ゴールド最高値圏、増すインドの存在感 原油は上昇一服
2024/08/30 14:32
<金は堅調、下値切り上げ>
今週(8/26─)の米ドル建て金先物は堅調な動きとなりました。投機勢の先物買い越しポジションが膨らんでおり、2,500ドル台の過去最高値圏で推移する中、利益確定売りも出ているとみられますが、下値を切り上げる展開です。22─24日のジャクソンホール会議後の米長期金利はほぼ横ばいで推移しており、金にとって強い追い風にはなっていないものの、インドなど新興国の需要が引き続き旺盛だとみられています。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,450─2,600ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,100─12,300円
*インドの金購入増、政策効果も
中国は景気減速に加え、人民銀行が外貨準備の金購入を7月まで3カ月連続で見送るなど金需要の減退が懸念されていますが、一方で存在感を増しているがインドです。
インド政府は今年7月、金の輸入関税を15%から6%に引き下げたほか、金の長期キャピタルゲイン課税の保有期間を36カ月から24カ月に短縮し税率も20%から12.5%に引き下げました。輸入関税の引き下げでインド国内の金価格が下落、買いやすくなりました。
金ETF(上場投資信託)への資金流入も続いています。長期投資の適格保有期間の短縮と関連する税率の引き下げが好感され、インド投資信託協会(AMFI)のデータによると、7月の純流入額は134億ルピー(約230億円)で、 2020年2月以来の規模となりました。
中央銀行であるインド準備銀行も金購入を続けています。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、6月に2年ぶりの高水準で購入した後は慎重なペースに戻りましたが、それでも今年はトルコ中銀に次いで2番目の購入量となっています。
人口が14億人を突破し中国を抜いたインド。金の宝飾品には冠婚葬祭用など伝統的に高い需要があることで知られています。中国需要の減退が懸念される中でも、金が最高値圏で推移しているのはインドの存在が大きいかもしれません。
*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/12/21~2024/8/29)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<原油は上昇一服、中東情勢は依然緊迫>
今週のWTI原油先物価格は上昇一服となりました。地政学リスクの高まりを受けて前週末以降に切り返しましたが、70ドル台後半で頭打ちとなり80ドル大台には届きませんでした。中東情勢は依然として予断を許しませんが、米原油在庫の減少幅が市場予想よりも小さかったこともあり、足元は売りに押されています。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル72─78ドル
*リビアの油田生産停止
北アフリカのリビアで油田の生産停止が広がっており、原油需給への影響が懸念されています。同国は現在、中央銀行総裁人事や石油売却収入をめぐり国家分裂状態になっており、東部トブルクを拠点とする勢力が東部地域の油田を閉鎖しました。
リビアにある油田のほとんどが東部地域にあり、すでに複数の油田が生産を停止したと伝えられています。リビアは主要生産国の一角であり、生産の縮小が長引けば供給減少により原油価格の上昇要因になります。
石油輸出国機構(OPEC)によると、リビアの7月の石油生産は日量約118万バレル。一部報道によると、今月26日に生産が停止されたことで、産油量はほぼ半減したとされています。世界全体の石油生産量は日量1億バレル近くありますが、需給に与える影響は小さくありません。
中東情勢はこのほか、イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの対立や、パレスチナ自治区ガザを巡るイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦交渉の停滞など、複数の地政学リスクがあり、原油価格の下値を支えています。
一方で、原油需要減退への懸念がじわりと高まっています。米エネルギー情報局(EIA)が28日に発表した23日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫は前週比84.6万バレルの減少。2週連続の減少ですが市場予想よりも小幅でした。ガソリン在庫は3週連続で減少しましたが、留出油は2週ぶりに小幅増加。需要減への懸念が原油価格の重石になっています。
*WTI原油先物の日足(期間:2023/12/18~2024/8/29)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
◆本レポートは、執筆者が信頼に値すると判断した情報に基づいて作成されたものです。あくまで情報提供が目的であり、投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。
◆本レポート内の予想やその他の見解は、出所を明記しているものを除き、執筆者個人のものであり、当社のものではありません。したがって、その内容等について当社は責任を負いかねます。また、当社はこれに関するお問い合わせにはお応えいたしかねますのでご了承ください。
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今週(8/26─)の米ドル建て金先物は堅調な動きとなりました。投機勢の先物買い越しポジションが膨らんでおり、2,500ドル台の過去最高値圏で推移する中、利益確定売りも出ているとみられますが、下値を切り上げる展開です。22─24日のジャクソンホール会議後の米長期金利はほぼ横ばいで推移しており、金にとって強い追い風にはなっていないものの、インドなど新興国の需要が引き続き旺盛だとみられています。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,450─2,600ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,100─12,300円
*インドの金購入増、政策効果も
中国は景気減速に加え、人民銀行が外貨準備の金購入を7月まで3カ月連続で見送るなど金需要の減退が懸念されていますが、一方で存在感を増しているがインドです。
インド政府は今年7月、金の輸入関税を15%から6%に引き下げたほか、金の長期キャピタルゲイン課税の保有期間を36カ月から24カ月に短縮し税率も20%から12.5%に引き下げました。輸入関税の引き下げでインド国内の金価格が下落、買いやすくなりました。
金ETF(上場投資信託)への資金流入も続いています。長期投資の適格保有期間の短縮と関連する税率の引き下げが好感され、インド投資信託協会(AMFI)のデータによると、7月の純流入額は134億ルピー(約230億円)で、 2020年2月以来の規模となりました。
中央銀行であるインド準備銀行も金購入を続けています。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、6月に2年ぶりの高水準で購入した後は慎重なペースに戻りましたが、それでも今年はトルコ中銀に次いで2番目の購入量となっています。
人口が14億人を突破し中国を抜いたインド。金の宝飾品には冠婚葬祭用など伝統的に高い需要があることで知られています。中国需要の減退が懸念される中でも、金が最高値圏で推移しているのはインドの存在が大きいかもしれません。
*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/12/21~2024/8/29)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<原油は上昇一服、中東情勢は依然緊迫>
今週のWTI原油先物価格は上昇一服となりました。地政学リスクの高まりを受けて前週末以降に切り返しましたが、70ドル台後半で頭打ちとなり80ドル大台には届きませんでした。中東情勢は依然として予断を許しませんが、米原油在庫の減少幅が市場予想よりも小さかったこともあり、足元は売りに押されています。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル72─78ドル
*リビアの油田生産停止
北アフリカのリビアで油田の生産停止が広がっており、原油需給への影響が懸念されています。同国は現在、中央銀行総裁人事や石油売却収入をめぐり国家分裂状態になっており、東部トブルクを拠点とする勢力が東部地域の油田を閉鎖しました。
リビアにある油田のほとんどが東部地域にあり、すでに複数の油田が生産を停止したと伝えられています。リビアは主要生産国の一角であり、生産の縮小が長引けば供給減少により原油価格の上昇要因になります。
石油輸出国機構(OPEC)によると、リビアの7月の石油生産は日量約118万バレル。一部報道によると、今月26日に生産が停止されたことで、産油量はほぼ半減したとされています。世界全体の石油生産量は日量1億バレル近くありますが、需給に与える影響は小さくありません。
中東情勢はこのほか、イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの対立や、パレスチナ自治区ガザを巡るイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦交渉の停滞など、複数の地政学リスクがあり、原油価格の下値を支えています。
一方で、原油需要減退への懸念がじわりと高まっています。米エネルギー情報局(EIA)が28日に発表した23日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫は前週比84.6万バレルの減少。2週連続の減少ですが市場予想よりも小幅でした。ガソリン在庫は3週連続で減少しましたが、留出油は2週ぶりに小幅増加。需要減への懸念が原油価格の重石になっています。
*WTI原油先物の日足(期間:2023/12/18~2024/8/29)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
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