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ゴールド最高値更新、「金メダルも高騰?」原油は底堅い展開

2024/07/19 11:45

<金は上値追い、円建ては高値更新後に急落>
今週(7/15─)の米ドル建て金先物は上値追いの展開となりました。17日に一時2,488ドルを付けて史上最高値を更新。米連邦準備理事会(FRB)による9月利下げ開始への期待が買い材料となっています。米ドル建て価格は、その後も高値圏を維持していますが、円建て価格は米ドル円の急落で最高値更新後に大きく下落しました。

米ドル建て金先物価格の1週間予想レンジ:2,400─2,500ドル
円建て金先物価格の1週間予想レンジ:11,950─12,900円

*近づく米利下げ
FRBが年8回公表する地区連銀経済報告では、12の地区連銀の管轄地区の経済情勢が各連銀から報告されます。表紙の色がベージュ色のため「ベージュブック」と呼ばれ、米連邦公開市場委員会(FOMC)での景気判断のベースとなります。

5月下旬から7月8日までに調査した最新調査(17日公表)では、12地区のうち7地区が活動の増加を報告した一方、5地区が横ばいまたは減少を報告。前回の報告から横ばいまたは減少を報告した連銀が3つ増えました。

総括判断としては、経済活動は大多数の地域で小幅から控えめなペースで拡大を維持したとの認識が示されましたが、いくつかの地区では労働市場の需給の緩みも指摘されました。市場では利下げ決断の条件が揃い始めたとして、9月利下げ開始を次回7月30─31日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で示唆する可能性が高まったとみられています。

FRBのウォラー理事は17日、利下げが「近づきつつある」と発言。経済の先行きは不確実であり、利下げの開始時期は不明であるとの認識を示しながらも「最終目的地に到達したとは思わないが、政策金利の引き下げが正当化される時期に近づいていると確信している」と話しています。

米利下げ期待を背景に、金先物価格は米ドル建てでは最高値更新後も堅調な展開です。ただ、円建ては高値更新後に大きく下げました。日本の連日の為替介入観測に加え、ドル高(円安)是正の姿勢をトランプ米大統領候補が示したことにより、米ドル円が一時155円台まで下落し円高が進んだためです。米ドル円の不安定化に伴い、円建て価格もしばらく不安定な動きが続くかもしれません。

*米ドル建て金先物の日足(期間:2023/10/19~2024/7/18)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線
米ドル建て金先物の日足チャート
(出所:TradingView)


<原油は底堅い展開、80ドル付近で下げ渋り>
今週のWTI原油先物価格は底堅い展開となりました。16日に一時80ドル台前半まで下落しましたが下げ渋り、80ドルの大台を下回ることなく推移しています。景気減速による中国需要減少への懸念が強まったものの、米原油在庫の減少継続や地政学リスク、米利下げ期待が下値を支えました。

WTI原油先物価格の1週間予想レンジ:1バレル78─83ドル

*米原油在庫が3週連続で減少
米エネルギー情報局(EIA)が17日に発表した12日時点の週間石油在庫統計で、原油在庫は前週比487万バレルの減少となりました。3週連続の減少で累計では2,047万バレルの大幅減です。一方でガソリンが3週ぶりに増加したほか、留出油も2週連続で増加しました。

市場では米国の独立記念日7月4日の休日前後が、目先の需要ピークになるとの見方もあっただけに、米原油在庫の市場予想を超える減少に安堵感も広がっています。ただガソリンの在庫は増加に転じており、今後の動きに注目が集まりそうです。

一方、中東情勢には動きもみられました。イスラエルのネタニヤフ首相は18日、軍事作戦が進行中のパレスチナ自治区ガザ最南端ラファをイスラム組織ハマスとの衝突後、初めて訪問したと伝えられています。これによりハマス掃討作戦が最終局面に入りつつあるとの見方も出てきました。ネタニヤフ首相は来週、米国を訪問し、米議会で演説する予定です。

中国の原油需要に懸念も出ています。同国の2024年4─6月の国内総生産(GDP)は前年比4.7%増に鈍化。長引く不動産不況と雇用不安が内需を圧迫しており、中国経済の先行きへの不安が広がっています。
他方で温室効果ガス排出削減に向けた行動計画を発表。新しい発電技術の採用などを盛り込み、平均排出量は23年比で20%削減されるとしています。

*WTI原油先物の日足(期間:2023/10/18~2024/7/18)、青:25日移動平均線、黄:200日移動平均線
WTI原油先物の日足チャート
(出所:TradingView)


<今週のトピック:金高騰で金メダルも高騰?>

フランスのパリで第33回夏季オリンピックが7月26日から8月11日、パラリンピックが8月28日から9月8日までの日程で開催されます。パリで開催されるのは100年ぶり。合計54競技878種目が行われます。

正式な金メダル数は公表されていませんが、パリ2024用に生産されたメダルは5,084個であり、そのうち3分の1が金メダルとすれば1,694個。柔道など一部競技では銅メダルが複数人に授与されることを考慮すれば、金メダルは1,600個程度(東京2020も約1600個)になりそうです。

よく知られていることですが、金メダルは純金で作られているわけではありません。主に銀で作られており、金色の部分は金メッキです。ごく初期は純金だったのですが、1912年で中止されました。五輪の精神は「参加することに意義がある」ですので、不公平感を出さないことと開催都市の負担軽減が目的です。

パリ五輪のメダルは、大きさが金・銀・銅、それぞれ同じく直径85mm、厚さ9.2mm。
重さは、金メダル529g、銀メダル525g、銅メダル455g。エッフェル塔から取られた18gの鉄が埋め込まれているのが特徴です。

金メダルの金含有量が、これまでと同様に約6gとすれば、金6g+銀505g+鉄18gで529g。金を1g当たり1万3,500円、銀1g当たり180円、鉄をゼロ円で計算すると、貴金属の価値だけで約17万円となります。

2021年東京五輪のときの金メダルは当時の価格で12万円程度と試算されており、3年で約1.4倍に上昇したことになります。1,600個の金メダルを17万円で作るとすれば2億7,200万円。選手にとって金メダルの価値は「プライスレス」ですが、金価格が高騰する中、開催都市にとってはずっしりと重い負担になりそうです。

*パリ五輪2024のメダル
パリ五輪2024のメダル
出典:国際オリンピック委員会
https://olympics.com/ja/news/paris-2024-olympic-paralympic-medals-reveal-eiffel-tower


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伊賀大記

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伊賀大記(イガダイキ)

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