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追撃「円買い」介入!? FOMCは利下げ開始の遅れを示唆

2024/05/02 06:20

【速報】本邦当局は追撃の「円買い」介入か
日本時間2日午前5時過ぎ、米ドル/円は157円台ミドルから153円近辺まで下落。4月29日に次ぐ本邦当局による米ドル売り円買いの為替介入が疑われます。タイミング的にはFOMCの結果が判明し、パウエルFRBの記者会見終了から約50分後。<日本時間2日午前6時>

米ドル円と為替介入

【FOMCのポイント】
・FOMCはインフレ改善の遅れを指摘
・市場は「利上げの可能性は低い」に強く反応!?
・市場のメインシナリオは「年内は9月に利下げ1回だけ」

米FOMCは大方の市場予想通り、6会合連続でFFレート目標水準(政策金利)を5.25~5.50%に据え置きました。

声明文では、2%物価目標への進展が止まっているとの認識が示されました。フォワードガイダンス(先行きの政策に関する示唆)は前回(3月20日)と同じく「インフレが持続的に2%に向かっていると一層の確信を得るまでは、政策金利の引き下げが適切となるとは予想していない」。前回までと同様に市場の早期利下げ観測をけん制するとともに、想定する利下げ開始時期を後ズレさせたと受け取れるでしょう。

FOMCの結果を受けて、米長期金利(10年物国債利回り)は低下。声明文の「進展が止まっている」に反応して一瞬上昇しましたが、QT(量的引き締め)のスローダウンが発表されたことで低下。さらに、パウエル議長が記者会見で「利上げの可能性は低い(unlikely)」と語ったことで一段と低下したものの、会見終了時にはほぼ会見前の水準に戻りました(終値は前日比0.05%低下の4.63%)。

NYダウはパウエル議長の会見が始まると、前日終値比500ドル超上昇しましたが、会見終了時には上昇分を全て吐き出しました(それでも前日終値比87ドル高で終了)。

米ドル/円はFOMC結果判明前の158円手前から一時156.989円まで下落したものの、パウエル議長の記者会見後には157円台ミドルまで反発しました。その後、本邦当局による為替介入が入ったとみられ、米ドル/円は一時152.920円まで下落。

OIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場のメインシナリオ(確率50%超)は、引き続き「年内は9月の利下げ1回だけ」。年終盤~翌年初にかけての利下げ確率はやや高まり、「25年1月も追加利下げなし」から「25年1月に追加利下げ」へと変わりました。もっとも、明日3日の米雇用統計などを受けて市場のメインシナリオは変わるかもしれません。

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FOMC声明文

FOMCの票決は全会一致(12対0)。

声明文では、冒頭の景況判断で前回同様に「景気は堅調」、「雇用は引き続き強い」とされました。そして、「インフレは鈍化したものの引き続き高い」としつつ、新たに「ここ数カ月、2%の物価目標への進展が止まっている」と付け加えられました。

また、政策方針の部分では、「雇用と物価の目標を達成するためのリスクは過去1年間により良いバランスになってきた(現在完了形)と判断する」とされ、前回の「より良いバランスになりつつある(現在進行形)」から修正。冒頭の「進展が止まっている」と平仄(ひょうそく)を合わせた格好です。これに続くフォワードガイダンスが上述の通り「一層の確信を得るまで」なので、FOMCが想定する利下げ開始時期が後ズレしていることが示唆されています。

なお、今回は一部で予想されたQT(量的引き締め=保有債券の縮小)のスローダウンを6月1日から開始すると発表されました。縮小ペースは月間950億ドルから同600億ドルへ。うち国債が600億ドル⇒250億ドル、MBS(住宅ローン担保債券)が350億ドルで従来通りです。

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パウエル議長は記者会見で、声明文の内容に沿って「(物価目標達成への)確信を得るまでに思った以上に時間がかかりそうだ」と述べました。一方で、「金利が既にピークかどうかは今後のデータ次第だが、利上げの可能性は低い」との見解も示しました。

議長はまた、「インフレが鈍化してきたので、もう一つの目標である(最大)雇用へのフォーカスを強める」と述べました。そして、「労働力に対する需要が引き続き供給を上回っている」との認識を示す一方で、「労働市場が想定以上に悪化すれば利下げが正当化される」とも指摘。

なお、政治への配慮の有無を問われ、議長は「政策変更は正しい時に実行する。(政治や選挙など)それ以外は全く関係ない」と明言しました。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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