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米利下げ観測はCPIで高まり、FOMCでやや後退!?

2024/06/13 07:00

【ポイント】
・米CPIが市場予想を下回り、米長期金利は大幅低下、米ドル/円も下落
・「ドット・プロット」は年内1回の利下げを示唆
・パウエル議長は労働市場を注視している模様

米国の5月CPI(消費者物価指数)が市場予想を下回ったことで利下げ観測が高まり、米長期金利(10年物国債利回り)は低下、米ドル/円は下落しました。その後、FOMCの結果が判明して、「ドット・プロット」が年内1回の利下げを示唆すると、長期金利、米ドル/円とも反発しました。

米長期金利

FOMC後のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場は9月の利下げを61%、12月の追加利下げを64%織り込んでいます。

目先の注目は、本日発表の米新規失業保険申請件数やPPI(生産者物価指数)、そして14日の日銀金融政策決定会合(+植田総裁会見)です。

FOMCの「ドット・プロット」は年内1回の利下げを示唆

FOMC声明文

FOMCの票決は全会一致(12対0)。

声明文では、景況判断は前回とほぼ同じでしたが、物価に関して「2%の物価目標に向かって、わずかながら一段の進展があった」と評価されました。前回は「進展が止まっている」でした。

フォワードガイダンス(先行きの政策に関する示唆)は「インフレが持続的に2%に向かっていると一層の確信を得るまでは、政策金利の引き下げが適切となるとは予想していない」であり、前回と同一。

その他の文言も、QT(量的引き締め=保有債券の縮小)に関する記述が簡素化されたものの、実質的に前回と同じでした。

インフレ見通し(PCEデフレーター)は、24年と25年について前回3月分から小幅上方修正されました。

FOMCの経済見通し

最も注目された「ドット・プロット」をみると、24年の中央値は1回の利下げを予想(前回は3回)。3回以上の予想はゼロ。利下げなしが4人に増えました(前回は2人)。ただし、25年の利下げ予想(中央値、以下同じ)は前回の3回から4回へ、26年も同様に3回から4回に増えました。その結果、26年末の政策金利予想は3.125%で前回と同じでした。

中立水準と考えられる「長期」の政策金利予想は2.75%で、前回の2.625%から上方修正されました。大幅な利上げにもかかわらず、景気がなかなか減速しないため、「中立水準が上方にシフトしているのではないか」との議論がありましたが、それが反映された結果でしょう。

ドットプロット


パウエル議長は会見で「ドット・プロットは計画ではない」と指摘し、重視しすぎないように注意を促しました。

物価見通しが上方修正されたことに関して、議長は「保守的に予想されている」と述べました。公式な見通し以上にインフレが落ち着くとの期待があるのでしょう。

議長は前回「利上げの可能性は低い」と指摘しましたが、今回も「誰も利上げを基本シナリオとはしていない」と明言しました(「ドット・プロット」を見れば明らかでしょうが)。

議長は、FOMCが労働市場を重要視していることを改めて示しました。雇用の伸びは引き続き強いが、ペースダウンしていると指摘。労働市場はコロナ禍前に戻っているとしました。また、労働参加率の上昇は移民の増加によるところが大きいとも指摘。労働市場が「予想外に」軟化すれば、対応する準備があるとも述べました。

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5月CPIは予想比下振れ

5月CPIは総合が前年比3.3%と、市場予想と前月(ともに3.4%)を下回りました。食料とエネルギーを除くコアは前年比3.4%と、市場予想(3.5%)、前月(3.6%)を下回りました。総合、コアは前月比でも市場予想を下回りました。

CPI

CPIコアは3カ月前比年率、6カ月前比年率でも伸びが鈍化しており、このまま鈍化が続くか要注目でしょう。

CPIモメンタム

労働コストを強く反映するとしてFRBが注目しているコアサービス(住居費を除く)は前年比5.01%と、3カ月連続で5%台で高止まりしています。コアサービス(住居費を除く)はPCE(個人消費支出)版でも鈍化が止まっており、FOMCがどう判断するか興味深いところでしょう。

CPIコアサービス
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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