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24年のユーロ/円はどうなる?【ご質問への回答】

2023/11/28 07:49

【ポイント】
・24年は金融政策の方向性が逆転し、米ドル/円は下落基調か
・同じ理由でユーロ/円も下落が想定される
・18-19年のユーロ/円の下落局面は円高というよりユーロ安

11月24日のM2TVグローバルView(YouTube)に以下のご質問をいただきました。

ユーロ/円の傾向ですが、米ドル/円と同じく、春先は下がるでしょうか。日本の春闘以降の傾向が影響するのか気になります。アドバイスをお願い致します。

ここ数年のユーロ/円は、米ドル/円と強い相関があり、ユーロ/米ドルとの関係は比較的希薄です(※)。とりわけ、22-23年は、日銀を除く主要中銀がインフレ対応で大幅な利上げを行い、一方で日銀は金融緩和を継続しました。この間の米ドル/円の上昇は米ドル高というより円安でした。したがって、ユーロ/円もユーロ高というより円安の要素が強く、その結果、米ドル/円とユーロ/円の相関が強かったのでしょう。

(※)21-22年においてユーロ/円とユーロ/米ドルが逆相関ということは、米ドルに対して、ユーロも円も下落したものの、対米ドルでの円の下落幅が大きかったためにユーロ/円が上昇したという解釈になります。ECBはFRBに遅れて利上げを開始したため、短期金利差(米>ユーロ圏)は21-22年に拡大、23年には縮小しました。なお、ここでの分析は暦年をベースとしており、期間の取り方を変えれば結論も変わる可能性があります。また、20年はコロナ発生の年であり、分析の対象外としました。

ユーロ、ドル、円の相関

24年は金融政策の差が真逆になると予想されます。利上げを続けてきた主要中銀が打ち止め⇒利下げ開始へと金融政策を転換し、日銀は緩和継続⇒利上げ(マイナス金利解除など)へと転換するでしょう。そのため、円は、米ドルだけでなく、ユーロやその他の通貨に対しても上昇しそうです。ご質問は「米ドル/円と同じく、(24年の)春先は下がるでしょうか」ですので、答えは「イエス」です。そして、日銀が政策変更の判断をする際に春闘(における賃上げ率)が重要なカギを握りそうです。その前から政策変更の地ならしは行われるかもしれませんが・・。

もちろん、ユーロ/円と米ドル/円の強い相関が今後も続くのか。米ドル/円の上昇局面ではなく、下落局面でも同じことが言えるのか。疑問の余地はあります。

例えば、18-19年はユーロ/円の下落局面でしたが、ユーロ/円と強く相関したのは、米ドル/円ではなく、ユーロ/米ドルでした。FRBが17年から利上げを本格化し(19年7月に利下げに転じたものの、政策金利は比較的高水準)、ECBは政策金利である中銀預金金利をマイナス0.4%に維持しました(19年10月にマイナス0.5%へ利下げ)。日銀もマイナス0.1%の政策金利を維持しましたが、米ドル/円はほぼ横ばいで推移したので、ユーロ/円の下落はユーロ/米ドルの下落に引っ張られたものと言えます。

24年はFRBとECBの金融政策は同じようなものになると予想されます。27日のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、いずれも10/11月までに3回程度の利下げが織り込まれています。市場はFRBの利下げを強く意識するでしょうから、ユーロ/米ドルは若干上昇するかもしれませんが、強い勢いはないでしょう。そのため、24年のケースでは米ドル/円の下落に引っ張られて、ユーロ/円も下落すると考えられます。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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