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フランス議会選挙、コアビタシオン!?

2024/06/27 07:51

【ポイント】
・ルペン氏の極右RN(国民連合)が第1党になる勢い
・RNは他の勢力と協力して過半数に漕ぎ着けるか
・RNはポピュリスト的政策をどの程度打ち出すか

フランスの国民議会(下院)の選挙が6月30日(第1回投票)と7月7日(決選投票)に実施されます(【補足1】ご参照)。

フランス議会選挙

どの政党も単独での議席数(577)の過半数獲得は難しそうです。ただ、第1党になりそうなRNが他の右派勢力などと協力して過半数に漕ぎ着ける可能性はありそうです。その場合、RNのバルデラ党首が首相に指名されるかもしれません(本人は単独過半数でなければ首相を引き受けないと述べていますが・・)。

大統領と首相(議会)が異なる勢力に属する場合、フランスではコアビタシオン(cohabitation=共生・同居)と呼ばれます(【補足2】ご参照)。基本的には、財政や税制、年金などの国内政策は議会の、外交や安全保障など対外政策は大統領の領域です。ただし、ウクライナ支援の資金面なども含めて多くの点で議会の協力が必要となります。議会の最大勢力が極右、2番目が急進左派を含む左派連合と両極に分かれる可能性があり、マクロン大統領は非常に厳しい舵取りを迫られそうです。

極右RNはEU(やユーロ圏)に批判的であり、反移民のポピュリスト政党です。エネルギー減税や年金支給年齢引き下げなど財政赤字の拡大につながりかねない政策を提唱しています。そのため、議会解散後にフランス国債が売り込まれ、(ユーロ圏の優等生である)ドイツ国債との利回り格差が拡大してきました。

RNの政策

RNは、現政府の財政赤字削減努力やEUの財政ルールを尊重する意向を表明しています。また、即時導入を目指すエネルギー減税は、EU予算の負担金削減や企業への徴税強化で賄う(=財政赤字は拡大しない)としています。

もっとも、議会選挙の結果がどうなるか、そしてRNがどの勢力と協力して実際にどのような政策を打ち出すか。不透明要素は多く、フランス政治に引き続き注意は必要でしょう。

【補足1】フランスの議会選挙制度
第1回投票で50%以上の得票をした候補が当選(ただし、有権者数の25%以上であること)。1回目の投票で当選者がいなければ、上位2名と、3位以下でも有権者数の12.5%以上の票を獲得した候補により決選投票が行われる。

【補足2】過去のコアビタシオン(Wikipediaより要約)
86-88年:ミッテラン大統領(左)-シラク首相(右)
ミッテラン大統領が外交に専念する一方、シラク首相はミッテラン大統領の改革を巻き戻し、減税や国営企業の民営化を推進した。ミッテラン大統領が再選後に議会を解散、左派が過半数を獲得してコアビタシオンは終了。

93-95年:ミッテラン大統領(左)-バラデユール首相(右)
93年の議会選挙で右派が圧勝し、ミッテラン大統領は、大統領選への出馬準備を進めるシラク氏ではなくバラデュール氏を首相に指名。

97-02年:シラク大統領(右)-ジョスパン首相(左)
95年に就任したシラク大統領のもと、97年の議会選挙で左派が勝利。ジョスパン首相は週労働時間の短縮など左派的政策を進めた。コアビタシオンは5年続いた。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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