は一段と強まる可能性があります。<八代>

今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:141.500円~144.000円>
市場は9月17-18日のFOMCでの利下げを確実視しています。注目はそれが0.25%幅か0.50%幅か。09月6日時点のCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のFedWatchによれば、0.25%利下げの確率が67%、0.50%利下げが33%です。

FOMC前の重要な経済指標が8月CPI(消費者物価指数)です。7月CPIは総合が前年比2.9%、食料とエネルギーを除くコアが同3.2%とインフレの落ち着きを示しました。市場予想は総合が前年比2.6%、コアが同3.2%です。結果次第ではFRBの利下げ観測に影響しそうです。

米長期金利(10年物国債利回り)は6日に一時3.64%と、23年6月以来の低水準をつけました。8月CPIなどを受けて米長期金利が一段と低下するならば、米ドル/円に下落圧力が加わりそうです。<西田>

今週の注目通貨ペア②:<ユーロ/米ドル 予想レンジ:1.08000ドル~1.13000ドル>
12日のECB理事会では0.25%の利下げが確実視されています。注目は会合後の会見でラガルド総裁が利下げペースに関してどんなヒントを出すか。6日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場は25年6月までに計1.5%(0.25%×6回)の利下げを予想しています。

一方で、米FRBに関しては、25年6月までに2.00%超の利下げを予想しています。市場予想が現実になれば、利下げペースは「ECB<FRB」なので、ユーロ/米ドルには上昇圧力が加わりそうです。9月中旬にはFRBなどの中銀会合が控えており、それらを受けて金融政策の見通しがどう変化するか、要注目でしょう。<西田>

今週の注目通貨ペア③:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.07200NZドル~1.09000NZドル>
豪ドル/NZドルは8月16日に一時1.10515NZドルへ上昇した後に反落し、9月6日には1.07931NZドルへと下落する場面がありました。

豪ドル/NZドルの為替レートは“豪ドル/米ドル÷NZドル/米ドル”で算出されます。市場の注目がFRBの金融政策へと向かって米ドル主導の相場展開となるなか、足もとの豪ドル/NZドル下落は “豪ドル/米ドルとNZドル/米ドルの変動幅の差”による影響が大きいと考えられます。

今後、市場の関心がRBA(豪中銀)とRBNZ(NZ中銀)の金融政策にも向けば、豪ドル/NZドルは上昇傾向に転じる可能性があります。RBAは23年11月に利上げを実施した後、政策金利を4.35%に据え置いており、「必要なら、追加利上げを行う」との姿勢です。RBNZ(NZ中銀)は8月の政策会合で0.25%の利下げを行ったうえ、「今後さらに利下げする可能性」を示しました。RBAとRBNZの金融政策スタンスには違いがあります。<八代>

今週の注目通貨ペア④:<米ドル/カナダドル 予想レンジ:1.34500カナダドル~1.37000カナダドル>
BOC(カナダ中銀)は9月4日に政策会合を開き、0.25%利下げすることを決定。政策金利を4.50%から4.25%へと引き下げました。利下げは3会合連続です。

マックレムBOC総裁は会合後の会見で、「インフレ率が7月時点の予測におおむね沿って鈍化し続ければ、政策金利のさらなる引き下げを予想するのが妥当だ」と述べ、追加利下げを示唆。マックレム総裁はまた、今後発表されるデータとそれがインフレ見通しに与える影響を評価するとし、「必要なら、より大幅な措置を講じる用意がある」とも述べました。BOCのこうした金融政策スタンスは、カナダドルにとってマイナスと考えられます。

米ドル/カナダドルについては、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策も重要です。8月のCPI(11日発表)など米経済指標の結果によって9月17-18日の米FOMCでの0.50%の利下げ観測が後退する場合(米ドルにとってプラス)、米ドル/カナダドルには上昇圧力が加わりそうです。<八代>

西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

  • 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
  • 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
  • 当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
  • 相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
topへ