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米経済はソフトランディングできるか?

2024/06/19 07:57

【ポイント】
・米小売売上高は下振れ、鉱工業生産は上振れ
・4-6月期のGDPは堅調な結果となりそう
・米景気が軟着陸できるか、引き続き経済指標に要注意

米国の5月小売売上高は前月比0.1%と、市場予想(0.3%)を下回りました。自動車・部品を除くと、前月比マイナス0.1%と、市場予想(0.2%)を下回りました。一方、5月鉱工業生産は前月比0.9%と、市場予想(0.3%)を大きく上回りました。

以下では、視点を変えて小売売上高と鉱工業生産の水準を確認しておきましょう。

小売売上高は、コロナショック後に金融緩和や財政出動(減税・給付金)を反映して勢いが強まりました(インフレで水膨れした分もありそうですが)。22年3月の利上げ後はコロナショック前のペースに戻りました(下図、薄青線)。そして、今年に入るとほぼ横ばいの推移になったようにみえます(同薄赤線)。

今後、個人消費が息切れするのか。消費の源泉である所得、その多くを生み出す雇用動向と消費者マインドの変化に要注意でしょう。

米小売売上高
  ※薄青線、薄赤線は筆者が判断するトレンドライン

鉱工業生産指数は、前回15-18年の利上げ後と異なり、22-23年の利上げ後も落ち込んではいないようです(利上げが既に終了したとの前提ですが)。鉱工業生産指数は18年のピーク水準には達していませんが、足もとでやや上向きになっています。今後はもちろん個人消費や設備投資などの最終需要に依存しますが、ISM指数など製造業の動向もチェックしておきたいところです。

米鉱工業生産

アトランタ連銀のGDPNow(短期予測モデル)によれば、6月18日時点(小売売上高や鉱工業生産の発表後)で、4-6月期のGDPは前期比年率3.1%と予測されています。同予測は一時1.8%まで低下しましたが、製造業や雇用関連のデータを受けて上昇してきました。とりわけ、景気の勢いをみるうえで重要な国内民間最終需要の寄与度(※)は2.5%とそれ以前の3四半期とほぼ同じです。米経済はソフトランディング(軟着陸)に向かっていると言えるかもしれません。
(※)GDPの伸び率のうち、何%分を説明するかを示したもの。各項目の合計がGDP伸び率に一致します(統計的な誤差はありえます)。

GDPNow

GDPNow推移

足もとの米株の堅調は、米経済のソフトランディングを前提にしているでしょう。その前提に揺るぎはないか、今後も経済データを精査する必要はありそうです。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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