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エリオット波動・宮田レポート(マンスリー・フォーカス) ※9月30日更新

2022/09/30 08:13

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[米ドル/円]

24年ぶりの円安水準を更新

9月22日、円相場は一時1ドル=146円に接近、24年ぶり円安水準を更新しました。年初の水準(1ドル=115円)から一気に30円超も円安が進み、筆者が理想とする「23年に1ドル=150円」シナリオは、その完成に向けて最後の詰めの段階を迎えています。

振り返れば、筆者が新しい環境の下で、「2023年~24年に向けてダイナミックな円安が進む」と打ち出したのは20年末から21年初めにかけてです。もちろん、この見通しが浸透するまでには時間がかかりました。なぜなら当時、米ドル/円は4年連続(2017~20年)で年間10円程度の小幅な値動きにとどまっており、21年初の時点で標準的な見通しは「米ドル/円は今年も動かない。動くなら円高方向だろう」というものだったのですから。

しかし蓋を開けてみれば、21年1月からこれまでの1年9カ月間で、ネット40円を超える大幅円安となったのです。それは円相場の歴史(変動相場制に移行して50年を超える)においても滅多にみられない、ダイナミックな変動でした。

元々、筆者が「40年の円高時代は2011年に終わり、そこからは円安時代へ」という長期予想を打ち出したのは2010年のことでした。そのときから12年にわたり、米ドル/円はほぼシナリオ通りに動いてきました。「エリオット波動」の予測能力の高さに改めて驚嘆を禁じえません。

[2021年1月時点の米ドル/円見通し]

24年ぶり円買い介入─(C)波終了へのカウントダウン開始?
急ピッチの円安進行をけん制するためでしょうか、9月22日に政府・日銀は24年ぶりに円買い介入を実施しました。先進国で日本だけが金融緩和を続けており、日本の貿易赤字も拡大する状況では、円買い介入の効果は限られるという見方が多いようです。先ずもって、その通りでしょう。

もっとも筆者にとって今回の円買い介入は、円安終了へのカウントダウン開始を告げるものに思えます。

21年1月の102.579円を起点とする(C)波は、その最後の上昇・第(5)波が進行中です。この波動カウントが正しければ、米ドル/円の上昇トレンドは(早ければ)年内にも終わるでしょう。

米10年長期金利4%はチャート節目
ここで、米ドル/円動向の行方を大きく左右する、米金利マーケットの現状を確認してみましょう。

9月28日、米10年長期金利は一時4.015%まで上昇しました。4%を付けたのは、およそ12年5カ月ぶりです。もっとも目先の達成感と英長期金利の急低下などをきっかけに米長期金利は大きく低下。
結局この日は、高値から安値(3.69%)まで32bpも動く、値動きの荒い1日となりました。

実は4%処という水準は、注目度の高いチャート節目です。1981年~2020年の金利低下幅に対し、23.6%(フィボナッチ比率)戻りの水準が4%(3.978%)となっています。

債券版「恐怖指数」は金利変動リスクの高まりを暗示
米国債の先行き変動リスク指数として、MOVE指数というものがあります。米国株の「恐怖指数」としてVIX指数が有名ですが、MOVE指数はVIX指数の債券版です。

米10年長期金利が4%にタッチした9月28日、MOVE指数は158.99と20年3月9日(163.70)─コロナショックで世界中のマーケットが大荒れの時─以来の水準に上昇しました。これは市場参加者が今後米国債のボラティリティ(変動率)が非常に大きくなると見込んでいることを示しています。今後は金利が一段と上昇することも、その反対に大きく低下することも、同じように起こり得るということです。

エリオット波動からは、足元の金利上昇は20年3月(0.3137%)以来の金利上昇トレンド(五波構成)における、最後の金利上昇(第5波)に位置付けられます。上記MOVE指数は、近いうちに金利の高値波乱が起きる可能性を暗示しているかもしれません。

米長期金利が第5波を終えつつあるということなら、この先は米長期金利低下に伴う日米金利差縮小によって、米ドル/円の上値は抑制されることになりそうです。



エリオット波動とは
株式・為替動向を予想する心強いテクニカル手法
米国人ラルフ・ネルソン・エリオットが提唱した、今後の株式や為替など市場価格の動向を予想する手法です。相場は5つの上昇波と3つの下降波(合計8つの波)で一つの周期を作るパターンに従って展開するとされます。
このパターンは集団心理によるもので、数分から数十年といった様々な時間軸において観察されます。
フィボナッチ数列、黄金分割比率をチャート分析に初めて導入したのもエリオットです。

宮田直彦

執筆者プロフィール

宮田直彦(ミヤタナオヒコ)

チーフ・テクニカルアナリスト、マネースクエアアカデミア学長

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