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米雇用統計:雇用者数は大幅増加、利下げ観測は後退!?

2024/06/08 06:10

【ポイント】
・5月NFPは大幅増加、時間当たり賃金も加速
・米FRBの利下げ観測は後退。年内は利下げ1回か?
・長期金利は今週の大幅低下から反発

米国の5月雇用統計は堅調でした。米長期金利(10年物国債利回り)は発表直前の4.30%から4.43%に上昇。米ドル/円は一時157円台に乗せました。

OIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が想定するシナリオ(確率50%超)は、「9月に利下げ、追加利下げは25年1月」というもの。ただ、「9月利下げ」も確率は5割をわずかに上回っているに過ぎず、今後の状況次第で利下げ観測は11月以降に後ズレするかもしれません。その場合、長期を中心に金利が上昇して、米ドルのサポート材料になりそうです。

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5月の雇用統計は、事業所調査のNFP(非農業部門雇用者数)が前月比27.2万人増と、市場予想(18.5万人増)や前月実績(16.5万人に下方修正)を上回りました。年初来では24.8万人増/月のペース。これは23年の25.1万人増/月とほぼ同じで、コロナショック前の3年間(17-19年)の平均17.7万人増/月を上回っています。

雇用統計

時間当たり賃金は前年比4.1%増で、前月(4.0%増)から伸びが高まり、インフレ率(4月PCEコアは前年比2.8%)を上回りました(=実質賃金の伸びはプラス)。また、<雇用者数×週平均労働時間×時間当たり賃金>で求められる総賃金指数は前年比5.4%と、比較的高い伸びが続きました。

時間当たり賃金

総賃金

家計調査に基づく失業率は4.0%と前月の3.9%から上昇、22年1月以来初めて4%台となりました(ただし、厳密には3.96%)。労働参加率<(雇用者数+失業者数)/生産年齢人口>は62.5%と、小幅に低下しました。





◆23年の雇用増加ペースは労働省発表よりも弱い!?

NFP(非農業部門雇用者数)は23年に25.1万人/月の増加でした。しかし、実際には雇用増加ペースはもっと弱かったのではないかとの見方が浮上しています。これは雇用統計の調査方法に起因する問題です。

月々のNFPは約12万カ所の事業所のサンプル調査に基づいています。ただし、毎年3月に失業保険データを用いて全数調査(※)を行っています。その正式な結果が明らかになるのが8月で、それに基づいて推計がやり直されて、遡及改定されたデータが翌年2月に発表されます。
※1,200万カ所の事業所が対象となり、全雇用の95%がカバーされるとのこと。

米労働省は6月5日に関連データを公表しました。それをベースにすれば、23年の雇用増加ペースが下方修正されるとの見方が強いようです。

もっとも、全数調査の正式結果が判明するのが今年8月。その結果が雇用統計の改定に反映されるのは25年2月です。それでも、それ以前に「実際の雇用は弱い」との憶測が広がる可能性はありそうです。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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