騙されない投資家8~経済指標の活用術
2023/02/28 07:35
「騙されない投資家」になるために・・・。投資の初心者が知っておくべきこと、勘違いしやすいことを、できるだけ平易に解説しようと思います。なお、シリーズの過去レポートは#騙されない投資家で表示されるので、是非ご活用ください。
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みなさんは、投資をする際に経済指標をチェックしていますか。経済指標はそれこそ星の数ほどあり、それらが何を意味するかよく理解していないので、「経済指標はほとんど見ない」という方も多いかもしれません。
米国の雇用統計という経済指標があります。これは世界の投資家に非常に注目されており、毎月のデータが発表される原則第一金曜日の朝(日本時間の同夜)はFXの世界ではお祭り騒ぎになることもあります。なお、23年2月分は3月3日ではなく、3月10日の発表です。
経済指標の使い方
では、経済指標をどう使えば良いでしょうか。後述する「市場予想」との比較で、景気が良いと判断できれば、株や通貨を買い、債券を売る。逆に、景気が悪いと判断できれば、株や通貨を売り、債券を買う、といったところでしょうか。もっとも、経済指標の結果に対して、プロの投資家が瞬時に判断して相場に反映させるので、初心者がそれを出し抜いて利益を上げるのは至難の業でしょう。
そうではなく、経済指標から景気や金融政策の大まかな方向性を判断して、中長期の投資方針の策定に使うべきでしょう。そして、経済指標をチェックしながら、引き続きその方針で良いのか、それとも修正を加えるべきかを判断することが重要だと思われます。
経済指標をみて自ら判断するのは難しいとしても、少なくともメディアなどの市況解説が十分に理解できる程度にはなりたいものです。
そもそも「市場予想」とは何か
「市場」という個体があり、それが事前に経済指標の予想を出している。というわけでは、もちろんありません。市場予想とは、市場参加者の平均的な見方であり、実際に経済指標が発表されるまでは、それが相場に織り込まれている(=相場の前提となっている)と考えることができます。
具体的には、情報提供会社が複数のエコノミストやアナリストにアンケート調査して、その回答の中央値(あるいは平均値)を市場予想として発表しています。したがって、情報提供会社によって市場予想は異なる場合があります。
ほとんどのエコノミストやアナリストが同じ予想をしていて、それが市場予想になるケースもあれば、幅広い予想があってその中央値がたまたま市場予想になるケースもあります。前者の場合は、市場予想通りの結果なら相場はほとんど動かず、市場予想が外れたら相場は大きく動く可能性があります。後者の場合は、どんな結果が出ても相場はそれなりに動くかもしれません。
23年2月3日に発表された同年1月の米雇用統計では、NFP(非農業部門雇用者数)が前月比51.7万人増となり、市場予想(18.9万人増)を大きく上回ったので、長期金利(10年物国債利回り)が上昇し、米ドル/円を押し上げました。Bloombergによると、その市場予想は78社のエコノミストの予想の中央値で、予想の最小値は13.0万人増、最大値は32.0万人増でした。NFPの実績値が市場予想を上回っただけでなく予想の最大値を上回った、つまり誰も予想しないほど大幅な増加だったので、相場が大きく動いたと言えるかもしれません。
一つの経済指標で一喜一憂するべきでない
経済指標はどの程度信用できるのでしょうか。多くの経済指標は小さなサンプルから全体が推計されるため、当然のように誤差が生じます。また、データの集計の遅れなどから後になって発表数値が修正されることもよくあります。
そうした誤差や修正は、サンプル調査であるために避けられないものです。また、月々の変動(ブレ)が大きい経済指標もあります。したがって、ひと月の経済指標、とりわけ前月比だけをみるのではなく、3カ月移動平均や1年前との比較(前年同月比)などによってトレンドを把握することが重要になります。
経済指標を受けて相場が動けば、それを無視するわけにもいきません。また、相場の動きと辻褄が合うような、もっともらしい市況解説も出るはずです。ただし、本来であれば、一つの経済指標に一喜一憂するべきではありません。経済指標は投資方針の策定や修正のための多くの材料の一つと考えるべきでしょう。
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みなさんは、投資をする際に経済指標をチェックしていますか。経済指標はそれこそ星の数ほどあり、それらが何を意味するかよく理解していないので、「経済指標はほとんど見ない」という方も多いかもしれません。
米国の雇用統計という経済指標があります。これは世界の投資家に非常に注目されており、毎月のデータが発表される原則第一金曜日の朝(日本時間の同夜)はFXの世界ではお祭り騒ぎになることもあります。なお、23年2月分は3月3日ではなく、3月10日の発表です。
経済指標の使い方
では、経済指標をどう使えば良いでしょうか。後述する「市場予想」との比較で、景気が良いと判断できれば、株や通貨を買い、債券を売る。逆に、景気が悪いと判断できれば、株や通貨を売り、債券を買う、といったところでしょうか。もっとも、経済指標の結果に対して、プロの投資家が瞬時に判断して相場に反映させるので、初心者がそれを出し抜いて利益を上げるのは至難の業でしょう。
そうではなく、経済指標から景気や金融政策の大まかな方向性を判断して、中長期の投資方針の策定に使うべきでしょう。そして、経済指標をチェックしながら、引き続きその方針で良いのか、それとも修正を加えるべきかを判断することが重要だと思われます。
経済指標をみて自ら判断するのは難しいとしても、少なくともメディアなどの市況解説が十分に理解できる程度にはなりたいものです。
そもそも「市場予想」とは何か
「市場」という個体があり、それが事前に経済指標の予想を出している。というわけでは、もちろんありません。市場予想とは、市場参加者の平均的な見方であり、実際に経済指標が発表されるまでは、それが相場に織り込まれている(=相場の前提となっている)と考えることができます。
具体的には、情報提供会社が複数のエコノミストやアナリストにアンケート調査して、その回答の中央値(あるいは平均値)を市場予想として発表しています。したがって、情報提供会社によって市場予想は異なる場合があります。
ほとんどのエコノミストやアナリストが同じ予想をしていて、それが市場予想になるケースもあれば、幅広い予想があってその中央値がたまたま市場予想になるケースもあります。前者の場合は、市場予想通りの結果なら相場はほとんど動かず、市場予想が外れたら相場は大きく動く可能性があります。後者の場合は、どんな結果が出ても相場はそれなりに動くかもしれません。
23年2月3日に発表された同年1月の米雇用統計では、NFP(非農業部門雇用者数)が前月比51.7万人増となり、市場予想(18.9万人増)を大きく上回ったので、長期金利(10年物国債利回り)が上昇し、米ドル/円を押し上げました。Bloombergによると、その市場予想は78社のエコノミストの予想の中央値で、予想の最小値は13.0万人増、最大値は32.0万人増でした。NFPの実績値が市場予想を上回っただけでなく予想の最大値を上回った、つまり誰も予想しないほど大幅な増加だったので、相場が大きく動いたと言えるかもしれません。
一つの経済指標で一喜一憂するべきでない
経済指標はどの程度信用できるのでしょうか。多くの経済指標は小さなサンプルから全体が推計されるため、当然のように誤差が生じます。また、データの集計の遅れなどから後になって発表数値が修正されることもよくあります。
そうした誤差や修正は、サンプル調査であるために避けられないものです。また、月々の変動(ブレ)が大きい経済指標もあります。したがって、ひと月の経済指標、とりわけ前月比だけをみるのではなく、3カ月移動平均や1年前との比較(前年同月比)などによってトレンドを把握することが重要になります。
経済指標を受けて相場が動けば、それを無視するわけにもいきません。また、相場の動きと辻褄が合うような、もっともらしい市況解説も出るはずです。ただし、本来であれば、一つの経済指標に一喜一憂するべきではありません。経済指標は投資方針の策定や修正のための多くの材料の一つと考えるべきでしょう。
- 当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
- 当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
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