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メキシコペソ堅調、対円で15年半ぶり高値

2024/04/08 09:00

【ポイント】
・米雇用統計でFRBの利下げ観測が後退
・米ドル/円の上昇に弾みがつく場合の本邦当局の対応
・メキシコのCPIや原油価格次第では、メキシコペソ高がさらに進む可能性も

(欧米市場レビュー)

5日の欧米時間の外為市場では、米ドルが堅調に推移。一時、米ドル/円は151.704円へと上昇し、ユーロ/米ドルは1.07900ドル、英ポンド/米ドルは1.25723ドル、豪ドル/米ドルは0.65486米ドルへと下落しました。米国の3月雇用統計が市場予想よりも強い結果だったことが、米ドルの支援材料となりました。

※米雇用統計については、5日の『ファンダメ・ポイント』[【速報】米雇用統計、NFPは30.3万人増で景気堅調を示唆]にて解説していますので、ご覧ください。

カナダドルは軟調。米ドル/カナダドルは一時1.36428カナダドルへと上昇し、23年11月27日以来およそ4カ月半ぶりの高値を記録。カナダドル/円は111.100円へと下落する場面がありました。カナダの3月雇用統計の弱い結果が、カナダドルへの下押し圧力となりました。カナダの雇用統計の結果は、失業率が6.1%、雇用者数が前月比マイナス0.22万人。市場予想はそれぞれ、5.9%とプラス2.50万人でした。

(本日の相場見通し)

米国の3月雇用統計の強い結果を受けて、市場ではFRB(米連邦準備制度理事会)の6月の利下げ観測が後退しました。CMEのFedWatchツールによると、5日時点で市場が織り込む利下げの確率は、次回4月30日-5月1日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で4.8%、6月11-12日までで53%程度です。4日時点の確率はそれぞれ、10.1%と66%程度でした。

FRBの利下げ観測が後退することは、米ドルにとってプラスです。米ドルが引き続き堅調に推移して、米ドル/円や米ドル/カナダドルは上値を試し、一方でユーロ/米ドルや英ポンド/米ドル、豪ドル/米ドルは下値を試す可能性があります。米国とは対照的にカナダの3月雇用統計が弱い結果だったこともあり、米ドル買いは対カナダドルで特に進みやすいかもしれません。米ドル/カナダドルの目先の上値メドとして、1.36555カナダドル(23/11/27高値)が挙げられます。

鈴木財務相は5日に「為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移するのが望ましい。過度な変動は望ましくない」、「行き過ぎた動きに対してはあらゆる手段を排除することなく、適切な対応をとる」と述べ、足もとの円安(米ドル/円の上昇)を改めてけん制しました。米ドル/円の上昇に弾みがつく場合、本邦当局の対応(為替介入の有無)に注目です。

※米ドル/円のテクニカル分析は、本日の『テクニカル・ポイント』[米ドル/円、ボックス圏相場のブレークとなるか]をご覧ください(マイページへのログインが必要です)。

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メキシコペソが堅調に推移しています。メキシコペソは対円(メキシコペソ)で5日に一時9.199円へと上昇し、08年10月以来15年半ぶりの高値を記録。対米ドルでは同じく5日に、15年11月以来8年5カ月ぶりの高値をつけました。

メキシコペソが堅調な主な要因として、(1)主要国と比べて高いメキシコの政策金利や実質金利、(2)原油価格の上昇、(3)本国送金、などが挙げられます。

(1)BOM(メキシコ中銀)は前回3月21日の政策会合で利下げを行ったものの、政策金利は依然として11.00%あり、高水準です(FRBは5.25~5.50%、日銀は0~0.10%)。BOMは3月会合時の声明で「慎重な金融政策の運営を必要とする」とし、「次回以降の会合では、入手可能な情報に基づいて決定を下す」と表明。次回5月9日の会合で政策金利は据え置かれる可能性も示されました。

メキシコの実質金利(政策金利からCPI上昇率を引いたもの)は現在プラス6.6%です(政策金利:11.00%、2月のCPI上昇率:前年比4.40%)。

(2)米WTI原油先物(原油価格の代表的な指標)の中心限月の5月物は5日、一時1バレル=87.63ドルへと上昇。中心限月の清算値(終値に相当)としては、23年10月下旬以来およそ5カ月半ぶりの高値をつけました。メキシコは原油を輸出しているため、原油価格の上昇はメキシコペソにとってプラスです。

(3)2月の国外で働く労働者などからのメキシコへの送金額(本国送金)は、前年比3.8%の約45.1億米ドルでした。送金額が前年比で増加したのは46カ月連続です。本国送金は、対米ドルでメキシコペソを下支えする要因と考えられます。

メキシコの3月CPI(消費者物価指数)が9日に発表されます。CPIがBOMの追加利下げ観測を後退させる結果になる、あるいは原油価格が一段と上昇すれば、メキシコペソ高がさらに進む可能性があります。

八代和也

執筆者プロフィール

八代和也(ヤシロカズヤ)

シニアアナリスト

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