米ドル/円のボラティリティ、「過度の変動」は遠い昔!?
2023/10/17 08:03
【ポイント】
・米ドル/円の過去1カ月の変動率は22年3月以来の低水準
・市場が予想する今後1カ月の米ドル/円の変動率も同様
・米ドル/円が150円を超えて上昇に弾みがつけば、介入に現実味!?
米ドル/円が150円を前に足踏みを続けています。10月3日に一時150円を超えた際にはすぐに反落して147円台ミドルまで下落したため、「すわ介入か」との観測も出ました。実際に本邦当局が円買い介入を実施した可能性は小さそうですが、その後も150円が重要な水準として意識されているのでしょう。
もっとも、鈴木財務相ら当局者は、「特定の水準」ではなく、あくまで「過度の変動」を為替介入の要件としています。鈴木財務相は13日のG20財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見でも、為替相場の過度の変動は望ましくないとして、「場合によっては適切な対応を求められることもある」と述べました。また、神田財務官は16日、為替相場が激しく下落した場合には、「金利を上げることによって資本流出を止めるか、為替介入で過度の変動に対抗する」と述べました。
「過度の変動」とは?
ただ、「過度の変動」の定義は曖昧です。そのことが市場関係者を疑心暗鬼にさせている要因でしょう。ここでは、過去1カ月の変動率(ヒストリカル・ボラティリティ)と今後1カ月の予想変動率(インプライド・ボラティリティ)から考察してみます。ヒストリカル・ボラティリティとは、為替相場の変化率の標準偏差。インプライド・ボラティリティとは、オプションの価格を基に算出された、市場が予想する将来の変化率のことです。
過去1カ月の米ドル/円は、147.307円から150.146円の狭いレンジで推移。ヒストリカル・ボラティリティFRBが一連の利上げを開始した22年3月上旬以来の低水準です。

今後1カ月の米ドル/円のインプライド・ボラティリティは、9月下旬の2日間を除けば、22年3月中旬のFRBの利上げ開始直後の低水準です。本邦当局が「緊張感を持って」市場動向を見守る必要もないのかもしれません。

過去1カ月の変動率や今後1カ月の予想変動率からみれば、足もとの米ドル/円は「過度の変動」からほど遠い状況と言えそうです。仮に、米ドル/円が150円を超えても、その判断はさほど変わらないでしょう。ただし、150円を超えても介入がなかったならば、米ドル/円の上昇に弾みがつくかもしれません。その場合には本邦当局が「過度の変動」と判断して為替介入に踏み切る可能性はあるでしょう。
・米ドル/円の過去1カ月の変動率は22年3月以来の低水準
・市場が予想する今後1カ月の米ドル/円の変動率も同様
・米ドル/円が150円を超えて上昇に弾みがつけば、介入に現実味!?
米ドル/円が150円を前に足踏みを続けています。10月3日に一時150円を超えた際にはすぐに反落して147円台ミドルまで下落したため、「すわ介入か」との観測も出ました。実際に本邦当局が円買い介入を実施した可能性は小さそうですが、その後も150円が重要な水準として意識されているのでしょう。
もっとも、鈴木財務相ら当局者は、「特定の水準」ではなく、あくまで「過度の変動」を為替介入の要件としています。鈴木財務相は13日のG20財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見でも、為替相場の過度の変動は望ましくないとして、「場合によっては適切な対応を求められることもある」と述べました。また、神田財務官は16日、為替相場が激しく下落した場合には、「金利を上げることによって資本流出を止めるか、為替介入で過度の変動に対抗する」と述べました。
「過度の変動」とは?
ただ、「過度の変動」の定義は曖昧です。そのことが市場関係者を疑心暗鬼にさせている要因でしょう。ここでは、過去1カ月の変動率(ヒストリカル・ボラティリティ)と今後1カ月の予想変動率(インプライド・ボラティリティ)から考察してみます。ヒストリカル・ボラティリティとは、為替相場の変化率の標準偏差。インプライド・ボラティリティとは、オプションの価格を基に算出された、市場が予想する将来の変化率のことです。
過去1カ月の米ドル/円は、147.307円から150.146円の狭いレンジで推移。ヒストリカル・ボラティリティFRBが一連の利上げを開始した22年3月上旬以来の低水準です。

今後1カ月の米ドル/円のインプライド・ボラティリティは、9月下旬の2日間を除けば、22年3月中旬のFRBの利上げ開始直後の低水準です。本邦当局が「緊張感を持って」市場動向を見守る必要もないのかもしれません。

過去1カ月の変動率や今後1カ月の予想変動率からみれば、足もとの米ドル/円は「過度の変動」からほど遠い状況と言えそうです。仮に、米ドル/円が150円を超えても、その判断はさほど変わらないでしょう。ただし、150円を超えても介入がなかったならば、米ドル/円の上昇に弾みがつくかもしれません。その場合には本邦当局が「過度の変動」と判断して為替介入に踏み切る可能性はあるでしょう。
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