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騙されない投資家10~購買力平価をどう使う?

2023/04/25 07:48

「騙されない投資家」になるために・・・。投資の初心者が知っておくべきこと、勘違いしやすいことを、できるだけ平易に解説しようと思います。なお、シリーズの過去レポートは#騙されない投資家で表示されるので、是非ご活用ください。

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「購買力平価の正しい使い方」

前回(3月6日)は、購買力平価、PPP(Purchasing Power Parity)の一例として、ビッグマック指数について解説しました。今回は、もう少し精緻な購買力平価について考えてみます。

購買力平価には、二国間でモノの価格を直接比較する絶対的購買力平価と、基準時点の為替レートにそれぞれの国の物価の変化を反映させて求める相対的購買力平価があります。

絶対的購買力平価の限界
ビッグマック指数は絶対的購買力平価の一種ですが、「適正な」為替レートを一つの商品で決めようというのはさすがに乱暴でしょう。そこで、できるだけ多くのモノやサービスを集めたグループ(「バスケット」と呼びます)を作り、二国間で価格を比較して購買力平価を求めるわけです。
ただし、一国の経済活動を代表するような、意味のある「バスケット」を作ろうとすれば、膨大な労力と時間がかかります。そのため、利用できるデータは限られており、更新頻度が低いという難点があります。

絶対的購買力平価の代表は、IMF(国際通貨基金)が公表しているものでしょう。これは、国連が収集している各国1000項目のデータに基づいています。もっとも、IMFの購買力平価は、各国の通貨で表されたGDP(国内総生産)などの経済データを比較するための換算レートとして利用されており、「適正な」為替レートを示す意図はありません。

相対的購買力平価の限界
一方、相対的購買力平価は、各国が公表する物価指数を用いるので、比較的簡単に計算することができます。物価上昇率の高い国の通貨が、低い国の通貨に対して下落するのが基本です。物価が上昇しているということは、通貨の購買力が低下していることと同義だからです。

相対的購買力平価は、二国間の貿易収支がある程度均衡している時点を基準とし、それに二国の物価変化率の差を反映させて求めます。

ただし、基準時点をいつにすべきか、判断が難しいかもしれません。何種類かある物価指数のなかで何を用いるかによっても、結果は大きく異なる可能性があります。また、相対的購買力平価は時系列で求められますが、基準時点から時間が経過するほどそれぞれの国の経済構造は変化しているはずなのに、それが考慮されないという欠点もあります。

購買力平価はあくまで目安
結局のところ、前回の冒頭で述べたように、購買力平価は、通貨の異なる二つの国であっても、同じモノが同じ値段で買えるはずだという考えを基本にしています。しかし、実際には、経済構造の違い、規制や文化・嗜好の違い、輸送コストなどを考慮すれば、同じモノが同じ値段で買える必要はないはずです。つまり、実勢レートが購買力平価に近づかなければならない理由は、実はあまりないことになります。
ただし、多くの投資家が為替レートの判断基準として何らかの購買力平価を参考にしています。そのため、あくまで目安程度には使えるのではないでしょうか。

なお、現時点(23年4月25日)で、米ドル/円の購買力平価は、ビッグマック指数で76.49円、IMFの購買力平価では90.70円です。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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