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トルコリラをどうみる?:M2TV(YouTube)のご質問への回答

2024/04/09 07:29

【ポイント】
・トルコの高金利は魅力ながら、実質金利マイナスはメキシコと対照的
・カラハン新総裁が大胆な利上げを継続すれば、トルコリラ底打ちも⁉
・現時点での楽観論は時期尚早。投資家はテールリスクを警戒か

4月5日のM2TVグローバルView(YouTube)に以下のご質問をいただきました(文言は一部変更しています)。

最近トルコリラの相場が落ち着いており、米ドル/トルコリラ、トルコリラ/円ともに底打ちしたような印象です。特段なニュースはないものの、何かが進行しているように思います。50%の政策金利はやはり魅力的、今後さらに引き上げる余地もあるようです。ご見解いただけますでしょうか。

やはりFXをやるうえで、高い政策金利は魅力的ですよね。Bloombergが集計する37カ国の政策金利で、最も高いのはアルゼンチンの80%、トルコは2番目の50%。3番目がナイジェリアの24.75%なので、アルゼンチン(後述するようにインフレ率が265%!)を除けば、トルコの政策金利の高さは群を抜いています。なお、日本は最下位の0.10%(上限ですが)。

もっとも、トルコはインフレ率も高く、足もとの68.5%は、上述のアルゼンチン、レバノン(123%)に次いで3番目です。インフレ率を引いた実質金利は20%近いマイナスであり、トルコリラは実質金利を重視する長期投資には向いていないと言えそうです。この辺りは実質金利6%超のメキシコ(ペソ)と大きく異なるところでしょう。

トルコのCPIと政策金利

トルコリラは管理相場!?
トルコリラは対米ドルでも対円でも基本的には下落基調が続いています。対米ドルでは22年終盤から23年春までは非常にゆっくりと、ただ着実に減価しており、管理相場的な動きでした。23年6月~8月は、エルドアン大統領の再選(23年5月末)、カブジュオール総裁の辞任とエルカン総裁の就任(同6月9日)、市場予想を上回る大幅な利上げ(同8月24日)などのイベントが相次ぎ、トルコリラは比較的大きく変動しました。

それでも、23年9月以降は再び管理相場の様相を呈しました。今年3月中旬以降は揉み合っており、底打ちしつつあると見えなくもありません。新たに就任したカラハン総裁が今年3月に市場の据え置き予想を裏切って利上げに踏み切るなど、トルコリラ相場の潮目が変わりつつあるとの判断も可能かもしれません。

米ドル/トルコリラ

投資家はトルコリラ投資に慎重!?
もっとも、現時点での楽観論は時期尚早であり、かつ危険かもしれません。ここに面白いデータがあります。4月8日時点での6カ月先までのインプライド・ボラティリティ(予想変動率、対米ドル)はBloombergが集計する主要27通貨のなかで、ロシアルーブルに次いで2位(それだけ大きく変動すると予想されているという意味)。一方で、同じく過去6カ月のヒストリカル・ボラティリティ(実現変動率、同)は主要31通貨中の27位でした(それだけ実際の変動が小さいという意味)。円やユーロ、英ポンドよりも下位でした。

ボラティリティ

このことが示すのは、トルコリラが実際には安定していても、投資家は先行きのトルコリラを信用していない、あるいはTCMB(トルコ中銀)の独立性に強い疑念を持っているということでしょう。突如としてトルコリラが急落するようなショックが起こり得る、投資家はそんなテールリスクを他の通貨以上に強く意識しているのではないでしょうか。

エルドアン大統領のスタンスは?
カギを握るのはエルドアン大統領でしょう。エルドアン大統領は23年5月に三選を果たしたあと、金融政策について発言する機会がほとんどありません。以前は利下げによりインフレが低下すると主張。利上げを志向する中銀関係者をことごとく更迭してきました。エルドアン大統領がいつまで中央銀行の独立性を尊重し続けるのか、誰にも分からないところでしょう。

結論として、インフレ抑制のために中央銀行が必要な利上げを続け、エルドアン大統領がそれを容認するという現在の状況が続くならば、トルコリラへの投資は検討に値するでしょう。ただし、状況は一変しうるということを肝に銘じておくべきかもしれません。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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