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9月の米利下げは0.25%か、0.50%か

2024/08/13 11:18

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【今週のポイント】
・経済指標の発表を受けた米英の金融政策見通しの変化
・RBNZは利下げするかどうか、RBNZの政策金利見通しはどう変化するか

先週(8/5- )、株価が暴落して急激なリスクオフが起きた5日に米ドル/円は141円台まで下落しました。その後はリスクオフが徐々に弱まり、米ドル/円は146円台半ばまで戻して週を終えました。6日以降は資源新興国通貨が比較的堅調で、円の他に英ポンドやユーロも軟調でした。

今週(8/12- )、為替市場は先週の後半に続いて落ち着きをみせることができるか。夏期休暇期間中ということもあって、材料次第では再びリスクオフが強まらないとも限りません。

今週の主要経済指標・イベント

今週は大きなイベントは予定されていないので、主要な経済指標を丹念にチェックして、景気や金融政策の見通しに変化が生じるかに要注目でしょう。

米経済指標では、PPI(生産者物価指数)、CPI(消費者物価指数)、小売売上高、鉱工業生産(いずれも7月分)、NY連銀とフィラデルフィア連銀の製造業景況指数(8月分)、新規失業保険申請件数(前週分)など。米アトランタ連銀のGDPNow(短期予測モデル)によれば、7-9月期GDPは前期比年率2.9%と堅調を予想。もっとも、同期間の経済データは出始めたばかり。一連の経済指標を受けて予測がどう変化するか。

9月FOMCでの利下げが確実視されるものの、下げ幅については0.25%か、0.50%か見方が分かれるところ。一連の経済指標が弱ければ、後者の可能性が高まるかもしれません。ただ、それは改めて景況感の悪化を伴うため、株価にとってはマイナスとなりそう。

日本では4-6月期GDPに注目。1-3月期が前期比年率-2.9%と大幅なマイナスだっただけに、どこまで盛り返すか。逆に同3.4%と高めだったデフレータは落ち着きをみせるか。

英国では、6月の賃金や失業率などの雇用関連、7月CPI、4-6月期GDPなど。いずれもやや強めの数字が予想されているようです12日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、(8月に続く)年内2回の追加利下げが8割近い確率で予想されています。<西田>

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今週は、14日にRBNZ(NZ中銀)の政策会合が開かれます。会合における最大の注目点は、利下げが行われるかどうか。会合の結果にNZドル/円やNZドル/米ドル、豪ドル/NZドルが反応しそうです(RBNZ会合については後述)。

米ドル/カナダドルや豪ドル/米ドルについては、米国の経済指標の結果を受けて市場の米FRBの金融政策見通しがどのように変化するかがカギを握りそうです。FRBの利下げ観測が後退する場合、米ドル/カナダドルは堅調に推移し、一方で豪ドル/米ドルは軟調に推移すると考えられます。

中東情勢には注意が必要かもしれません。中東情勢が一段と緊迫化する場合、リスクオフ(リスク回避)の動きが強まるとともに、豪ドル/円やカナダドル/円などのクロス円には下落圧力が加わる可能性があります。<八代>

今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:141.500円~151.500円>
12日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場は9月18日のFOMCでの利下げを確実視しています。そして、利下げ幅が0.25%でなく0.50%となる確率が4割近く織り込まれています。

今週のCPIや小売売上高など米経済指標の発表を受けて、FRBの金融政策見通しはどう変化するでしょうか。7月雇用統計発表後の米景気に対する市場の懸念はやや行き過ぎの感があります。経済指標を受けて米景気に対する懸念が後退すれば、0.50%利下げの確率が低下して米ドル/円は比較的堅調に推移しそうです。逆に、景況感が悪化するようであれば、0.50%利下げの確率が高まって、米ドル/円は軟調になりそうです。仮に、景況感の悪化から株価が大きく下落するなら、リスクオフが強まって米ドル/円に更なる下押し圧力が加わるかもしれません。

他方、日本の4‐6月期GDPは大幅マイナスだった前期から反発が予想されます。ただ、7日に日銀の内田副総裁が金融市場の混乱を受けて「当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続ける必要がある」と述べたので、追加利上げ観測は高まりにくいでしょう。12日時点のOISに基づけば、市場が織り込む年内の追加利上げ確率は3割弱です。<西田>

今週の注目通貨ペア②:<英ポンド/米ドル 予想レンジ:1.25000ドル~1.28500ドル>
英国の雇用関連指標やGDPを受けて、BOE(英中銀)の金融政策見通しが変化するか。BOEは8月1日に0.25%の利下げを実施しました。12日時点のOISに基づけば、次回9月19日のMPC(金融政策委員会)での追加利下げを市場は4割近く織り込んでいます。

英ポンド/米ドルは7月中旬に約1年ぶりの1.30000ドルをつけた後、BOEの利下げや株価下落を受けて8月上旬にかけて軟化しましたが、足もとで小幅に反発しています。BOEの利下げ見通しが後退するならば、そして/あるいは米FRBの利下げ観測が高まるようならば、英ポンド/米ドルには上昇余地がありそうです。<西田>

今週の注目通貨ペア③:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.07000NZドル~1.11000NZドル>
RBNZ(NZ中銀)は14日に政策会合を開きます。その結果が今後の豪ドル/NZドルの動向に影響を与えそうです。

RBNZ会合については、市場の見方は“政策金利は据え置かれる”と“0.25%の利下げが行われる”とで分かれています。そのため、政策金利がいずれの結果になっても、NZドルが反応しそう。据え置きの場合、初期反応はNZドルが堅調に推移して豪ドル/NZドルは下落しそうです。

RBNZが四半期に一度公表する「政策金利見通し」にも注目です。前回5月には、政策金利は“25年後半”に現行水準を下回り(利下げ開始時期を示唆)、25年10-12月期には四半期平均5.14%、26年10-12月期には同3.70%へと低下するとの見通しが示されました。今回の会合で政策金利が据え置かれたとしても、RBNZの政策金利見通しが5月時点から大幅に下方修正されれば、豪ドル/NZドルの下落は長続きしない可能性もあります。<八代>

今週の注目通貨ペア④:<米ドル/カナダドル 予想レンジ:1.36000カナダドル~1.39000カナダドル>
今週は、カナダの6月卸売売上高(15日)や7月住宅着工件数(16日)などが発表されるものの、材料としては力不足かもしれません。米ドル/カナダドルは、CPI(消費者物価指数)など米国の経済指標といった米ドル側の材料に影響を受けやすいと考えられます。米経済指標の結果を受けて9月の米FOMCでの0.50%の利下げ観測が後退する場合、米ドルが全般的に堅調に推移して、米ドル/カナダドルには上昇圧力が加わりそうです。

原油価格の動向も材料になるかもしれません。原油価格の代表的な指標である米WTI原油先物は5日に一時71ドル台へと下落したものの、その後持ち直して12日には79ドル台をつける場面がありました。原油価格がさらに上昇を続ける場合、米ドル/カナダドルの上値を抑える要因になる可能性があります。<八代>

西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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