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米雇用統計:労働市場は緩やかに軟化、FRBは年内2回利下げ!?

2024/07/06 06:39

【ポイント】
・5月NFPは市場予想を上回るも、詳細をみればやや軟調
・利下げに向けた材料は少しずつ増えつつある模様
・長期金利は小幅低下、米ドル/円は揉み合うも発表前と変わらず

米国の6月雇用統計はやや軟調でした。米長期金利(10年物国債利回り)は、ヘッドライン(NFP20.6万人増)に反応したのか、いったん上昇したものの、すぐに低下。米ドル/円は上下に振れた後、雇用統計発表直前とほぼ同じ160.799円で取引を終えました。

OIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が想定するシナリオ(確率50%超)は、「9月に利下げ、12月に追加利下げ」というもの。確率は「9月利下げ77%、12月追加利下げ92%」と、雇用統計発表前に比べて利下げ確率が高まりました。

FOMCは、「一層の確信を得るまで、利下げが適切になるとは予想していない」としてきましたが、利下げに向けた材料は少しずつ増えているのかもしれません。

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6月の雇用統計は、事業所調査のNFP(非農業部門雇用者数)が前月比20.6万人増と、市場予想(19.0万人増)をやや上回りました。ただ、政府部門が7.0万人増と大きく、民間部門は13.6万人増と市場予想(16.0万人)を下回りました。また、NFPの4-5月分が合計11.1万人下方修正されました。過去3カ月の平均は17.7万人増/月で、これは21年1月以来の弱い伸びでした(ただし、コロナ・ショック前の17-19年の雇用増加ペースと同じ)。

米雇用統計 NFP

時間当たり賃金は前年比3.9%増で、ジリジリと鈍化していますが、インフレ率(5月PCEコアは前年比2.6%)を上回っています(=実質賃金の伸びはプラス)。また、<雇用者数×週平均労働時間×時間当たり賃金>で求められる総賃金指数は前年比5.1%と、こちらも伸びは少しずつ鈍化しています。
米雇用統計 時間当たり賃金

米雇用統計 総賃金

家計調査に基づく失業率は4.1%と前月の4.0%から上昇、21年11月以来の水準に達しました。労働参加率<(雇用者数+失業者数)/生産年齢人口>は62.6%と、小幅に上昇しました。ただ、労働参加率は昨年後半以降はほぼ横ばいで推移しており、コロナ・ショック後の回復(上昇)段階は終了したのかもしれません。
米雇用統計 失業率

米雇用統計 労働参加率

米労働市場については、5日配信のM2TVグローバルView(YouTube)「米景気はついに減速!? 米ドル/円の行方」でも解説しています。

なお、FOMC議事録(6/11-12開催分)では、NFPが実際の雇用状況を過大に表しているのではないかとの指摘がありました。以下に、6月8日付け「米雇用統計:雇用者数は大幅増加、利下げ観測は後退!?」の一部を再掲しておきます。

◆23年の雇用増加ペースは労働省発表よりも弱い!?
NFP(非農業部門雇用者数)は23年に25.1万人/月の増加でした。しかし、実際には雇用増加ペースはもっと弱かったのではないかとの見方が浮上しています。これは雇用統計の調査方法に起因する問題です。

月々のNFPは約12万カ所の事業所のサンプル調査に基づいています。ただし、毎年3月に失業保険データを用いて全数調査(※)を行っています。その正式な結果が明らかになるのが8月で、それに基づいて推計がやり直されて、遡及改定されたデータが翌年2月に発表されます。
※1,200万カ所の事業所が対象となり、全雇用の95%がカバーされるとのこと。

6月5日に関連データが公表されました。それをベースにすれば、23年の雇用増加ペースが下方修正されるとの見方が強いようです。

全数調査の正式結果が判明するのが今年8月。その結果が雇用統計の改定に反映されるのは25年2月です。それでも、それ以前に「実際の雇用は弱い」との憶測が広がる可能性はありそうです。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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