新たな「解放の日」?
2026/01/19 12:19
【今週のポイント】
・新たなトランプ関税の発表を受けてリスクオフは強まるか
・総選挙に向けた各党の対応や日銀金融政策決定会合にも注目
・豪雇用統計やNZのCPIで市場の金融政策見通しがどのように変化するか
トランプ大統領は17日、米国のグリーンランド領有に反対する欧州8カ国(※)に新たな関税を課すと発表しました。2月1日付けで10%とし、交渉に進展がなければ6月に25%に引き上げるとのこと。
※デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フランス、ドイツ、英国、オランダ、フィンランド
これに対して欧州各国は強く反発しており、昨年7月に合意した貿易協議の見直しや「反威圧手段(ACI)」発動への動きが出てくるかもしれません。ACIには関税や貿易制限、金融市場へのアクセス制限などが含まれます。新たな関税の対象は8カ国に限定されていますが、トランプ大統領が相互関税を発表した「解放の日」とそれに続く株価の大幅な調整場面が想起されます。
トランプ大統領は昨年4月2日に貿易相手国に対する相互関税を発表し、この日を「解放の日」と名付けました。42,000ドル前後で推移していたNYダウは週明け7日に一時36,612ドルまで下落。その後も軟調が続き42,000ドル台を回復したのは5月中旬でした。VIX指数は7日に一時60まで上昇し、20年3月のコロナ・ショック以降では一時65を超えた24年8月5日に次ぐ水準に達しました。リスクオフにより円高が進行し、米ドル/円は4月1日の150円前後から同22日には一時140円割れを示現しました。
19日から23日までスイスのダボスで世界経済フォーラムが開催されます。21日にはトランプ大統領の演説が予定されており、自ら名付けた「ドンロー主義」について詳細に踏み込むかが注目されます。同フォーラムでは同じ日にラガルドECB総裁やナーゲルドイツ連銀総裁らがパネル討論を行う予定です。
21日には米最高裁でクックFRB理事の解任に関する口頭弁論があります。トランプ大統領がFRBに新たな理事を送り込むことができるかの重要な材料になります。また、20日は最高裁の意見公表日にあたり、トランプ関税に関する判断が示される可能性はあるようです。
23日には通常国会が召集されて、衆院冒頭解散となる見込みです。総選挙の日程やそれに向けての減税公約など各党の動きが相場材料になりそうです。同じ日に日銀の金融政策決定会合が開催されます。政策金利は据え置きが予想されています。ただ、「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」で経済・物価見通しや先行きの金融政策についてどのような見解が示されるか。植田総裁の記者会見やそれを受けた欧米市場の動きも注目されるところでしょう。<西田>
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今週は22日に豪州の25年12月雇用統計、23日にNZの25年10-12月期CPI(消費者物価指数)が発表されます。それらの結果を受け、RBA(豪中銀)とRBNZ(NZ中銀)の金融政策に対する市場の見方がどのように変化するのか注目です。
メキシコの26年1月前半のCPIが22日に発表されます。メキシコのCPIの市場予想は総合が前年比3.81%、コアが同4.43%。総合とコアのいずれも、25年12月前半(それぞれ3.72%と4.34%)から上昇率が高まるとみられています。BOM(メキシコ中銀)のインフレ目標は3%(許容レンジは2~4%)です。市場予想を上回る結果になれば、BOMによる追加利下げ観測が市場で後退しそう。その場合、メキシコペソが堅調に推移する可能性があります。
23日の日銀金融政策決定会合にも注目です。日銀の植田総裁の会見や展望レポートの内容を受けて日銀による早期の追加利上げ観測が後退する場合、豪ドル/円やNZドル/円など対円の通貨ペアは底堅く推移するかもしれません。
本邦当局による為替介入(米ドル売り/円買い介入)には注意が必要です。片山財務相は16日、足もとの“円安”について「(12日の)ベッセント米財務長官との会談では、ファンダメンタルズを反映しない動きで行き過ぎとの認識を共有した」とし、「あらゆる手段を含めて断固たる措置をとると再三言っている」と述べました。為替介入が一段と現実味を帯びれば、米ドル/円が下落して、対円の通貨ペアはそれに引きずられそうです。
トランプ米大統領は17日、デンマークやノルウェー、スウェーデンなど欧州の8カ国からの輸入品に10%の追加関税を課すと表明しました。EU(欧州連合)は対抗措置の検討に入ったとの報道があります。米国と欧州の貿易摩擦が激化する場合、リスクオフが強まる可能性があります。リスクオフは、円高要因になると考えられます。<八代>
今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:155.000円~160.000円>
米ドル/円が上昇するとすれば、衆院解散・総選挙に向けて各党の公約(減税など?)がある程度明らかになり、財政収支の悪化観測が強まるケース。日本の長期金利(10年物国債利回り)には上昇圧力が加わるでしょうが、それは円安を伴う「悪い金利上昇」と捉えられそうです。ただ、先週も米ドル/円が159円台で頭が重くなったように、160円に接近すれば本邦当局による米ドル売り円買い介入への警戒感が高まりそうです。
米ドル/円が下落するとすれば、新たなトランプ関税の発表を受けて欧米株価が大きく下落するケース(19日の日経平均株価は前週末比700円近く下落して始まりました)。まずは欧州株の反応に注目です。19日はキング牧師の日で米国は休場のため、新たな関税への米株の反応は20日を待つ必要があるかもしれません。
もう一つ円高材料となりうるのは、日銀の金融政策決定会合。展望レポートで経済・物価見通しが上方修正されたり、利上げ継続の必要性が示されたりすれば、円に上昇圧力が加わりそうです。植田総裁の記者会見中に欧州での為替取引が本格化するため、欧州市場やそれに続く米国市場での相場の動きには特に注意が必要かもしれません。<西田>
今週の注目通貨ペア②:<ユーロ/英ポンド 予想レンジ:0.85500ポンド~0.88000ポンド>
米景気が底堅さをみせるなか、26年に入ってユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルはいずれも、軟調な展開が続いていました。しかし、19日のアジア時間にはユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルとも反発して始まっています。トランプ大統領が欧州8カ国に対する新たな関税を発表したためでしょう。それを受けた米ドル安の裏返しとして、ユーロや英ポンドが上昇しました。
米ドルの裏返しとしての性格はユーロの方が強いため、19日のユーロ/英ポンドは小幅に上昇しています。それでも、ユーロ/英ポンドは1月6日以降0.86500ポンド~0.87000ポンドの狭いレンジで推移しており、足もとでもそのレンジに収まっています。
もっとも、新たなトランプ関税の発表を受けて欧米を中心に主要株価が大きく下落するようであれば、市場におけるリスクオフが強まり、ユーロ/英ポンドにも上昇圧力が加わる可能性があります。昨年の「解放の日」では、ユーロ/英ポンドは4月1日の0.83500ポンド近辺から11日の一時0.87000ポンド超まで上昇しました。<西田>
今週の注目通貨ペア③:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.15000NZドル~1.17000NZドル>
今週の豪ドル/NZドルは、豪州の雇用統計(22日)やNZのCPI(23日)の結果に反応しそうです。
市場では、RBA(豪中銀)とRBNZ(NZ中銀)のいずれも利下げは打ち止めで、次の動きは利上げになると予想されています。利上げのタイミングについては、RBAは26年前半、早ければ2月との観測があり、RBNZは26年終盤になるとの見方が優勢です。
豪州の雇用統計やNZのCPIの結果を受けて、RBAとRBNZの金融政策に対する市場の見方がどのように変化するのかに注目。仮にRBAの利上げ観測が後退する一方で、RBNZの利上げ観測が高まる場合、豪ドル/NZドルは下値を試す展開になりそうです。<八代>
今週の注目通貨ペア④:<米ドル/カナダドル 予想レンジ:1.38000カナダドル~1.40000カナダドル>
今週は米国の25年11月PCE(個人消費支出)デフレーターや26年1月S&PグローバルPMI(購買担当者景気指数)、カナダの25年12月CPIが発表されます。
BOC(カナダ中銀)は前回25年12月の会合で政策金利を2.25%に据え置くとともに、「現在の政策金利は、経済を支えつつインフレ率を2%近辺に維持するのに、ほぼ適切な水準だ」との認識を示しました。市場では、BOCによる利下げサイクルは終了し、次の動きは利上げになると予想されています。利上げのタイミングは早くて26年終盤との見方が優勢です。カナダのCPIの結果を受けて、BOCの金融政策に対する市場の見方がどのように変化するのか注目です。
BOCによる利上げ観測が高まる一方で、米経済指標の結果を受けてFRB(米連邦準備制度理事会)による追加利下げ観測が高まる場合、米ドル/カナダドルは軟調に推移しそうです。
原油価格の動向も相場材料になるかもしれません。イラン情勢をめぐる懸念などが上昇要因となり、米WTI原油先物は14日に一時62.36ドルへと上昇して10月下旬以来の高値を記録。その後、米国がイランに軍事介入するとの観測が後退したことから、WTI原油先物は一時58ドル台へと反落しました。産油国の通貨であるカナダドルにとって、原油価格の上昇はプラス材料、原油価格の下落はマイナス材料と考えられます。<八代>
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