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M2TVへのご質問:トルコはEUに加盟できるか。トルコリラはどうなる?

2023/07/21 07:06

TCMB(トルコ中銀)は20日、政策金利を2.5%引き上げて17.5%としました。市場の反応は「(40%近いインフレ率に対して)不十分」。今後、TCMBはさらなる利上げをするでしょうか。

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さて、7月14日のグローバルView(YouTube)に以下のご質問をいただきました(勝手ながら文言は変更させていただきました。ご容赦ください。オリジナルのご質問はYouTubeのコメント欄でご確認いただけます)。

最近、トルコがEU加盟を強く求めているようですが、EU加盟に際してリラがユーロに交換されてリラ円が取引できなくなることはありますか。リラはユーロとどういった基準で交換されますか。EU加盟はリラにとってはプラス要因となるか、それともマイナス要因となるか、どう思われますか。

EUとユーロ圏の違い
まず、EU(欧州連合)とユーロ圏を混同されているようですね。EUは1950年代に遡る欧州の経済共同体で、現在27カ国が加盟しています。20年1月に英国がEUを離脱したこと(ブレグジット)は記憶に新しいところです。

ユーロ圏は、EU加盟国のうち参加を希望し、かつ条件を満たした国だけが参加できる強い経済同盟で、統一通貨ユーロを使用しています。現在、20カ国が加盟しています(EUやユーロ圏への非加盟の小国の中には例外的にユーロを使用している国もあります)。

EU・ユーロ加盟の条件
EU加盟には、民主主義・法の支配・人権の尊重、市場経済など条件を満たす必要があります。トルコは長らく加盟を求めてきましたが、実現は難しいようです。

ユーロ圏に加盟するためには、さらに厳しいハードルをクリアする必要があります。主に経済に関するもので、物価・為替・金利の安定、財政の健全性などが求められます。リラが大幅に下落し、インフレ率が40%にもなるトルコが、近い将来に加盟を認められる可能性は非常に低いと言えそうです。

ユーロ加盟とギリシャ危機の経験
仮に、トルコがユーロ圏に加盟するとすれば、それは上記の条件を満たした時であり、トルコリラは今よりも強靭になっているはずです。リラからユーロへの交換は、特定の時点での為替レートで固定されることになります(一定期間後にリラの廃止)。

もっとも、条件達成やユーロ圏経済とのシンクロが不十分なままでユーロ圏に加盟すると、かつてのギリシャの二の舞になるかもしれません。ギリシャは、経済条件が整わず、見切り発車的に2年遅れてユーロに参加しましたが、その後に経済・財政危機に陥りました(為替レートの減価によって自国経済を刺激することができなかったことも一因)。

いずれにせよ、トルコがEUやユーロ圏に加盟するとしても、それは自国の政治や経済の改革が進んだあと、遠い将来ということではないでしょうか。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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