ゴールドと原油は弱含みの展開、両市場に米大統領選はどう影響するか
2024/07/26 13:21
<金は25日線割れ、最高値更新後に反落>
今週(7/22─)の米ドル建て金先物は弱含みの展開となりました。17日に2,488ドルを付け過去最高値を更新後、調整局面に入り25日移動平均線を下回る2,300ドル半ばに水準を下げて推移しています。米大統領選挙の不透明感が強まったことなどでリスクオンの流れが止まり、高値更新後の利益確定売りが出やすくなっているとみられています。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,300─2,450ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,200─12,300円
*「トランプトレード」が後退
米大統領選挙を巡る金融市場の動きをみると、6月27日のテレビ討論会以降、共和党候補のトランプ氏勝利を織り込むリスクオンの動き、いわゆる「トランプトレード」が強まっていました。しかし、今月21日にバイデン大統領が選挙戦からの撤退を表明。不透明感が一気に高まりました。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、過去の米大統領選が金市場に与える影響はまちまちだそうです。金価格は共和党大統領が選出される 6 カ月前に若干上昇し、選挙後は横ばい状態が続く傾向がある一方、民主党大統領が選出される前はパフォーマンスが低迷し、選挙後 6 カ月間は長期平均をわずかに下回る傾向があると指摘しています。
ただ、データが少ないため統計的に有意ではないとしているほか、所属の政党や指導者の交代に直接反応しているわけではなく、政権の経済、財政、金融政策に影響を受けやすいと分析しています。
トランプ氏は、移民の流入制限や対中関税引き上げ、減税などインフレにつながりやすい政策を掲げています。米大統領選後に利下げを米連邦準備理事会(FRB)に迫る考えも示していますが、物価が高止まりすれば利下げは行いにくくなるでしょう。一方、バイデン氏が後継候補として指名したハリス副大統領は、基本的にバイデン政権の政策を継承するとみられています。
金市場にとって、どちらの勝利が価格上昇要因となるかは微妙なところです。景気が拡大すれば金需要は高まりますが、リスクヘッジとしての需要は減退し、利上げ観測が強まれば利息が付かない金にはネガティブです。政策に変化が生じる分、トランプ氏勝利の方がボラティリティは高まりやすいとは言えるでしょう。
*米ドル建て金先物の日足(期間:2015/8/20~2024/7/25)

(出所:TradingView)
<原油は軟調、中東情勢の緊迫緩和観測などで>
今週のWTI原油先物価格は軟調な展開となりました。25日には約1カ月半ぶりの安値水準となる76ドル付近まで下落、その後も反発力は弱く足元も70ドル台後半で推移しています。米原油在庫の減少が続いたほか、4─6月期米国内総生産(GDP)が堅調で需要増期待も高まりましたが、中東情勢の緊迫緩和観測などが重石となりました。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル75─81ドル
*トランプ氏とハリス氏、エネルギー政策で違い
今回の米大統領選ではエネルギー政策も大きな焦点です。トランプ氏は大統領在任時代と同様に化石燃料(業界)に肩入れする姿勢を示しており、石油生産を拡大する一方で、石油需要の拡大を図り、エネルギー価格の上昇を抑制するとみられています。
一方、ハリス氏は、バイデン政権の方針を踏襲しながらも、より積極的に代替エネルギー関連を重視する政策を進めるとみられています。政治活動期間を通じて、クリーンエネルギーと環境保護を最優先課題として取り組む姿勢を示しており、トランプ氏との違いが際立つ争点の1つとなっています。
原油市場への影響はどうなるでしょうか。マクロ環境は異なるものの、トランプ氏は基本的に前回の大統領時代と同じ方針ですし、ハリス氏はエネルギー政策に関してバイデン政権時の政策を強化した環境配慮の政策を採用するとみられることから、過去のデータはそれなりに参考になるはずです。
トランプ氏の在任期間(2017年1月20日─21年1月20日)をみると、WTI原油先物価格は53.20ドルから52.94ドルとほぼ横ばいです。大統領選で勝利した16年11月8日の選挙当日からみても18.1%の上昇にとどまっています。
一方、バイデン氏の在任期間(21年1月20日─)をみると、WTI原油先物価格は今年7月19日までに78.58ドルへ48.4%上昇しています。22年3月8日には一時129.42ドルの高値を付けました。
両者の在任期間には、新型コロナが大きな影響をもたらしているほか、産油国の動向や地政学リスクなど様々な要因が原油相場には影響するため、米政権の政策だけでは判断できませんが、示唆に富む結果となっています。
*WTI原油先物の日足(期間:2015/8/31~2024/7/25)

(出所:TradingView)
◆本レポートは、執筆者が信頼に値すると判断した情報に基づいて作成されたものです。あくまで情報提供が目的であり、投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。
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今週(7/22─)の米ドル建て金先物は弱含みの展開となりました。17日に2,488ドルを付け過去最高値を更新後、調整局面に入り25日移動平均線を下回る2,300ドル半ばに水準を下げて推移しています。米大統領選挙の不透明感が強まったことなどでリスクオンの流れが止まり、高値更新後の利益確定売りが出やすくなっているとみられています。
米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,300─2,450ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,200─12,300円
*「トランプトレード」が後退
米大統領選挙を巡る金融市場の動きをみると、6月27日のテレビ討論会以降、共和党候補のトランプ氏勝利を織り込むリスクオンの動き、いわゆる「トランプトレード」が強まっていました。しかし、今月21日にバイデン大統領が選挙戦からの撤退を表明。不透明感が一気に高まりました。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、過去の米大統領選が金市場に与える影響はまちまちだそうです。金価格は共和党大統領が選出される 6 カ月前に若干上昇し、選挙後は横ばい状態が続く傾向がある一方、民主党大統領が選出される前はパフォーマンスが低迷し、選挙後 6 カ月間は長期平均をわずかに下回る傾向があると指摘しています。
ただ、データが少ないため統計的に有意ではないとしているほか、所属の政党や指導者の交代に直接反応しているわけではなく、政権の経済、財政、金融政策に影響を受けやすいと分析しています。
トランプ氏は、移民の流入制限や対中関税引き上げ、減税などインフレにつながりやすい政策を掲げています。米大統領選後に利下げを米連邦準備理事会(FRB)に迫る考えも示していますが、物価が高止まりすれば利下げは行いにくくなるでしょう。一方、バイデン氏が後継候補として指名したハリス副大統領は、基本的にバイデン政権の政策を継承するとみられています。
金市場にとって、どちらの勝利が価格上昇要因となるかは微妙なところです。景気が拡大すれば金需要は高まりますが、リスクヘッジとしての需要は減退し、利上げ観測が強まれば利息が付かない金にはネガティブです。政策に変化が生じる分、トランプ氏勝利の方がボラティリティは高まりやすいとは言えるでしょう。
*米ドル建て金先物の日足(期間:2015/8/20~2024/7/25)

(出所:TradingView)
<原油は軟調、中東情勢の緊迫緩和観測などで>
今週のWTI原油先物価格は軟調な展開となりました。25日には約1カ月半ぶりの安値水準となる76ドル付近まで下落、その後も反発力は弱く足元も70ドル台後半で推移しています。米原油在庫の減少が続いたほか、4─6月期米国内総生産(GDP)が堅調で需要増期待も高まりましたが、中東情勢の緊迫緩和観測などが重石となりました。
WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル75─81ドル
*トランプ氏とハリス氏、エネルギー政策で違い
今回の米大統領選ではエネルギー政策も大きな焦点です。トランプ氏は大統領在任時代と同様に化石燃料(業界)に肩入れする姿勢を示しており、石油生産を拡大する一方で、石油需要の拡大を図り、エネルギー価格の上昇を抑制するとみられています。
一方、ハリス氏は、バイデン政権の方針を踏襲しながらも、より積極的に代替エネルギー関連を重視する政策を進めるとみられています。政治活動期間を通じて、クリーンエネルギーと環境保護を最優先課題として取り組む姿勢を示しており、トランプ氏との違いが際立つ争点の1つとなっています。
原油市場への影響はどうなるでしょうか。マクロ環境は異なるものの、トランプ氏は基本的に前回の大統領時代と同じ方針ですし、ハリス氏はエネルギー政策に関してバイデン政権時の政策を強化した環境配慮の政策を採用するとみられることから、過去のデータはそれなりに参考になるはずです。
トランプ氏の在任期間(2017年1月20日─21年1月20日)をみると、WTI原油先物価格は53.20ドルから52.94ドルとほぼ横ばいです。大統領選で勝利した16年11月8日の選挙当日からみても18.1%の上昇にとどまっています。
一方、バイデン氏の在任期間(21年1月20日─)をみると、WTI原油先物価格は今年7月19日までに78.58ドルへ48.4%上昇しています。22年3月8日には一時129.42ドルの高値を付けました。
両者の在任期間には、新型コロナが大きな影響をもたらしているほか、産油国の動向や地政学リスクなど様々な要因が原油相場には影響するため、米政権の政策だけでは判断できませんが、示唆に富む結果となっています。
*WTI原油先物の日足(期間:2015/8/31~2024/7/25)

(出所:TradingView)
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