米ドル安、円もっと安!?
2026/01/13 11:31
【今週のポイント】
・米FRBの独立性が懸念され、米ドルに下落圧力!?
・衆院解散・総選挙の思惑から円には対米ドルでも下落圧力!?
・メキシコ中銀は今後利下げをいったん停止する可能性も
米司法省が9日、パウエルFRB議長に召喚状を送付。FRBの独立性が阻害されるとの懸念を強めており、今後の材料次第では米ドル安圧力が続きそうです。一方、日本では23日の通常国会召集で冒頭解散の可能性が高まっています。高市政権の(責任ある)積極財政と緩和的な金融政策、いわゆるサナエノミクスが円安の処方箋との市場テーマは(可能性のある)総選挙まで続くかもしれません。
今週は、米国に大きな相場材料がありそうです。トランプ関税(フェンタニル関税と相互関税)に関する最高裁の判断が14日の意見公表日に示されるかもしれません。9日の今年最初の意見公表日は身構えた市場の空振りに終わりましたが、油断は禁物。仮に、下級審での違法との判断が支持されれば、トランプ政権にとって大きな痛手。経済政策や財政収支への悪影響が懸念されて米ドルに下押し圧力が加わりそうです。仮に、合憲との判断が下されれば、トランプ政権は関税を更なる武器にするかもしれません(その場合もトランプ政権の強引な通商政策が結局は米ドル売りにつながりそうですが・・)。
イランで反政府デモと政府の対応が厳しさを増しているようです。米国がそれに介入(反政府デモを支持)するようなら、地政学リスクは一段と高まるでしょう。原油価格に対する影響はベネズエラ攻撃のケースを相当に上回るかもしれません。

トランプ大統領はメディア・インタビューで、次期FRB議長候補を決定したが、まだ公表しないと述べました(指名後に上院の承認が必要)。誰が選ばれてもトランプ大統領の意を汲むことになりそうです。トランプ大統領が議長候補を正式発表する可能性は低いかもしれませんが、候補が絞り込まれるだけでも市場は改めてFRBの独立性(の侵害)を意識するかもしれません。司法省によるパウエル議長召喚(訴追?)に関して新たな材料が出るかどうかも要注目でしょう。
米経済指標では、12月CPI、11月小売売上高、ベージュブック(地区連銀経済報告)など。12月雇用統計は労働市場の軟調を示したものの、米景気は個人消費などを中心に底堅く推移しており、インフレはやや高止まりしている模様。そうした状況に変化はみられるか。アトランタ連銀のGDPNow(短期予測モデル)に基づけば、雇用統計発表後の9日時点で昨年10-12月期GDPは前期比年率5.1%と非常に高い伸びが予測されています(今後、下方修正されそうですが)。<西田>
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今週は、CPI(消費者物価指数)など米国の主要な経済指標が多く発表されます。それらの結果を受けてFRB(米連邦準備制度理事会)の先行きの金融政策に対する市場の見方がどのように変化するのか注目です。FRBによる追加利下げ観測が後退する場合には、米ドル/カナダドルは上値を試し、豪ドル/米ドルやNZドル/米ドルは下値を試す展開になると考えられます。
米ドル/円は25年1月以来1年ぶりの高値圏へと上昇しています。円安が進行するなか、本邦当局の対応が注目されます。本邦当局による為替介入(米ドル売り/円買い介入)が現実味を帯びれば、米ドル/円が下落して、豪ドル/円やNZドル/円などがそれに引きずられるかもしれません。
原油価格の動向にも注目です。米WTI原油先物は1月9日に一時59.77ドルへと上昇し、25年12月8日以来およそ1カ月ぶりの高値をつけました。イランでは政府に対する抗議デモが拡大しています。イラン情勢が一段と緊迫化する場合、原油価格に対して上昇圧力が加わってカナダドルなど産油国通貨の上昇要因になる可能性があります。<八代>
今週の注目通貨ペア①:<米ドル/円 予想レンジ:155.000円~160.000円>
米ドル/円は9日に1年ぶりとなる158円台を示現、その後も強含んでいます。米FRBの独立性阻害の懸念から米ドルに下落圧力が加わっているものの、衆院解散・総選挙の思惑が急速に浮上したインパクトがそれを上回っているようです。23日の通常国会召集・冒頭解散の可能性は相当に高そうです。高市首相周辺からの具体的な日程の示唆も含めて、解散・総選挙の現実味がさらに高まるようであれば、米ドル/円は堅調に推移しそうです。
日経平均株価は13日に1,800円程度上昇して始まりました(午前10時現在、以下同じ)。一方で、円が下落し、長期金利(10年物国債利回り)は一時2.16%と99年以来の高値をつけました。株価は財政出動による景気浮揚を、為替と債券はそれに加えて財政赤字拡大も織り込んでいるようにみえます。市場間の温度差がどのように収れんするかも要注目でしょう。
米ドル/円に下落圧力が加わるとすれば、期待先行(?)の日経平均の急落、米株安、米政府とFRBの軋轢やイラン情勢によるリスクオフの強まりなどが考えられるところでしょう。もちろん、米ドル/円の上昇に拍車がかかるようであれば、本邦当局による円買い介入に警戒する必要はあります。<西田>
今週の注目通貨ペア②:<ユーロ/米ドル 予想レンジ:1.15000ドル~1.20000ドル>
ユーロ/米ドルは25年7月以降、1.15000ドル~1.19000ドルを中心とした比較的狭いレンジで推移してきました。今週はユーロ側に目立った材料はないため、ユーロには米ドルの裏返しとの性格が比較的強く出るかもしれません。米ドル/円ではわかりにくい米ドルの弱気材料に対してユーロ/米ドルは素直に反応しそうです。
とりわけ注目されるのが、トランプ関税に関する最高裁の判断が示されるか。可能性が指摘された9日の意見公表日は空振りに終わりました。次回公表日は14日。そこで最高裁判断が示されるようなら、市場に大きな影響が及びそうです。仮に、最高裁がトランプ関税は違法との判断を示せば、米ドルに下落圧力が加わり、ユーロ/米ドルは上昇しそうです。
トランプ政権がFRBへの干渉を強め、FRBの独立性に対する疑念が一段と強まるケースもユーロ/米ドルの上昇要因となり得ます。それら米ドルの弱気材料が重なれば、21年6月以来となる1.20000ドルを示現するかもしれません。<西田>
今週の注目通貨ペア③:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.15000NZドル~1.17000NZドル>
豪ドル/NZドルは1月7日に一時1.16898NZドルへと上昇し、13年7月以来12年4カ月ぶりの高値をつけました。
足もとの豪ドル/NZドル上昇の主な要因として、RBA(豪中銀)による早期の利上げ観測や堅調な金(ゴールド)価格が挙げられます。
市場では、RBAは26年前半、早ければ次回2月2-3日の政策会合で利上げを行うとの観測があります。一方、RBNZ(NZ中銀)も次の一手は利上げになると市場は予想しているものの、利上げのタイミングはRBAよりも遅く26年10-12月期になるとの見方が優勢です。
豪政府によると、25/26年度(25年7月~26年6月)は一次産品の輸出において、金は金額ベースでLNG(液化天然ガス)を抜いて第2位へと浮上するようです(第1位は鉄鉱石の見込み)。金価格の上昇は豪ドルにとってプラス材料です。
今週は、豪州とNZの主要な経済指標の発表はなく、RBAとRBNZの金融政策に対する市場の見方が大きく変化する可能性は低いと考えられます。豪ドル/NZドルは金価格の動向に影響を受けやすい地合いになりそう。金価格が引き続き堅調に推移する場合、豪ドル/NZドルは底堅い展開になるとみられます。<八代>
今週の注目通貨ペア④:<メキシコペソ/円 予想レンジ:8.500円~9.000円>
25年12月のBOM(メキシコ中銀)会合の議事要旨が26年1月8日に公表されました。12月の会合では、4対1の賛成多数で0.25%の利下げを行うことが決定され、決定に反対したヒース副総裁は政策金利の据え置きを支持しました。
会合の議事要旨によれば、利下げに賛成した4人のメンバーはいずれもさらなる利下げには慎重なようです。4人はそれぞれ、先行きの金融政策について「利下げサイクルは、より段階的かつ慎重に進めるべき」、「金融政策はより慎重な対応が必要」、「様子見の姿勢が必要になるだろう」、「26年前半には、より緩やかなペースでの政策金利調整(追加利下げ)を検討するのが適切」との認識を示しました。
BOMの利下げは今後いったん停止されるかもしれません。今後発表されるメキシコの経済指標の結果を受けてBOMによる利下げ停止観測が市場で高まれば、メキシコペソにとってのプラス材料になりそうです。メキシコの1月前半のCPIが22日に発表されます。その結果が市場のBOM金融政策見通しに影響を与えそうです。
原油価格の動向にも注目です。原油価格が上昇を続ける場合、産油国通貨であるメキシコペソにとってプラスになると考えられます。
“円安”が進行するなか、本邦当局による為替介入(米ドル売り/円買い介入)には注意が必要かもしれません。為替介入が現実味を帯びる場合、米ドル/円が下落してメキシコペソ/円はそれに引きずられる可能性があります。<八代>
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