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FOMCは利下げモードにシフトも、3月はナシ!?

2024/02/01 07:19

【ポイント】
・声明文は利上げバイアスから中立に
・議長は利下げを視野に入れつつ、3月にはやや否定的
・市場は5月以降6会合連続での0.25%利下げを見込む
・金融不安再燃の兆候?

米FRBは1月30-31日にFOMC(連邦公開市場委員会)を開催して、政策金利の据え置きを12対0の全会一致で決定しました。据え置きは4会合連続。

声明文は、利上げの可能性に言及した前回までから中立に変化。議長は利下げを視野に入れた発言が目立ちましたが、3月のタイミングにはやや否定的でした。

米長期金利(10年物国債利回り)は金融不安の再燃(後述)も意識されて低下、1月16日以来となる4%割れを示現。株価はFOMCの結果判明直後に上昇したものの、引けにかけて大幅に下落。結果判明前から軟調だった米ドル/円は反発しました。

■米ドル/円のテクニカル分析は、「米ドル/円、FOMC結果を受けて『下影陰線』を形成!足もと注目ポイントは?」をご覧ください(マイページへのログインが必要です)。

31日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場が織り込む利下げ確率は次回3月のFOMCで36%、5月までで132%。12月まで毎回のFOMCで利下げが見込まれています(以上、1回につき0.25%幅の利下げを想定)。

FRB金融政策見通し

市場は引き続きFOMCの利下げを織り込み過ぎている感があります。ただ、パウエル議長も経済情勢が急変する可能性は認めています。FOMCの想定と市場の観測がどう折り合うのか、今後の経済データを丹念に見守る必要がありそうです。

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FOMCの声明文は、前回までの追加利上げに関する部分が中立的な内容に変更。一方で、市場の過度な利下げ観測を明確にけん制しました。

フォワードガイダンスは、「政策金利のいかなる調節を検討するうえでも、今後のデータや見通しの変化、リスクのバランスを注意深く評価する」でした。前回は「適切となるかもしれない追加的な引き締めがあるとすれば、その程度を見極めるために・・」と利上げにややウェイトがありましたが、今回は利上げと利下げが同じウェイトになりました。

ただし、今回は新たに「インフレが持続的に2%に向かっていると一層の確信を得るまでは、政策金利の引き下げが適切になるとは予想していない」との一文が加えられました。

なお、冒頭の景況判断では、経済活動は「底堅く拡大」として前回の「第3四半期の力強いペースから減速」を修正。

また、昨年3月以降の「銀行システムは健全かつ強靭で・・」との段落が削除されました。金融不安は概ね解消されたとの判断でしょう。ただ、まさに31日に地銀大手のNYコミュニティ・バンコープの株価が急落。昨年10-12月期の決算が予想外の赤字だったためです。NYコミュニティ・バンコープは昨年に破たんしたシグネチャー銀行から預金を買い取っていましたが、商業不動産市況の悪化から貸倒引当金が大幅に増加したことが背景だったようです。

FRBは昨春導入した緊急融資制度を3月11日に停止することを決定しています。金融不安が再び高まらないか、要注意かもしれません。

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パウエル議長は会見で、政策金利がピークにある可能性が高いとの認識を示し、経済が予想通りに展開した場合には景気抑制的な政策を基に戻す(=利下げする)ことが適切になる公算が大きいと発言しました。3月FOMCでの利下げについては「最も可能性の高いケース、あるいは基本的シナリオではない」として否定的でした。

もっとも、利下げの判断について、「(事前に想定するものでなく)きわめて結果次第(consequential)」だとして、過去に経済データが急変したことがあると述べました。議長はまた、すぐに非常に良いインフレのデータが出てくれば、「早く、速く(利下げすること)」が可能かもしれないとも指摘しました。

パウエル議長は、現在950億ドル/月のペースでFRBの保有債券を削減しているQT(量的引き締め)について、ペースダウンのタイミングを議論し始めたことを明らかにし、3月のFOMCでもっと突っ込んだ議論をすると述べました。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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