米ドル建てゴールドは最高値更新、原油も反発 「海に眠る金」
2024/08/02 12:02
<金は急反発、FOMC後の米金利低下で>
今週(7/29─)の米ドル建て金先物は急反発しました。調整局面を約1週間で終え反転上昇、1日には一時2,506ドルを付け過去最高値を更新しています。米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見でパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が9月利下げを示唆したことや弱めの米経済指標で米金利が低下。利子が付かない金に追い風となっています。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,400─2,500ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,200─12,500円
*日米中銀会合後、金はドル建てと円建てで明暗
今週30─31日に開かれた日米中銀会合を経て、金は米ドル建てと円建てで明暗が分かれました。
9月の米利下げが示唆されたのはFOMCの声明文ではなくパウエルFRB議長の会見の中であり、まだ「確定」というわけではないようですが、米10年物国債金利は約6カ月ぶり低水準となる3.9%台まで低下。中東情勢の緊迫化も加わり、金融市場では国債や金など「安全資産」に資金が逃避しています。
これにより米ドル建て金先物価格は過去最高値を更新しましたが、円建て価格の方は上値の重い展開になっています。理由はもちろん円高です。
日銀金融政策決定会合では、追加利上げと国債買い入れ減額計画が決定されたほか、植田和男総裁会見の内容がタカ派的と受け止められ、市場ではさらなる追加利下げもありうるとの見方が強まりました。米ドル円は一時148円台半ばまで下落し、約4カ月半ぶりの円高水準になっています。
米ドル建て価格が大きく上昇していることから、円建て価格が本格的な下落トレンドに入ることはないでしょう。日米金利差も日米両国の経済力を考えれば大きく縮む可能性は低いと言えます。しかし、為替(どの市場もそうですが)はときおりファンダメンタルズから離れた動きをすることがありますので、注意が必要かもしれません。
*金先物の日足(期間:2023/12/13~2024/8/1)、青:米ドル建て(右スケール)、黄:円建て(左スケール)

(出所:TradingView)
<原油は反発、中東情勢が再び緊迫化>
今週のWTI原油先物価格は反発しました。中国経済の鈍化懸念などを背景に7月30日には一時74ドル台と約1か月半ぶりの安値水準まで下落しましたが、中東情勢が再び緊迫化したことで反転上昇。足元は70ドル台後半まで値を戻しています。ただ、7月米ISM製造業景気指数などが弱かったことで米景気減速への不安も台頭しており、上値も重くなってきました。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル72─81ドル
*中東情勢、応酬のエスカレートに不安
イスラエル軍は7月30日、レバノンの首都ベイルートを空爆し、同国に拠点を置く親イラン武装組織ヒズボラの司令官を殺害したと発表しました。イスラエルが占領するゴラン高原でのロケット弾攻撃に対する報復としていますが、ヒズボラがさらに報復に出るおそれがあります。
またイスラム組織ハマスは7月31日、ハニヤ最高指導者がイランの首都テヘランでイスラエルの攻撃によって殺害されたと発表しました。ハマスを支援するイランの最高指導者ハメネイ師は報復を宣言。イランを巻き込んで戦闘が拡大すれば、危機レベルが一段上がることになるため、マーケットにも緊張感が漂っています。
米エネルギー情報局(EIA)が7月31日に発表した26日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫は前週比343.6万バレルの減少となりました。5週連続の減少で累計では2,764万バレルの大幅減です。留出油が2週ぶりに増加しましたが、ガソリン在庫は2週連続で減少しており、米需給のタイト化も意識されています。
一方、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟国で構成する「OPECプラス」は1日に開いたオンラインによる合同閣僚監視委員会(JMMC)で現行の生産方針を据え置きました。据え置きは市場予想通りで、原油相場への影響はみられていません。
*WTI原油先物の日足(期間:2023/11/24~2024/8/1)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<今週のトピック:「海に眠る金」>
これだけ暑いと外出する気分にもなれませんが、夏と言えばやはり海。海を眺めながら飲むビールは格別です。ところで海水にも金が含まれていることをご存じでしょうか。
1トンの海水中に含まれる金は1mg(1ミリグラム=1,000分の1g)程度とされており、ほんのわずかしか含まれていません。しかし、海水の量が膨大なので金の量も莫大になります。
海水の量は推計で約14億立方キロメートル、重さは14兆トンの10万倍。上記の金含有率を適用すれば金の総量は14億トン(50億トンとの説も)に達します。
これまでの歴史で人類が採掘した金は約17万トン。現在、地球上に残る金の埋蔵量は約7万トンと言われていますから、海水には採掘量の約8000倍、埋蔵量の約2万倍の金が眠っていることになります。
なぜそのような「お宝の山(海)」を目の前にして放置しているのかと言えば、金の抽出には非常にコストがかかるからに他なりません。お金をかけて苦労して金を抽出しても、売却価格よりも低いため採算が合わないのです。
ただ、諦めないのが人類でもあります。海水中の金の含有量はどの場所でも同じというわけではなく濃淡があり、金含有率が高い場所であれば効率よく抽出できます。
例えば、海中で熱水を放出している熱水噴出孔には高濃度の金が含まれている場所があることが知られており、そのような場所で「藻」に金を吸着させて効率よく抽出する実験も行われているようです(参照1)。
金価格は史上最高値を更新し続けています。金価格が上昇すればするほど、こうした非伝統的な抽出方法も「損益分岐点」に大きく近づきますので、期待(需給的には悪化要因ですが)が持てるかもしれません。
参照1:https://www3.nhk.or.jp/news/special/sci_cul/2023/10/special/deep-sea-gold/
◆本レポートは、執筆者が信頼に値すると判断した情報に基づいて作成されたものです。あくまで情報提供が目的であり、投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。
◆本レポート内の予想やその他の見解は、出所を明記しているものを除き、執筆者個人のものであり、当社のものではありません。したがって、その内容等について当社は責任を負いかねます。また、当社はこれに関するお問い合わせにはお応えいたしかねますのでご了承ください。
◆相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
◆本レポートの内容は予告なく変更される場合があります。
◆本サイトに掲載された内容の著作権は、当社または執筆者(またはその提供元)に帰属します。したがって、無断で使用、複製、改変することを禁じます。
今週(7/29─)の米ドル建て金先物は急反発しました。調整局面を約1週間で終え反転上昇、1日には一時2,506ドルを付け過去最高値を更新しています。米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見でパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が9月利下げを示唆したことや弱めの米経済指標で米金利が低下。利子が付かない金に追い風となっています。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,400─2,500ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,200─12,500円
*日米中銀会合後、金はドル建てと円建てで明暗
今週30─31日に開かれた日米中銀会合を経て、金は米ドル建てと円建てで明暗が分かれました。
9月の米利下げが示唆されたのはFOMCの声明文ではなくパウエルFRB議長の会見の中であり、まだ「確定」というわけではないようですが、米10年物国債金利は約6カ月ぶり低水準となる3.9%台まで低下。中東情勢の緊迫化も加わり、金融市場では国債や金など「安全資産」に資金が逃避しています。
これにより米ドル建て金先物価格は過去最高値を更新しましたが、円建て価格の方は上値の重い展開になっています。理由はもちろん円高です。
日銀金融政策決定会合では、追加利上げと国債買い入れ減額計画が決定されたほか、植田和男総裁会見の内容がタカ派的と受け止められ、市場ではさらなる追加利下げもありうるとの見方が強まりました。米ドル円は一時148円台半ばまで下落し、約4カ月半ぶりの円高水準になっています。
米ドル建て価格が大きく上昇していることから、円建て価格が本格的な下落トレンドに入ることはないでしょう。日米金利差も日米両国の経済力を考えれば大きく縮む可能性は低いと言えます。しかし、為替(どの市場もそうですが)はときおりファンダメンタルズから離れた動きをすることがありますので、注意が必要かもしれません。
*金先物の日足(期間:2023/12/13~2024/8/1)、青:米ドル建て(右スケール)、黄:円建て(左スケール)

(出所:TradingView)
<原油は反発、中東情勢が再び緊迫化>
今週のWTI原油先物価格は反発しました。中国経済の鈍化懸念などを背景に7月30日には一時74ドル台と約1か月半ぶりの安値水準まで下落しましたが、中東情勢が再び緊迫化したことで反転上昇。足元は70ドル台後半まで値を戻しています。ただ、7月米ISM製造業景気指数などが弱かったことで米景気減速への不安も台頭しており、上値も重くなってきました。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル72─81ドル
*中東情勢、応酬のエスカレートに不安
イスラエル軍は7月30日、レバノンの首都ベイルートを空爆し、同国に拠点を置く親イラン武装組織ヒズボラの司令官を殺害したと発表しました。イスラエルが占領するゴラン高原でのロケット弾攻撃に対する報復としていますが、ヒズボラがさらに報復に出るおそれがあります。
またイスラム組織ハマスは7月31日、ハニヤ最高指導者がイランの首都テヘランでイスラエルの攻撃によって殺害されたと発表しました。ハマスを支援するイランの最高指導者ハメネイ師は報復を宣言。イランを巻き込んで戦闘が拡大すれば、危機レベルが一段上がることになるため、マーケットにも緊張感が漂っています。
米エネルギー情報局(EIA)が7月31日に発表した26日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫は前週比343.6万バレルの減少となりました。5週連続の減少で累計では2,764万バレルの大幅減です。留出油が2週ぶりに増加しましたが、ガソリン在庫は2週連続で減少しており、米需給のタイト化も意識されています。
一方、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟国で構成する「OPECプラス」は1日に開いたオンラインによる合同閣僚監視委員会(JMMC)で現行の生産方針を据え置きました。据え置きは市場予想通りで、原油相場への影響はみられていません。
*WTI原油先物の日足(期間:2023/11/24~2024/8/1)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線

(出所:TradingView)
<今週のトピック:「海に眠る金」>
これだけ暑いと外出する気分にもなれませんが、夏と言えばやはり海。海を眺めながら飲むビールは格別です。ところで海水にも金が含まれていることをご存じでしょうか。
1トンの海水中に含まれる金は1mg(1ミリグラム=1,000分の1g)程度とされており、ほんのわずかしか含まれていません。しかし、海水の量が膨大なので金の量も莫大になります。
海水の量は推計で約14億立方キロメートル、重さは14兆トンの10万倍。上記の金含有率を適用すれば金の総量は14億トン(50億トンとの説も)に達します。
これまでの歴史で人類が採掘した金は約17万トン。現在、地球上に残る金の埋蔵量は約7万トンと言われていますから、海水には採掘量の約8000倍、埋蔵量の約2万倍の金が眠っていることになります。
なぜそのような「お宝の山(海)」を目の前にして放置しているのかと言えば、金の抽出には非常にコストがかかるからに他なりません。お金をかけて苦労して金を抽出しても、売却価格よりも低いため採算が合わないのです。
ただ、諦めないのが人類でもあります。海水中の金の含有量はどの場所でも同じというわけではなく濃淡があり、金含有率が高い場所であれば効率よく抽出できます。
例えば、海中で熱水を放出している熱水噴出孔には高濃度の金が含まれている場所があることが知られており、そのような場所で「藻」に金を吸着させて効率よく抽出する実験も行われているようです(参照1)。
金価格は史上最高値を更新し続けています。金価格が上昇すればするほど、こうした非伝統的な抽出方法も「損益分岐点」に大きく近づきますので、期待(需給的には悪化要因ですが)が持てるかもしれません。
参照1:https://www3.nhk.or.jp/news/special/sci_cul/2023/10/special/deep-sea-gold/
◆本レポートは、執筆者が信頼に値すると判断した情報に基づいて作成されたものです。あくまで情報提供が目的であり、投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。
◆本レポート内の予想やその他の見解は、出所を明記しているものを除き、執筆者個人のものであり、当社のものではありません。したがって、その内容等について当社は責任を負いかねます。また、当社はこれに関するお問い合わせにはお応えいたしかねますのでご了承ください。
◆相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
◆本レポートの内容は予告なく変更される場合があります。
◆本サイトに掲載された内容の著作権は、当社または執筆者(またはその提供元)に帰属します。したがって、無断で使用、複製、改変することを禁じます。
- 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
- 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
- 当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
- 相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。