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FOMC議事録:タカ派的内容で米金利、米ドルに上昇圧力

2024/05/23 06:26

【ポイント】
・FOMCは、様々なインフレ指標の改善停滞を指摘
・市場の利下げ予想(年内1回だけ)を肯定
・利上げの可能性についての言及あり

4 月30日-5月1日に開催された米FOMCは政策金利の据え置きを決定しました(※)。ただ、声明文では、「ここ数カ月、2%の物価目標への進展が止まっている」と宣言。また、パウエルFRB議長は記者会見で、「(物価目標達成への)確信を得るまでに、思った以上に時間がかかりそうだ」と述べていました。
※QT(量的引き締め=保有債券の縮小)の減額を同時に発表。

今回の議事録はタカ派的な内容で、米ドル/円や米長期金利(10年物国債利回り)は小幅上昇。ただ、既にFOMC声明文や議長会見がタカ派的だったことや、最近のFOMC参加者が利下げに慎重な発言を繰り返しているため、市場の反応は限定的でした。

足もとのOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が織り込む利下げ確率は9月FOMCまでで7割弱、12月までで2回目が5割強です。したがって、今後のデータ次第では、市場が予想する利下げ開始が11月以降に後ズレしたり、年内の利下げ予想が1回に減ったりする可能性があります。

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FOMC議事録で注目されたのは以下のポイントです。

2%の物価目標への進展が止まっていることに関して、かなり詳細に議論されました。「とりわけ、住居費を除くコアサービスが昨年10-12月期に比べて今年1-3月期は伸びが高まった」、「コア商品がここ数カ月で初めて3カ月前比で上昇した」、「住宅サービスの伸び鈍化ペースが落ちた」など。そして、季節的な要因が指摘されつつも、「最近のインフレの高まりは幅広く、それゆえ軽視できない」との意見も出ました。

労働者の需給はやや緩和されたものの、雇用は引き続き堅調であり、それが個人消費やひいては景気の底堅さにつながっているとの判断が示されました。雇用が堅調な背景として、前回の議事録同様に「移民(immigration)」が複数個所で指摘されました。

金融政策の先行きに関して、市場は概ねFOMCの意向を理解しているとされました(当時の市場のメインシナリオは年内の利下げは1回だけ)。

先行きの不確実性の一因として、政策金利の景気抑制的な度合いが不透明な点が挙げられました。景気を加速も抑制もしない政策金利の中立水準が以前と比べて上昇しているのではないかとの議論です。

そして、結論では、物価目標への進展が見られなければ、現行の政策金利を長く維持すること、あるいは予想外に労働市場が軟化する場合には利下げすることが議論されました。利下げの条件に「労働市場の軟化」に言及があったことは興味深いところでしょう。そして、最後に、インフレ高進のリスクが浮上すれば、利上げも辞さないとの意向が様々な参加者から示されました。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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