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FOMCはハト派にもタカ派にも支援材料を提供!?

2024/03/21 07:29

【ポイント】
・ドット・プロットは年内3回利下げを予想も分布は上方シフト
・議長は年内の利下げ開始や早期のQT減速は適切と言及
・市場の早期利下げ期待へのけん制は残した

米FOMCは大方の市場予想通り、5会合連続でFFレート目標水準(政策金利)を5.25~5.50%に据え置きました。参加者の政策金利見通しを集計した「ドット・プロット」は24年中に3回の利上げを示唆。

今回の結果は、早期利下げを期待するハト派にも、高金利の継続を期待するタカ派にも支援材料を提供しました。

ハト派にプラス・・・
・ドット・プロットが引き続き24年中に3回の利下げを予想したこと。最近の景気の底堅さやインフレの上振れから2回に減るのではとの観測がありました。
・パウエル議長が会見で、「年内の利下げ開始が適切」と改めて述べたこと。
・議長会見で、「QT(量的引き締め)の減速はかなり早期に適切になる」と述べたこと。

タカ派にプラス・・・
・声明文に、早期利下げ期待をけん制する前回と同じ文言が採用されたこと。
・ドット・プロットの分布がタカ派方向にシフトしたこと。参加者の1人の予想が異なっていれば24年の中央値は「利下げ2回」となるところでした。

長期金利(10年物国債利回り)は結果判明直後に低下した後、すぐに反発。議長の記者会見が始まると低下。方向感の定まらないなかで結果判明前の水準近辺で推移(日本時間21日07:00時点)。

米ドル/円は結果判明前に152円近くまで上昇していたこともあり、記者会見を受けて一時151円割れを示現。その後は151円台で推移(同上)。

NYダウはFOMCの結果判明前は横ばいで推移していましたが、結果と議長会見を受けて約400ドル上昇しました。景気見通しが上方修正されたうえで、FOMCの利下げ予想がほとんど変化しなかったこと。そして、何より悪材料となりうるFOMCを無事通過したことが大きかったのでしょう。

OIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場は6月の利下げを8割以上の確率で織り込んでいます。市場のメインシナリオ(確率50%超)は、「24年6月、9月、11月、25年1月に各0.25%利下げ(それ以降は不明)」となりました。

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FOMC声明文

FOMCの票決は全会一致(12対0)。

声明文では、景況判断で「雇用は引き続き強い」とされ、前回から「昨年の早い段階から軟化したものの」との直前のフレーズが削除されました。それ以外は前回と同一でした。

フォワードガイダンス(先行きの政策に関する示唆)は「インフレが持続的に2%に向かっていると一層の確信を得るまでは、政策金利の引き下げが適切となるとは予想していない」と前回と同じで、市場の早期利下げ観測をけん制した格好です。

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FOMCの経済・金融見通しと「ドット・プロット」は以下の通り。

前回の昨年12月分と比較して・・
経済見通しでは、24年のGDP(国内総生産)が大きく上方修正され、25-26年も小幅上方修正。失業率の見通しは24年と26年が0.1%下方修正。パウエル議長は会見で、24年の上方修正は労働力の供給増加(=雇用堅調)のためと説明。

物価見通しは24年のPCEコアと25年のPCE総合が小幅上方修正。パウエル議長は会見で、今年1-2月のインフレ上振れは気になったが、季節要因の可能性もあり、2%に向かっている状況は変わらないとしつつ、その道筋は凸凹だと述べました。また、労働需要が供給を上回っているとしつつも、インフレの大部分は賃金が引き起こしたものではないとの見解を示しました。

FOMC経済見通し

「ドット・プロット」をみると、前回同様に24年の中央値は3回の利下げを予想(1回0.25%の利下げと想定)。ただし、分布は全体に上方シフトしました。2回以内が9人(2回が5人、1回が2人、0回が2人)。3回予想のうち最低1人が2回予想だったら、中央値も2回になっていました。また、前回は6回利下げ1人を含めて4回以上の利下げ予想が5人いましたが、今回は4回(以上)の利下げを予想したのが1人でした。

FOMCドットプロット

25年の利下げについては前回の4回から3回へ。ただし、24年と逆に最低1人が3回以内から4回以上を予想していれば中央値は4回になっていました。26年は前回の3回から4回に変わりました。

中立水準と考えられる「長期」の政策金利予想は2.56%で、前回の2.50%から上方シフト。ただ、パウエル議長は会見で、「中立水準が上昇したかどうかは分からない」と回答しました。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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