カナダ、NZ、英、日のCPIに注目!
2024/07/16 13:14
【今週のポイント】
・米経済指標やベージュブックでFRBの金融政策見通しに変化?
・フランスの政治不安が引き続きユーロの重石!?
・CPIでBOCやRBNZの利下げ観測が強まるか
先週11日、米国の6月CPIがインフレの落ち着きを示し、米ドルに下落圧力が加わった局面で、本邦当局が米ドル売り円買いの為替介入に踏み切った模様です。12日の東京市場では、日銀がユーロ/円でレートチェックを行ったとの観測も流れ、また、米ドル/円が下押す場面もみられたことから、断続的な為替介入が行われた可能性も否定はできません。
もっとも、日米の金利差の変化(縮小)ではなく、金利差(日<米)そのものをテーマとした円売りの圧力は根強く、為替介入の警戒感との綱引きにおいても前者がやや優勢になりつつあるのかもしれません。
13日の暗殺未遂事件を経て、大統領選挙でトランプ氏が勝利するとの見方が強まっているようです。「トランプ政権」の重点施策となるであろう減税や財政支出の拡大は景気を刺激するとの思惑から、「株高、金利高、米ドル高」の「トランプ・トレード」が盛り上がる気配もみられます。
パウエルFRB議長は15日の講演でのインタビューで、過去3カ月の経済データでインフレが目標の2%に向かっていると自信を深めたと述べました。OIS(翌日物金利スワップ)によれば、9月の利下げが100%、年内3回目の利下げが5割強で市場に織り込まれました。利下げ観測の高まりも株価の上昇要因になったとみられます。
もっとも、やや長い目でみれば、トランプ・トレードと利下げ観測は相容れない点もあります。トランプ氏の政策は、減税や財政支出の増大を通じて景気を刺激する可能性があります。また、移民の抑制は労働市場のタイト化を、制裁関税や輸入制限などはインフレ圧力につながるかもしれません。<西田>
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先週(7/8- )は、RBNZ(NZ中銀)の利下げ観測が強まったことでNZドルが軟調に推移しました。豪ドル/NZドルは1年9カ月ぶりの高値を記録し、NZドル/円は約1カ月ぶりの安値をつけました。17日に発表されるNZの4-6月期CPI(消費者物価指数)の結果次第では、NZドルに対する下押し圧力は一段と強まるかもしれません。
米ドル/カナダドルやカナダドル/円については、16日発表のカナダの6月CPIが材料になりそうです。CPIでBOC(カナダ中銀)の利下げ観測が強まる場合、米ドル/カナダドルは底堅く推移し、カナダドル/円は上値が重い展開になりそうです。
18日にはSARB(南アフリカ中銀)の政策会合が開かれます。南アフリカの5月CPIは前年比5.2%と、上昇率は4月と同じとなり、SARBのインフレ目標(3~6%)の中間値である4.5%を引き続き上回りました。18日の会合で政策金利は8.25%に据え置かれそうです。市場では、SARBは9月に利下げを行うとの観測があります(8月は会合なし)。前回5月の会合時は、6人の政策メンバー全員が政策金利の据え置きに賛成しました。今回の会合で利下げを支持するメンバーがいるなどして9月の利下げ観測が強まれば、南アフリカランドは軟調に推移する可能性があります。
本邦当局による為替介入(米ドル売り・円買い介入)には注意が必要です。豪ドル/円やメキシコペソ/円などのクロス円は、米ドル/円の動向にも影響を受けるからです。為替介入によって米ドル/円が大きく下落する場合、クロス円はそれに引きずられそうです。<八代>
今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:155.000円~160.000円>
今週は、米経済指標が数多く発表されます。6月の小売売上高、住宅着工件数、鉱工業生産、7月のフィラ連銀製造業景況指数などです。ベージュブック(地区連銀経済報告)も公表されます。それらによって、景気の減速やインフレ圧力の低下が示唆されれば、利下げ観測が一段と強まって、米ドル/円には下押し圧力が加わるかもしれません。逆に、景気の底堅さや根強いインフレ圧力が示唆されれば、利下げ観測が後退して、米ドル/円に上昇圧力が加わるかもしれません。ただ、後者の場合は、本邦当局の為替介入に対する警戒感が米ドル/円の頭を押さえそうです。
15日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が織り込むFRBの利下げ確率は9月が100%超(=0.25%幅を上回る利下げの確率が少々)、また年内に3回目の利下げ(≒3会合連続利下げ)が5割強織り込まれています。前倒しになった利下げ観測が今週の経済指標等を受けてどう変化するか、要注目でしょう。
一方、15日時点のOISに基づけば、7月30日の金融政策決定会合で日銀が利上げする確率を市場はほぼ五分五分とみています。19日発表の6月CPIを受けて金融政策見通しはどう変化するでしょうか。<西田>
今週の注目通貨ペア②:<ユーロ/英ポンド 予想レンジ:0.83500ポンド~0.84500ポンド>
ユーロ/英ポンドは12日に一時0.83797ポンドをつけ、その後も0.84000ポンド近辺で推移しています。これは約2年ぶりの低水準です。後述するように、ECBとBOEの金融政策の方向性はかなり類似してきました。そうした中で、ユーロ/英ポンドに下押し圧力が加わるのは、ユーロ圏の政治リスクが意識されているからかもしれません。
7月7日のフランス議会の決選投票では、左派の新人民戦線が第1党になったものの、過半数の議席には遠く及ばず、第2位のマクロン大統領の与党連合、第3位のルペン氏のRN(国民連合)と、議会勢力は3分されました。また、新人民戦線を構成する政党間でも足並みはそろわず、最多議席の「不屈のフランス」とその他の左派勢力が首相候補を一本化できない状況が続いているようです。フランスはEUから財政赤字の大きさを問題視されており、政治不安が続くようであれば、今後もユーロの弱気材料となりそうです。
15日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、18日のECB理事会で利下げが実施される確率を市場はほぼゼロとみています。市場のメインシナリオ(確率50%超)は「9月、12月、25年3月、6月」と25年半ばまでに0.25%×4回の利下げです。一方、英国の6月CPIが前年比2.0%に減速するなどインフレの鈍化がみられ、BOE(英中銀)の利下げ観測が高まっています。同じく15日時点のOISに基づけば、市場のメインシナリオは「8月(または9月)、11月、25年2月、5月」と4回の利下げを見込んでおり、ECBとほぼ同じです(ただし、ECBは既に6月に利下げを実施済み)。
ECBとBOEの金融政策見通しがどう変化するかにも要注目。まずは、17日の英国の6月CPI(前年比2%割れの可能性も)、18日のECB理事会(据え置き見通し)およびラガルド総裁の記者会見などが材料となりそうです。<西田>
今週の注目通貨ペア③:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.10000NZドル~1.12000NZドル>
豪ドル/NZドルは15日に一時1.11308NZドルへと上昇し、22年10月以来1年9カ月ぶりの高値をつけました。
豪ドル/NZドルの上昇に弾みがついた要因として、10日のRBNZ(NZ中銀)政策会合によってRBNZの利下げ観測が強まったことが挙げられます。RBNZは会合で政策金利を5.50%に据え置くとともに、声明で「金融政策は引き続き(景気)抑制的である必要がある」と改めて表明しました。ただし、今回の声明では「抑制の程度は、予想されるインフレ圧力の鈍化に合わせて時間とともに緩和されるだろう」が追加されました。5月の会合で利上げについても議論されるなどタカ派的だったRBNZの政策スタンスは、ハト派方向へとシフトしました。
今週は17日発表のNZの4-6月期CPI(消費者物価指数)に注目です。CPIの結果を受けてRBNZの利下げ観測が一段と強まる場合、豪ドル/NZドルはさらに上昇すると考えられます。<八代>
今週の注目通貨ペア④:<米ドル/カナダドル 予想レンジ:1.35500カナダドル~1.37500カナダドル>
BOC(カナダ中銀)は前回6月の政策会合で0.25%の利下げを実施。マックレムBOC総裁は会合後の会見で「インフレ率が引き続き鈍化し、インフレ率が持続的に2%の目標に向かうとの確信が一段と強まるなら、追加利下げを予想するのが妥当だ」と述べました。
市場では、BOCは次回7月24日の会合で追加利下げを行うとの見方が有力です。16日に発表されるカナダの6月CPI(消費者物価指数。本稿執筆時点では未発表)が弱い結果になれば、追加利下げ観測が強まるとともに、カナダドル安材料になりそうです。
米ドル/カナダドルについては、米FRBの金融政策も重要です。小売売上高など米経済指標やベージュブック(米地区連銀経済報告)などによってFRBの利下げ観測が強まる場合、米ドル/カナダドルは上値が重くなる可能性があります。<八代>
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