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バイデン氏撤退!

2024/07/22 13:00

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【今週のポイント】
・バイデン氏の選挙戦撤退の影響をどう見るか
・来週の日銀、FRB、BOEの会合に向けた金融政策見通しの変化
・BOCは利下げするか、さらなる利下げが示唆されるか

バイデン氏が大統領選挙戦から撤退し、ハリス副大統領を後継に指名。ハリス氏は出馬を表明しました。これを受けて、「トランプ政権」誕生の確率が高まると市場がみるのか、それとも逆に「民主党政権」継続の可能性が高いとみるのか。ハリス氏は多くの有力者から支持を受け、またバイデン氏の選挙資金にもアクセスできるようなので、党指名までの最短距離にいるのは間違いないでしょう。民主党内ではハリス氏の下で早急に一枚岩になってトランプ氏と対峙するべきとの声も強いようです。ただ、8月19-22日の民主党全国大会(シカゴ)で正式に大統領候補が決定するまで、まだまだ紆余曲折があるかもしれません。

日銀、FRB、BOE(英中銀)の政策会合を来週に控えており、金融政策見通しの変化が為替相場に影響しそうです。FRB(31日)は据え置き予想が支配的で、有力視される9月利下げに向けた地ならしが行われるか。日銀(31日)は利上げ、BOE(8月1日)は利下げがそれぞれ5割前後の確率で予想されており、それがどう変化するか(変化しないか)。

25日発表の米国4-6月期GDP速報値は市場予想が前期比年率1.9%と、前期の1.4%から加速が見込まれています。アトランタ連銀のGDPNow(短期予測モデル)はさらに堅調な2.7%を予測。経済成長率とともにデフレーター(インフレ率)も注目です。GDPの翌日には7月個人所得・消費が発表されます。とりわけ、PCE(個人消費支出)デフレーターは来週のFOMC前の重要なインフレ指標です。9月利下げの観測を高めることになるでしょうか。

今週の主な経済指標・イベント

25-26日には、リオデジャネイロでG20財務相・中央銀行総裁会議が開催されます。各国の金融政策・財政政策や、為替相場に関する参加者の発言が相場材料になるかもしれません。<西田>

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24日にBOC(カナダ中銀)の政策会合が開かれます。その結果にカナダドルが反応しそうです。BOC会合における注目点は、“利下げが行われるかどうか”、“9月以降にさらに利下げする可能性が示されるのか”になりそうです(詳細については後述)。

TCMB(トルコ中銀)は23日に政策会合を開きます。政策金利は前回6月の会合まで3回連続で50.00%に据え置かれており、今回も据え置かれそうです。その通りの結果になれば、TCMBの声明が前回会合時から変化するかどうかに注目です。前回会合時の声明では、「インフレリスクに引き続き細心の注意を払う」、「月次のインフレ(率)の基調的なトレンドが大幅かつ持続的に低下するまで、金融引き締めスタンスを維持する」、「インフレの大幅かつ持続的な悪化が見込まれる場合には、金融政策を(さらに)引き締める」などとされました。前回から声明の内容に大きな変化がなければ、トルコリラに大きな反応はみられないかもしれません。

メキシコの7月前半のCPI(消費者物価指数)が24日に発表されます。CPIの市場予想は総合指数が前年比5.26%、コア指数が同4.01%。コア指数の上昇率は6月前半の4.17%から鈍化するものの、総合指数の上昇率は6月前半の4.78%から高まるとみられています。CPIが市場予想を上回る結果になれば、BOM(メキシコ中銀)の利下げ観測が後退するとともに、メキシコペソにとってプラス材料になる可能性があります。

本邦当局による為替介入(米ドル売り・円買い介入)には注意が必要です。為替介入によって米ドル/円が大きく下落する場合、豪ドル/円やメキシコペソ/円などのクロス円はそれに引きずられると考えられます。<八代>

今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:155.000円~160.000円>
日米長期金利(10年物国債利回り)の差は、4月25日の3.80%から7月17日には3.12%まで縮小しました。インフレ指標の落ち着きによってFRBの利下げ観測はやや高まっており、一方で日銀は来週の金融政策決定会合で追加利上げを行うとの見方も強まってきました(※)。

※19日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、 市場が織り込む、FRBが9月から3会合連続で年3回利下げする確率は3割強。日銀が7月に利下げする確率は4割強。

トランプ氏が米メディアのインタビューで米ドル安志向を明らかにし、河野デジタル相が同じく円高が望ましいとする発言をするなど、米ドル/円の弱気材料が増えています。ただ、一方で、日米金利差の「変化」ではなく、「金利差自体」が米ドル/円の上昇をもたらすとの見方も根強くあります。

強い米経済指標などを背景に米ドル/円が再び160円台を目指す展開となった場合、本邦当局による為替介入は実施されるのか。今週のG20財務相・中央銀行総裁会議で、十分な説明を尽くしたうえで、今月末に任期を終える神田財務官が為替介入を指揮するとのシナリオも描けなくはなさそうです。

大統領選挙に関する新たな展開も為替相場の材料となるかもしれず、要注意でしょう。<西田>

今週の注目通貨ペア②:<ユーロ/英ポンド 予想レンジ:0.83500ポンド~0.85000ポンド
ECBは7月18日の理事会で政策金利の据え置きを決定。ラガルド総裁は会見で、「(市場が利下げを予想する)9月の理事会に向けてワイド・オープンだ(何も決まっていない)」と述べました。ECBのタカ派的スタンスはユーロのプラス材料かもしれません。

ただ、議会選挙後のフランスの政治不安は継続しています。第1党となった左派・新人民戦線も過半数の議席には遠く届かず、また構成政党間で調整がつかないこともあって、首相候補が決まっていません。アタル首相は16日に辞任したものの、大統領が後任を指名するまでは権限が限定された暫定内閣の首相にとどまる模様です。同じく議会選挙があった英国では保守党から労働党への政権交代はスムーズに進んでおり、政治要因は英ポンドにプラスでしょう。

6月のMPC(金融政策委員会)は据え置きを決定しましたが、9人の委員のうち2人は利下げを支持しました。ただ、その後に発表された6月CPIが市場予想を上回ったこともあって、利下げ観測はやや後退。19日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、8月1日のMPCでの利下げ確率は5割をやや下回っています。24日の7月製造業PMIなどでBOEの利下げ観測が一段と後退するようであれば、ユーロ/英ポンドは下押し圧力を受けそうです。<西田>

今週の注目通貨ペア③:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.10000NZドル~1.12000NZドル
豪ドル/NZドルは16日に一時1.11372NZドルへと上昇し、22年10月以来1年9カ月ぶりの高値をつけました。

10日のRBNZの政策会合を受けて市場ではRBNZ(NZ中銀)の利下げ観測が強まり(NZドル安材料)、そのことが引き続き豪ドル/NZドルを支援しました。

RBNZは政策会合時の声明で「金融政策は引き続き(景気)抑制的である必要がある」と改めて表明したものの、「抑制の程度は、予想されるインフレ圧力の鈍化に合わせて時間とともに緩和されるだろう」を追加。CPI(消費者物価指数)上昇率がRBNZの想定通りに鈍化すれば、利下げを行うことを示唆しました。

市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によると、市場が織り込むRBNZの次回8月14日の会合での確率は“利下げ”と“据え置き”でほぼ五分五分です。RBA(豪中銀)の政策金利については、市場では24年末まで据え置かれるとの見方が有力ですが、利上げの確率も3割程度織り込まれています。市場のRBAとRBNZの金融政策見通しからみれば、豪ドル/NZドルには上昇圧力が加わりやすいと考えられます。

今週(7/22- )は、豪州とNZのいずれも主要な経済指標の発表はなく、市場のRBAとRBNZの金融政策見通しは大きく変化しないかもしれません。<八代>

今週の注目通貨ペア④:<米ドル/カナダドル 予想レンジ:1.36000カナダドル~1.38500カナダドル>
BOC(カナダ中銀)は24日に政策会合を開きます。その結果に米ドル/カナダドルが反応しそうです。

BOCは前回6月5日の会合で0.25%の利下げを行うことを決定。マックレムBOC総裁は会合後の会見で、「インフレ率が引き続き鈍化し、インフレ率が持続的に2%の目標に向かうとの確信が一段と強まるなら、追加利下げを予想するのが妥当だ」と述べました。

カナダのCPI(消費者物価指数)や失業率の動向をみると、BOCは24日の会合で追加利下げを行いそうです。6月CPIは前年比2.7%と、5月の2.9%から上昇率が鈍化しました。また、CPIトリム平均値は前年比2.9%、CPI加重中央値は同2.6%と、トリム平均値の上昇率は5月と同じでしたが、加重中央値の上昇率は5月の2.7%(2.8%から下方修正)から鈍化しました。6月失業率は6.4%と、5月の6.2%から悪化し、2年5カ月ぶりの高い水準となりました。

BOCの声明やマックレム総裁の会見にも注目です。今回の会合で利下げが行われて、声明やマックレム総裁の会見が9月以降にさらに利下げするとの観測を強める内容になる場合、カナダドル安材料になりそうです。米経済指標などによってFRBの利下げ観測が後退すれば、米ドル/カナダドルは1.38413カナダドル(4/16高値)に向かって上昇する可能性があります。<八代>

八代和也

執筆者プロフィール

八代和也(ヤシロカズヤ)

シニアアナリスト

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