パウエルFRB議長の議会証言
2024/07/08 13:33
【今週のポイント】
・弱い米経済指標を受けてパウエル議長は何を語るか
・フランス政治の不透明感はユーロの重石!?
・政策会合でRBNZの利下げ観測が後退するか
米国の6月雇用統計はNFP(非農業部門雇用者数)が前月比20.6万人増と市場予想(19.0万人増)を上回り、ヘッドラインは強めでした。しかし、4-5月分が計11.1万人下方修正され、また失業率は0.1ポイント上昇して4.1%と21年11月以来の水準に達するなど、中身は弱めでした。
先週公表されたFOMC議事録(6/11-12開催分)では、労働市場軟化の兆候が指摘されました。金融政策はインフレ抑制のみならず雇用(景気)への配慮も重要との指摘もあり、労働市場の軟化は利下げを促す要因となりそうです。
9日の上院銀行委員会での議会証言で、パウエルFRB議長が何を語るか興味深いところでしょう(議長は10日下院金融サービス委員会でも同様の証言)。
英国の議会選挙では野党労働党が圧勝しました。事前に予想された結果でもあり、市場は選挙結果を冷静に受け止めているようです。ただし、スターマー首相が率いる労働党はどのような政策を打ち出すでしょうか。財政赤字の拡大につながるような政策の場合、英ポンド安や長期金利上昇などの形で市場が警鐘を鳴らすのは、22年秋のトラス・ショックで経験済みです。
フランスの議会選挙では、7日の決選投票で左派連合の新人民戦線が第1党になった模様。第1回投票で躍進したルペン氏の極右・RN(国民連合)は、与党連合に次ぐ第3党になったようです。極右の極端な政策が日の目を見ない点はユーロにとってプラスかもしれません。ただ、過半数の議席を獲得した政党(グループ)がないなかで、誰が首相に就任するのか、その首相の下でどのような政策が採られるのか、不透明です。フランス政治の不透明感は状況次第でユーロの重石になりそうです。<西田>
******
先週(7/1- )、豪ドル/円は91年5月以来およそ33年ぶりの高値を記録し、豪ドル/NZドルは約2カ月ぶりの高値をつけました。足もとの豪ドル堅調の主な要因として、RBA(豪中銀)の利上げ観測が挙げられます。RBAの利上げ観測が引き続き豪ドルを下支えすると考えられます。
豪ドル/NZドルについては、10日に開かれるRBNZ(NZ中銀)の政策会合が材料になりそうです。RBNZの利下げ観測が後退する場合、豪ドル/NZドルは上値が重くなる可能性があります(詳細は後述)。
米ドル/カナダドルについては、パウエルFRB議長の議会証言や米国の6月CPI(消費者物価指数)の結果に影響を受けそうです。BOC(カナダ中銀)の利下げ観測が強まるなかで、議会証言やCPIなどを受けてFRBの利下げ観測が後退する場合、米ドル/カナダドルには上昇圧力が加わりそうです。
メキシコの6月CPIが9日に発表されます。市場ではBOM(メキシコ中銀)は次回8月8日に利下げを行うとの観測もあります。CPIが市場予想を上回る結果になれば、BOMの利下げ観測が市場で後退するとともに、メキシコペソが堅調に推移しそうです。<八代>
今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:155.000円~163.500円>
米ドル/円は3日に161.938円と約38年ぶりの高値をつけた後に、反落しました。米国の6月雇用統計やISM非製造業景況指数など経済指標が総じて軟調で、FRBの利下げ観測が高まりました。今週は、9日と10日のパウエル議長の議会証言に要注目です。軟調な経済指標を受けて、「インフレが持続的に2%に向かっていると一層の確信を得るまでは、政策金利の引き下げが適切になるとは予想していない」とのFRBのスタンスに変化が生じるかどうか。
日銀は7月末の金融政策決定会合で国債買入れ額の減額計画を決定する方向です。同じタイミングで追加利上げに踏み切るかどうか。日銀の利上げ観測が高まれば、1.1%手前で揉み合っている長期金利(10年物国債利回り)が高値を更新して米ドル/円の下押し圧力となるかもしれません。
一方で、米ドル/円が上述の直近高値を超えて上昇に拍車がかかるようなら、本邦当局による為替介入の観測が高まるでしょう。7月末の退任が決まった神田財務官がどのような判断をするかも興味深いところです。<西田>
今週の注目通貨ペア②:<ユーロ/英ポンド 予想レンジ:0.84000ポンド~0.85000ポンド>
ユーロ/英ポンドは6月14日に一時0.84000ポンドを割り込み、その後は反発。7月7日のフランス議会選挙の決選投票でルペン氏の極右・RN(国民連合)が予想外の第3党に沈み、反EU・反ユーロの政策が模索されるリスクは低減しました。ただ、第1党に躍り出た左派の新人民戦線がどのような政策を打ち出すのか。市場で財政赤字拡大の懸念が強まらないか、注意する必要はありそうです。まずはマクロン大統領が誰を首相に指名するのか、注目でしょう。
一方、英国の議会選挙では野党労働党が圧勝しました。スターマー首相は中道寄りの政策を志向しているようです。労働党政権は14年ぶりとはいえ、国民の支持や市場の信認が厚かった97-07年のブレア政権などの経験もあり、ある程度安定した政権運営が期待できそうです。<西田>
今週の注目通貨ペア③:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.09000NZドル~1.11000NZドル>
豪ドル/NZドルは5日に一時1.10053NZドルへと上昇し、5月7日以来およそ2カ月ぶりの高値をつけました。足もとの豪ドル/NZドル上昇の主因として、豪州の5月CPI(消費者物価指数。6/26発表)の強い結果を受けてRBA(豪中銀)の利上げ観測が強まったことが挙げられます。5月CPIは前年比4.0%と、市場予想の3.8%を上回り、23年11月以来6カ月以来の強い伸びでした。
市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によると、市場が織り込むRBAが利上げする確率は、次回8月5-6日の政策会合で25%程度、9月23-24日の会合までで35%程度、11月4-5日の会合までで40%程度です(日本時間8日午前10時時点)。RBAの利上げ観測が引き続き豪ドル/NZドルを下支えしそうです。
今週は、10日にRBNZ(NZ中銀)の政策会合が開かれます。政策金利は5.50%に据え置かれるとみられ、その通りの結果になればRBNZの声明や会合の議事要旨が材料になりそうです。前回会合時の議事要旨では、「(会合では)利上げの可能性について議論した」、「金融政策(=現在の政策金利の水準)が需要を抑制していると確信している」、「政策金利を長期間、(景気)抑制的な水準に維持する必要がある」などとされました。
市場では、RBNZは早ければ10月に利下げを行うとの観測があります。RBNZの声明や議事要旨が市場の利下げ観測を後退させる内容になれば、豪ドル/NZドルは上値が重くなる可能性があります。<八代>
今週の注目通貨ペア④:<米ドル/カナダドル 予想レンジ:1.35000カナダドル~1.37500カナダドル>
5日に発表されたカナダの6月雇用統計は失業率が6.4%、雇用者数が前月比0.14万人減となり、いずれも市場予想(6.3%と2.25万人増)よりも軟調な結果でした。カナダの雇用統計の結果を受けて市場ではBOC(カナダ中銀)が次回7月24日の政策会合で利下げするとの観測が強まりました。そのことはカナダドルにとってマイナスです。
今週は、パウエルFRB議長の議会証言(9日と10日)や米国の6月CPI(消費者物価指数。11日)が材料になりそうです。議会証言やCPIによってFRBの利下げ観測が市場で後退する場合、米ドル高圧力も加わって、米ドル/カナダドルは2日高値の1.37505カナダドルに向かって上昇する展開が想定されます。<八代>
- 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
- 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
- 当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
- 相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。