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円先物ポジションは「ロング」に、これからどうなる?

2024/08/20 07:52

【ポイント】
・CFTCの円のネットの先物ポジションは3年半ぶりの「ロング」に
・大統領選挙の年、FRBの利下げ開始、株安など、過去の「ロング」と共通点も
・ただし、日米金利差の存在は「ショート」のインセンティブか

米CFTC(商品先物取引委員会)のデータによれば、ヘッジファンドなどの「非商業部門」における円のネットの先物ポジションは、最新の8月13日時点で2万3,104枚の「ロング(買い越し)」でした。同ポジションが「ロング」になったのは、21年3月9日以来で約3年半ぶりでした。同ポジションは、7月2日時点に18万4,223枚の「ショート(売り越し)」と、リーマン・ショック前の07年6月以来の大幅な売り越しでしたが、そこから6週間で買い越しに転じた形です。

円のポジションについては、以下もご覧ください。
■13日付け「円キャリートレードの終焉??」
■8日付け「円ショートは今年初めの水準近くまで縮小」

さて、ここから「ロング」が一段と積み上がるでしょうか。

15年以降で円のネットの先物ポジションが「ロング」となったのは以下の局面であり、考えられる背景を追記しました(18年にも短期間に小幅な「ロング」となりましたが、ここでは割愛します)。

16年1月5日~11月22日:米大統領選挙。トランプ氏の当選後にトランプ・ラリー(米ドル高)が起きて「ショート」に
19年8月6日~10月8日:FRBの利下げ開始(7/31)と追加利下げ(9/18、10/30)
20年3月10日~21年3月9日:コロナ・ショックとその後1年間(20年は大統領選挙の年でもある)

米ドル円と先物ポジション


今年は奇しくも(?)大統領選挙の年です。また、FRBの利下げ開始が接近しているのも間違いないでしょう。そして、コロナ・ショックほどではないものの、8月5日の「令和のブラックマンデー」では大幅な株安を経験しました。

以上のように、円のネットの先物ポジションで「ロング」が積み上がる条件はある程度そろっているようにみえます。米景気に対する懸念が強まって株価が再び下落基調に転じ、FRBがアグレッシブな利下げを開始するといった状況となれば、「ロング」が継続し拡大するかもしれません。

もっとも、円のネットの先物ポジションが「ロング」になった13日は、「令和のブラックマンデー」の余韻が強く残っていたはずです。今年7月までがそうだったように、いったん市場が落ち着けば、日米金利差(日<米)の存在が「ショート」のポジションを増やすインセンティブになる可能性もあるでしょう。円のネットの先物ポジションがこれからどうなるか、今しばらく様子を見る必要はありそうです。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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