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ジャクソンホール会議、FOMC議事録・・・

2025/08/18 11:34

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【今週のポイント】
・主要国・地域の金融政策見通しの変化が相場材料となりそう

・ジャクソンホール会議、FOMC議事録、日英CPI、リクスバンク会合など
・RBNZ会合の結果を受けて市場の金融政策見通しはどう変化するか

今週は、各国・地域の金融政策に関する思惑が相場材料になりそうです。

21-23日に米カンザスシティ連銀のジャクソンホール会議(年次シンポジウム)が開催されます。今年のテーマは「移行期の労働市場:人口動態・生産性・マクロ経済政策」です。パウエル議長は22日に講演予定です。ジャクソンホール会議には世界中の中央銀行関係者が参加するため、米国のみならずその他の国・地域の金融政策に関するヒントが出てくるかもしれません。

今週の主要経済指標・イベント

20日にはFOMC議事録(7月29-30日開催分)が公表されます。ボウマン副議長とウォラー理事が利下げを求めて据え置きの決定に反対票を投じました。利下げを公言してきた彼ら以外にも(区別は難しいですが)、利下げを検討すべき、あるいは利下げ時期が近付いている等の意見はあったかどうか。ジャクソンホール会議のパウエル議長の講演と合わせて、9月FOMCのみならずそれ以降についても積極的な利下げとの見方が市場で強まるかもしれません。仮にそうなれば米ドルの重石となりそうです。

日本では、22日に7月の全国CPIが発表されます。日銀内部でも利上げに前向きな声が聞かれるなか、ベッセント米財務長官が13日に「日銀は(インフレ抑制に関して)後手に回っている」と発言しました。15日時点のOIS(翌日物金利スワップ)に基づけば、市場は年内利上げを約7割織り込んでいます。CPIの結果次第では、年内利上げへの機運が一段と高まるかもしれません。7月下旬に一時約17年ぶりとなる1.60%台をつけた長期金利(10年物国債利回り)の動向にも要注目でしょう。

英国でも、20日に7月のCPIが発表されます。英CPIは昨年後半以降に改善(伸び率の鈍化)が止まっており、総合指数はむしろ伸びが高まっています。BOE(英中銀)は弱い景気と強い物価の板挟みで難しい判断を迫られています。15日時点のOISに基づけば、市場が織り込む年内利下げの確率は6割弱。また、26年7月までに2回目の利下げが7割弱織り込まれています。7月のCPIを受けて市場予想はどう変化するでしょうか。利下げ観測が後退すれば、長期金利が上昇して英ポンドにプラスになりそうです。

リクスバンク(スウェーデン中銀)は20日に政策会合を開催します。政策金利は2.00%まで低下しており、今回は据え置きが確実視されています。リクスバンクは6月の会合で0.25%の利下げを実施するとともに、追加利下げの可能性に言及しました。トランプ関税等の不透明感がやや後退したことで、今年3月のように当面の据え置きを示唆するのか、それとも前回同様に追加利下げの可能性に言及するでしょうか。

上記のほか、日本の政治情勢や減税・給付金に関連した長期金利の動向、米中関税交渉やその他の相互関税のニュース、ウクライナとロシアの停戦交渉の動向(18日にトランプ米大統領とゼレンスキー・ウクライナ大統領がワシントンで会談予定)などにも注意は必要かもしれません。<西田>

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今週の米ドル/カナダドルや豪ドル/米ドルは、ジャクソンホールでの22日のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演が材料になりそうです。パウエル議長の講演を受けてFRBによる追加利下げ観測が後退する場合、米ドル/カナダドルは堅調に推移し、豪ドル/米ドルは軟調に推移すると考えられます。

RBNZ(NZ中銀)は20日に政策会合を開きます。NZドル/米ドルやNZドル/円、豪ドル/NZドルは、その結果が材料になりそうです。市場ではRBNZは0.25%利下げすると予想されています。RBNZの利下げサイクルは終わりに近いとの観測が市場にあるなか、RBNZによる政策金利見通しなどがその観測を高める内容になるのかどうか注目です。

日米など主要国の株価動向も材料になるかもしれません。主要国の株価が上昇を続ける場合、リスクオン(リスク選好)が強まるとともに、豪ドル/円やNZドル/円などのクロス円が上値を試す展開になる可能性があります。<八代>

今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:145.000円~150.000円>
米ドル/円は8月1日に7月雇用統計を受けて大幅に下落した後、146円台前半~148円台半ばのレンジで横ばいに推移しています。一方で、米ドル実効レートは7月雇用統計を受けて下落した後もジリジリと軟化しています。これは、米利下げ観測の高まりが米ドルの重石となる一方で、日本の政局に絡んだ不透明感や日銀の利上げ観測の後退が対米ドルでの円の足を引っ張った結果でしょう。

日本の政局に絡んだ不透明感は根強いものの、日銀の利上げ観測が高まりつつあること、そしてその結果として長期金利(10年物国債利回り)が再び1.60%台を目指すような展開になっていることから、円にも上昇圧力が加わるかもしれません。そうなれば、米ドル/円は米ドル実効レート同様に軟化する可能性があります。

FOMC議事録やジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演を受けた米金融政策見通しの変化、日本の7月全国CPIを受けた日銀金融政策見通しの変化などが相場材料になりそうです。<西田>

今週の注目通貨ペア②:<ノルウェークローネ/スウェーデンクローナ 予想レンジ:0.92000Sクローナ~0.96000Sクローナ>
20日のリクスバンク(スウェーデン中銀)の会合では、据え置きが9割近く市場に織り込まれており、それ自体は相場材料になりにくいとみられます。注目は、先行きの追加利下げの可能性がどれぐらい強く示されるかでしょう。前回6月の会合では利下げが実施され、声明で「年内の追加利下げの確率がいくらかある」とされました。

ノルゲバンク(ノルウェー中銀)は14日の会合で政策金利を据え置く一方で、「経済見通しは不透明なものの、経済がおおむね現在の見通しに沿って推移すれば、25年中に政策金利はさらに引き下げられるだろう」と表明。また、「今後は政策金利の慎重な正常化を進めることが適切になる可能性が高い」ともされました。

現在の政策金利差は2.25%(ノルウェー>スウェーデン)と、ノルウェークローネ/スウェーデンクローナ(以下、NOK/SEK)にとってプラスの要素です。しかし、政策金利差の縮小が意識されるならば、NOK/SEKに下押し圧力が加わるかもしれません。

また、足もとでは原油価格の動向にも注意が必要でしょう。WTI原油先物価格は米国などの景気減速懸念や供給過剰の懸念から軟調に推移しています。原油価格の軟調が続けば、NOK/SEKの重石になりそうです。<西田>

今週の注目通貨ペア③:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.08500NZドル~1.11000NZドル>
今週の豪ドル/NZドルは20日のRBNZ(NZ中銀)の政策会合が材料になりそうです。

RBNZは24年8月から25年5月まで6会合連続合計2.25%の利下げを実施。前回7月9日の会合は短期的なインフレリスクなどを理由に政策金利を据え置きました。前回会合ではその一方で、今後利下げを行う可能性に言及しました。

8月20日の会合については、0.25%の利下げが決定されるとの見方が市場では大勢です。そのとおりの結果になれば、RBNZの声明や会合の議事要旨、金融政策報告で示される政策金利見通し、ホークスビー総裁の会見が材料になりそう。それらでは10月以降の金融政策についてどのようなヒントが示されるのかに注目です。前回5月の金融政策報告では、政策金利は26年1-3月期に四半期平均2.85%へと低下し、その水準で底に達するとの見通しが示されました。

市場では、RBNZは8月と11月にそれぞれ0.25%の利下げを実施し、それをもって利下げサイクルは終了との観測があります。RBNZによる政策金利見通しなどがその観測を一段と高める内容になれば、NZドルにとってプラス材料になりそう。豪ドル/NZドルは軟調に推移しそうです。<八代>

今週の注目通貨ペア④:<米ドル/カナダドル 予想レンジ:1.36000カナダドル~1.40000カナダドル>
FRBのパウエル議長が22日に講演します。米ドル/カナダドルはその内容に反応すると考えられます。パウエル議長の講演によってFRBによる積極的な利下げ観測が市場で後退する場合、米ドルが全般的に堅調に推移して、米ドル/カナダドルには上昇圧力が加わりそうです。

カナダの7月CPI(消費者物価指数)が19日に発表されます。その結果次第では、米ドル/カナダドルは伸び悩むかもしれません。

BOC(カナダ中銀)は24年6月から25年3月まで7会合連続、合計2.25%の利下げを実施。その後、4月・6月・7月と3会合連続で政策金利を据え置いたものの、7月会合の声明では「景気の減速がインフレにさらなる下押し圧力を加え、貿易の混乱による物価上昇圧力が抑制される場合、政策金利の引き下げが必要になる可能性がある」と表明。追加利下げに含みを持たせました。

カナダの7月CPIが市場予想を上回る結果になれば、BOCによる追加利下げ観測が市場で後退しそう。その場合、カナダドルのプラス材料になると考えられます。<八代>

西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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