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騙されない投資家9~購買力平価って何?

2023/03/06 06:39

「騙されない投資家」になるために・・・。投資の初心者が知っておくべきこと、勘違いしやすいことを、できるだけ平易に解説しようと思います。なお、シリーズの過去レポートは#騙されない投資家で表示されるので、是非ご活用ください。

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「購買力平価とは」

外国為替に関連した投資の経験のある方なら、購買力平価という言葉を聞いたことがあると思います。今回はこれを解説してみましょう。

購買力平価、PPP(Purchasing Power Parity)とは、通貨の異なる二つの国であっても、同じモノが同じ値段で買えるはずだという考えを基本としています。別の言い方をすると、それぞれの通貨で表された値段が同じになるように、2つの通貨の交換レート、つまり為替レートが決まるという考えです。そして、実際の為替レートには購買力平価に近づけるような力が働くと考えるわけです。

インフレである(物価が上昇している)ということは、通貨の価値が下がっているということです。だとすれば、インフレ率が高い国の通貨は低い国の通貨に対して下落すべきでしょう。実際の市場では、「インフレ率が高い⇒利上げが進む⇒その国の通貨は買い」との連想が働きがちです。しかし、長い目でみれば、実はその逆だという点に留意しておく必要があるでしょう。

ビッグマック指数とは?
購買力平価の分かり易い例として、よく説明に使われるのが、ビッグマック指数です。ビッグマック指数は、30年以上前から英国の経済誌「エコノミスト」が発表しているもので、世界の多くの国で購入できるハンバーガーの価格を比較することで、「適正な」為替レートを算出しようというものです。

ビッグマックの価格には、肉や野菜、小麦などの原材料費、輸送費、作る人や売る人の人件費、店舗の賃貸料や光熱費など、様々な経済活動のコストが含まれます。したがって、それらを比べて為替レートを算出することに意味はあると、もっともらしい解説を付けることも可能です。

今年1月時点のデータに基づけば、ビッグマック1個が米国で5.36ドル、日本で410円だから、ドル円のビッグマック指数は1ドル=76.49円(=410÷5.36)となるわけです。実際のドル円は130円台後半で推移しているので、円がドルに対して4割以上割安になっている(ドルが円に対して割高になっている)と判断することができます。

もっとも、だからといってドル円が76.49円に向けて直ちに修正されるというものでもないでしょう。「エコノミスト」誌自体が、「ビッグマック指数は、為替レートの精緻な尺度を目指して作られたわけではない。単に、購買力平価を分かり易くするためのツールに過ぎない」と断わっています。つまり、シャレだと。

日米のビッグマックの違いは?
ところで、購買力平価の基本は「同じモノが同じ値段で買える」ということでした。そこで疑問が浮かんできました。同じ「ビッグマック」であっても、アメリカのものは日本のものに比べて馬鹿デカいのではないか、つまり「違うモノ」ではないか、と。

仮に、アメリカのビッグマックが日本の1.5倍の大きさだとすれば、アメリカのビッグマック1個と比較すべきは日本のビッグマック1.5個であるべきです。先ほどの計算でいけば、ビッグマック1個が米国で5.36ドル、日本でビッグマック1.5個が615円(=410円×1.5)だから、ドル円のビッグマック指数は1ドル=113.81円(=610÷5.36)となります。

この仮説が正しければ、実際の為替レートに少しは近づきます。そう思って、ネットで調べてみました。ビックマックの重量は分からなかったので、カロリー量を比較しました。なんと・・・! ほとんど同じでした。アメリカが540kcal、日本が530kcal(公式HPより)。

筆者の仮説は木っ端みじんになりました。今年1月時点のドル円のビッグマック指数は、やっぱり1ドル=76.49円でよかったようです。なお、Lサイズのソフトドリンクでは、量に2倍ぐらいの差があるようです。もちろん、米国の方が大きいです。
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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